Vol.89

NEW『スリクソン Zシリーズ(2016年モデル)』ドライバーを検証する

ダンロップスポーツのアスリートブランド、スリクソンから、NEW『スリクソン Zシリーズ』が2016年9月に発売されました。スリクソンは、世界に挑むトッププロをはじめ、情熱と挑戦心を持つアマチュアゴルファーから支持されており、また、ニューモデルは約2年ごとに発売され、毎回ゴルファーからの期待値が高いと思われます。そこで、いつものようにドライバーから、クラブとヘッドをじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表参照)
  1. 個性の違う3タイプのヘッドが登場
     今回のNEW「スリクソン Zシリーズ」のドライバーには、前モデル同様に3タイプのヘッドが登場しています。各モデルのアドレスでのイメージをシンプルに説明しますと、丸型形状でディープフェースの『Z765 リミテッドモデル』、やや縦長形状に見える『Z765』、そして丸く大きなヘッドの『Z565』となっています。また、データから分かるように、基本概念となる低重心設計は継承され、低スピンでの飛距離アップが実現されています。
  2. 操作性抜群の『Z765 リミテッドモデル』
     後述の「Z765」や「Z565」とは一線を画す感のある『Z765 リミテッドモデル』。アドレスした時のディープフェースの迫力、そして、非常に小さなフェースプログレッション(シャフトがフェース寄りに入っていてアゴが出ていないこと)と、いかにも「球をつかまえて飛ばしてください」と言わんばかりです。
     そして、浅い重心深度設定により、インパクト付近でヘッドがアッパー軌道になりにくく、レベルにスイングしやすいので、強い中弾道を打ちやすくなっています。また、ヘッドの返りやすさの判断基準となるヘッドのネック軸回りの慣性モーメントが、3つのモデルの中では最も小さいので、ドローやフェード、弾道の高低など、インテンショナルに弾道を操りやすくなっています。
     超ディープフェースと言ってもいいモデルなので、正直アベレージゴルファーの方の中には「難しそう」と思われる方もおられるかもしれません。でも、実際には、非常に小さいフェースプログレッション設定で球をつかまえやすいので、上級者だけでなく、さらに球をつかまえて飛ばしたいゴルファーにもお勧めできます。
  3. 中弾道で球の落ち際が強い『Z765』
     先述の「Z765 リミテッドモデル」は文字通り数量限定モデルなので、一般的には、この『Z765』か、後述の「Z565」から選択することになるのかもしれません。この『Z765』は、モデル名に同じ765とついているものの、リミテッドモデルとはまったく違う形状をしています。後述の「Z565」と比べると、ややヘッドが縦長形状に見え、また、フェースの先側に“逃げ感”があり、「Z565」ほど球がつかまり過ぎないイメージがうまく出ています。私見ですが、欧米では、もしかしたらこの『Z765』が好まれる比率が日本より高いのかもしれません。
     そして、前モデル(Z745)で謳った「スリクソン史上、最も低重心設計のドライバー」という特徴が踏襲され、バックスピンが少なめの強い中弾道を打ちやすくなっています。低重心設計では、ともすれば、いわゆるチーピン球が出やすいことがありますが、『Z765』では重心距離をやや長めに設定し、同時にヘッドのネック軸回りの慣性モーメント値も大きくなっているので、フェースのトウ寄りで球をヒットしてもチーピン球は出にくくなっており、フック系弾道の方でも扱いやすくなっています。
     このように、前モデルの低重心設計を受け継いでいる『Z765』、皆さんも試打されると分かると思いますが、中弾道で落下際にはさらに球が前へ突っ込んで行き、ランを含めた飛距離が出やすくなっています。
  4. アベレージゴルファーでもやさしく打てる『Z565』
     3つのモデルの中では、『Z565』のヘッドの横幅が最も広いのでアドレスした時の投影面積が大きく、また、ややフックフェースの設定のため、最もやさしく、打ちやすそうに感じられます。そして、ヘッドの横幅が広い分、重心深度が深くなり、ヘッドの慣性モーメントも大きく、3つの中では最もミスショットに寛容なヘッドと言えます。
     それに加えて、リアルロフト角設定が標準的であること、低重心度合いも標準的なことなどから、安定した高弾道と安定したバックスピンを得やすく、アベレージアスリートの方にとって、弾道が最も安定するのが、この『Z565』と言えそうです。また、インパクト音も高めで、打っていて爽快感があります。安定した弾道でフェアウエイをキープし、スコアメイクに貢献しやすいヘッドと言えるでしょう。
  5. 簡単に弾道を変えられる「クイックチューンシステム」搭載
     一般に米国モデルではアジャスタブルシステム(シャフト脱着機能)が標準仕様のように浸透しています。スリクソンの「クイックチューンシステム(QTS)」は操作が簡単で、自分のスイング、自分の求める弾道に対してクラブを細かく調整できるのはうれしいことです。試打されて、もし「スタンダードロフト」(購入時のポジション)で球のつかまり感が悪いと感じられれば、スリーブをロフト角が増える側、もしくはアップライト側に変更すれば、球をつかまえやすくなります。
  6. 重いヘッドで飛ばす「ボールスピードテクノロジー」
     一般のドライバーヘッドは、重量が195グラム前後に設定されているものが多いのですが、今回のNEW「スリクソン Zシリーズ」は、200グラムを超える重いヘッドで構成されているため、フェースの芯で球をとらえれば、インパクトでのボール初速が上げやすくなっています。
     ちなみに、46インチを越える長尺仕様のドライバーを時おり見かけますが、その多くは180グラム台という非常に軽いヘッドが装着されており、そうした軽いヘッドでは、長尺であってもボール初速はまったく上がらないのです。
  7. 高品質シャフト「Miyazaki Kaula(カウラ)」装着でインパクトが安定
     スリクソンのクラブの良い点は、ゼクシオ同様に、標準装着シャフトの品質が高いことが挙げられます。今回のNEW「スリクソン Zシリーズ」には、中調子の「Miyazaki Kaula MIZU」シャフトが装着されており、フィーリングもしっかりしているので、インパクトの再現性が高くなっています。そして、ショットの安定性が高くなっているだけでなく、上級者がインテンショナルに弾道を操作しようとする時には、シャフトがプレーヤーの意図通りに動いてくれます。

松尾好員の辛口トーク

全般的にフックフェースに感じるが・・・

「Z765 リミテッドモデル」は、フェースプログレッションが小さ過ぎてフックフェースに見えやすく、「Z765」「Z565」も、アドレスでの見え方はややフックフェース傾向にあると思います。日本のアベレージゴルファーが球をつかまえやすいという意味では「少しフックフェース」でもいいですが、世界に打って出るツアーモデルのスリクソンのドライバーとしては、もう少しオープンフェース設定でもいいのでは、と思います。

NEW「スリクソン Zシリーズ」ドライバー 実測データ

  Z765 LIMITED Z765 Z565 Z945 Z745 Z545
9.5度 9.5度 10.5度 9.5度 9.5度 9.5度
    --- 水 6S 水 5S 霙INDIGO 6S 水BLUE 6S 水BLUE 6S
クラブ長さ inch --- 45.0 45.0 45.0 45.0 45.0
クラブ重さ g --- 314.9 308.0 313.6 314.2 313.2
スイングウエイト   --- D3.2 D3.2 D2.0 D3.0 D3.0
クラブ慣性モーメント gcm² --- 293.6万 292万 293万 292万 292万
 
    --- STD位置 STD位置 N位置 N位置 N位置
ヘッド重さ g 202.4 202.2 201.9 202.1 201.5 201.6
ヘッド体積 ml 441 439 449 404 427 444
リアルロフト deg 10.3 9.2 10.4 10.0 9.0 9.6
ライ角 deg 56.0 58.5 57.5 58.0 58.5 58.0
フェース角 deg 0.0 HOOK 0.5 HOOK 0.5 O.O 0.0 0.0
フェースプログレッション mm 16.8 18.4 19.9 17.7 17.8 19.4
 
重心距離 mm 34.5 38.2 38.4 36.8 33.7 38.7
重心深度 mm 29.5 35.2 37.0 34.0 35.1 37.2
フェース高さ mm 61.0 57.6 56.4 53.8 55.4 55.7
スウィートスポット高さ mm 35.5 32.6 34.7 31.6 32.1 34.4
低重心率 % 58.2 56.6 61.5 58.7 57.9 61.8
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm² 3,783 4,443 4,659 3,618 3,801 4,436
ヘッド上下慣性モーメント gcm² 2,342 2,690 2,839 2,184 2,393 2,739
ネック軸回りモーメント gcm² 5,536 6,838 6,928 5,828 5,822 6,961
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