第115回 中尾 春陽 & 小野 祐夢

今回は、今季ツアープレーヤーの仲間入りをした若手の女子二人が初登場。一人は、昨年のファイナルQT最終日にホールインワンを記録するなど健闘し、今季レギュラーツアーに初参戦中の20歳、中尾春陽プロ。もう一人は、アマチュア時代にナショナルチーム・メンバーとして活躍し、今夏のプロテストに見事2位で合格を果たした19歳の小野祐夢プロ。フレッシュな二人が、ゴルフとの出会いや自身のゴルフ、プロとしての夢などについて語ります。

目標は“本当のプロ”になること。いつかアメリカでもプレーしたい
~中尾 春陽~

ホールインワンが利いてQTランキングが大きくアップ

 私は、ゴルフをしていた祖父母の影響で、9歳の時にゴルフを始めました。最初はただボールを打って遊んでいたのですが、うまく当たると祖父が褒めてくれるので、それがうれしくて練習するようになったのだと思います。

 その頃、地元の関西であった女子ツアーの試合を観戦しに行ったのですが、プレーする宮里藍さんを見て、「あ、こんな人になりたい」と思ったんです。それでプロを意識するようになりました。その後、小学6年の時にある試合に出たのですが、その試合は、神戸の「ダンロップパースリーコース」で予選を行い、決勝は本コースで開催されました。私は、何度目かの出場で初めて予選を突破して決勝に出たのですが、最下位になってしまったんです。その時に「こんな練習じゃダメなんだ」と分かって、それからすごく練習するようになりましたね。その頃はまだプロになりたいという気持ちだけでしたが、中学に入ってからは、本格的にプロを目指そうと思うようになりました。

 ただ、プロテストには去年、今年と挑戦したものの合格できていません。第2次予選で落ちてしまった去年にくらべ、今年は最終まで進めたのはよかったのですが、その間にどこか成長したのかと聞かれると、あまり成長していないなと感じます。毎週ツアーに出させてもらっているので、その分だけ上手くならないといけないのですが、出るだけで精一杯で・・・。そこは反省しないといけないし、こんなにいい経験をさせてもらっているのだから、もっといろいろ吸収しないといけないとすごく感じますね。

 プロテストでは納得のいくプレーができませんでしたが、去年12月のファイナルQTではそれなりの結果を残すことができました。プロテストの第2次予選で失敗したことで、「もうQTしかない」と気持ちを切り替えて臨みました。私は、80位台で最終日を迎えたのですが、スタートして2ホール目のパー3で、なんとホールインワン! それで順位が一気に30位くらい上がりました。後半はオーバーパーだったのですが、ホールインワンが利いてQTランキングで49位になり、今年のツアーに出させてもらえることになったんです。

ゴルファーとしてだけではなく人としても愛される選手になりたい

 そうして今年は初めてツアーに参戦しているのですが、残念ながら成績はよくありません。コースマネージメントなど、すべてにおいて自分に足りないものを感じています。試合に出るのに必死という状況なのですが、ただ漫然とやっているだけではダメだと思っています。練習も、これまではどの番手も同じようにこなそうとやって来たけれど、今は、「何か得意なものは?」と聞かれた時に「これです」と言えるものを作りたいですね。

 私は距離が出るほうではないので、フェアウェイウッドやユーティリティを使うことが多いんです。まずは、そういう長いクラブのコントロールで勝負できるようにしたいです。それと、いつかは「パットが得意」と言えるようになりたい(笑)。自分ではパットがいちばん下手だと思うから。ツアーのグリーンはやっぱり速いし、アンジュレーションもきついので難しいですね。シーズン序盤にくらべれば大きなミスは減って来たと感じるのですが、やっぱりバーディパットがまだまだ決められません。上位にいる方たちを見ていると、「ここは絶対に決めてくるだろうな」というパットはきっちり決めてきます。そこがまだ自分には足りないし、見習わないといけないですね。

 ところで、9月上旬の「日本女子プロゴルフ選手権」から母にキャディをお願いしています。母のほうから「やる」と言ってくれたのですが、たぶん私が苦労しているのを見かねたのだと思います(苦笑)。選手をいちばん間近で見られるのがキャディだし、焦った時に近くにいるのが母親だと相談もしやすいですからね。母はまったくゴルフをしないのですが、私が小さい頃からずっと見てくれているので、私のスイングだけは分かるそうで、いつもと違うところがあると指摘してくれるんです。

 今シーズン、私が出られる試合はもう限られているので、これからはQTでしっかり結果を残すことを考えて練習したいと思っていますが、それとは別に目標がいくつかあります。まずは、私の“春陽=はるひ”という名前を早く覚えてもらうこと(笑)。読み方が分かると、みなさん「いい名前だね」と言ってくださいます。そして、近い将来の目標としては、やっぱりプロテスト合格です。毎試合、ツアーで貴重な経験を積ませてもらっているので、それを次のプロテストで生かして“本当のプロ”になりたいですね。さらに大きな目標としては、いつか世界に出て行きたい。やはりアメリカでプレーしてみたいという思いはあります。そして、どこに行っても、ゴルファーとしてだけではなく人としても愛される選手になりたいと思っています。

中尾 春陽(なかお・はるひ)
  • 生年月日:1996年5月31日
  • 出身地:大阪府
  • 出身校:近畿大学付属高等学校
  • ゴルフ歴:9歳~
  • 身長:157センチ
  • 血液型:B
  • アマチュア時代の主な戦績:関西中学校ゴルフ選手権 優勝(11年)、関西ジュニアゴルフ選手権 3位(11年)、日本女子アマチュアゴルフ選手権 ベスト32(11年)

アイアンショットのキレで勝負。早くツアーで1勝したい
~小野 祐夢~

自分について回るギャラリーを見て、プロになったことを実感

 私は、この春に高校を卒業したのでプロテスト受験は今年が初めてだったのですが、密かにトップ合格を狙っていました。でも、初日イーブンパー、2日目が1オーバーと出遅れてしまったので、途中からは順位のことは考えず、一日一日ベストを尽くそうと気持ちを切り替えました。初日と2日目は、特に緊張することもなく、ショットの調子もよかったのですが、パットと噛み合わずにスコアにつながりませんでした。それで3日目から、パットのラインの読みを浅めにしてしてみたんです。前日まで膨らませすぎて外していたのでそうしたら、パットが入るようになってバーディが増えました。そのおかげで3日目は「69」、最終日は「67」が出せて、2位で合格することができました。

 合格が決まった時には「やっと終わったな」というのが正直な感想でした。長かったので、とにかくホッとしましたね。

 私がゴルフを始めたのは9歳の時で、岐阜にある坂田塾の東海校に入ったのがきっかけでした。両親の知人にゴルフ好きの人がいて、その人が「近くにこんな塾があるよ」と教えてくれたのですが、私はそんなことは知らなくて。訳も分からずに連れて行かれたところがゴルフ練習場だったんです(笑)。だから、最初は全然ゴルフをやりたくなかったし、試合に出て勝っても、ゴルフが大好きというのとは全然違いました。小学生のうちはその気持ちは変わらなかったので、けっこう長かったですよね(笑)。それが、中学に入って、コンスタントに試合でいい成績が出るようになって、友だちが増えるに連れて、ゴルフが楽しくなっていきました。

 坂田塾では、周りがみんなプロを目指していたので、私もゴルフを始めた時からプロゴルファーという仕事は意識していました。でも、プロになるかどうか真剣に考えたのは高校に入ってからで、プロを目指すのか、大学に進学するかでかなり悩みました。その結果、プロになろうと決めて、そこから練習量が増えたように思います。

 ツアーの試合には、中学2年の時に初めて「日本女子オープン」に出て、高校に入ってからも何試合か出場させていただきました。ツアーの試合に出て、たくさんギャラリーの方がいる中でプレーするようになると、以前よりゴルフをするのが楽しくなりましたね。レギュラーツアーのプロデビュー戦は、地元近くで行われた「マンシングウェアレディース東海クラシック」だったのですが、ギャラリーが多くて、私について回ってくださる方がけっこういるのを見て、「あぁ、プロになったんだな」と実感しました。

 ちなみに私の「祐夢」という名前ですが、「ひろむ」と読める人はまずいません。それに、赤ちゃんの頃からずっと男の子に間違えられてきたので、それが嫌でした(苦笑)。でも、母が自分の名前から「祐」という一文字を取って名づけてくれたので、今は気に入っています。

イ ボミ選手のスイングとギャラリーへの対応に惹かれる

 私の場合、得意クラブを聞かれるたびに答えが変わってしまうんです(笑)。これというものがないので、いつも違うことを言ってしまうのですが、あえて自分のセールスポイントを挙げるとしたらアイアンショットだと思います。パー4のセカンドショットとか、グリーンを狙うショットで安定してピンに寄せられるのが強みかな、と。アイアンショットのキレで勝負ということですね。

 逆に課題なのはパッティングです。ストロークに関しては、ずっと我流でやってきて、きちんと教わったことがないので正直よく分からないのですが、ラインの読みはまだまだですね。今年の5月にアマチュアとしてツアーに出場した際、コーチにバッグを担いでもらったのですが、試合中にグリーン上でコーチと話をしていて、私は読みが下手なことに気づいたんです。母には「気づくのが遅い!」と笑われたのですが(笑)、気づけたことで読み方を勉強するようになったし、それがプロテストでも生きたのでよかったと思っています。

 アプローチも、アマチュアの頃はあまり好きではありませんでした。でも、プロテストを意識して来たこの1年ぐらいでかなり練習をした結果、今ではけっこう好きになりました。ただ、ツアーの試合に出て感じるのは、やっぱりラフの難しさで、一般のコースのラフとは全然違います。グリーン周りだけでなく、セカンドショット地点でも、ツアーのコースの難しさを感じますね。

 目標にしているプロはイ ボミさんです。イ ボミさんに惹かれるいちばんの理由はスイングで、ダウンスイングでの足の使い方などは、見ていてすごく参考になります。それと、イ ボミさんはギャラリーの方への対応も素晴らしいので、そういうところも目指したいと思っています。

 プロゴルファーとしてスタートしたばかりですが、早くツアーで1勝するのが今の私の目標です。それから先はあまり深く考えたことがないのですが、いつかは賞金女王になってみたいですね。アメリカは、まだ行ったことがないので行ってみたいけれど、米ツアーに出てみたい気持ちは今のところありません。やっぱり日本ツアーのほうが応援してくれる人も多いので、その中でプレーするほうが楽しいと思うから。

 とはいえ、今は来年のツアー出場権を賭けたQTのことで頭がいっぱいで、まずはそれに向けて一生懸命練習したいと思っています。

小野 祐夢(おの・ひろむ)
  • 生年月日:1997年7月13日
  • 出身地:岐阜県
  • 出身校:帝京大学可児高等学校
  • ゴルフ歴:9歳~
  • 身長:161センチ
  • 血液型:A
  • アマチュア時代の主な戦績:中部女子アマゴルフ選手権 優勝(14年)、文部科学大臣杯争奪全日本大学・高等学校ゴルフ対抗戦 優勝(14年)、ネイバーズトロフィーチーム選手権 団体優勝(15年)