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悩めるあなたに、永井延宏プロがアドバイス! 100を切るためのクラブ選び

最終回 ボールとのマッチング編

“100のカベ”を破れずに悩んでいるアベレージゴルファーのみなさんに、「クラブ・身体・スイング」を三位一体としたレッスンで知られる理論派プロ・永井延宏氏が、クラブ選びの観点から、そのカベをクリアするための考え方をアドバイスするこの企画も、いよいよ今回が最終回。5回目となる今回は、クラブと同じくらい重要なボールの選び方がテーマ。クラブ、それに自分のプレースタイルに合ったボールを選んでスコアアップにつなげていただきたい。

ボールが止まらないことが、スコアを落とす原因になっていないか

 100切りをめざすレベルのみなさんに言いたいのは、クラブだけでなくボールにもこだわってほしいということです。なせなら、自分のプレースタイルに合っていないボールを使っているアベレージゴルファーが少なくないからです。
 私は、ラウンドレッスン会の際、スタート前にアプローチのレッスンをすることにしています。ボールを上げたり止めたり転がしたりする中で、インパクトのメカニズムを理解してもらうのが狙いで、それがわかれば当然アプローチのバリエーションも増えます。ところが、ラウンドが始まって、「この状況では、朝にやったあの打ち方でアプローチショットをしてみてください」と言って生徒さんに打ってもらうと、いい感じで打てているのに、私のイメージより球足が長いことがあります。「この打ち方なら悪くても1ピン以内に収まるだろう」と思って見ていると、オーバーしてしまって結果的に
5、6mにしか寄らない。技術の評価点としてはほぼ満点なのに、球が止まってくれないために結果が伴わないわけです。そして、そこからスリーパットしてダボ、トリとなってしまうのを見ると、とてももったいない気がします。
 こういうゴルファーの場合、ディスタンス系ボールを使っていることが少なくありません。打ち方はいいのに、球足が長いためにバンカー越えや深いラフからなどのシビアなアプローチが寄らない。バンカーショットにしても、けっこういい打ち方ができているのに、バックスピン量が少ないためボールが転がり、反対側のバンカーに入ってしまうことがあります。このように、ボールが止まらないことが、スコアを落とす原因になっているゴルファーがいるのです。
 たしかに、ドライバーの飛距離のことを考えれば、ソフトコアのディスタンス系ボールを使いたい気持ちはわかります。でも、ヘッドスピードがそれなりにあり、しっかりミートできる技術を持ったゴルファーがソフトコアのボールを打つと、距離の短いショットでもコアがつぶれるため、思ったよりも距離が出てしまいます。自分では80ヤード打ったつもりなのに、実際は100ヤードも飛んでしまうとか……。すると、「100ヤードはサンドウエッジだ」と思い込み、ツアープロよりも飛んでいるかのような、間違った距離感を身につけることになります。
 みなさんおわかりだと思いますが、このレンジのショットのタッチはデリケートなものです。自分のフィーリングよりボールが飛んでしまうと、正しいタッチや距離感が得られず、スコアメイクの妨げとなります。だから、このレベルのゴルファーにこそ、ボール選びにこだわってほしいのです。

ヘッドスピードが遅めでも、コントロール系ボールを使うべき

 私が思うに、スコアが100前後のレベルというのは、ボールが合っていないから止まらないのだということが、まだわからないのだと思います。少なくとも、グリーンに落ちてからボールがどう動くかというイメージはないのではないでしょうか。
 以前、とあるセミナーで、ゴルフ場を運営する方から「ボールマーク(ピッチマーク)を直さないゴルファーが増えています。解決策はありますか?」と質問を受けたことがあります。それに対して私は、「そもそもボールが着地した地点の近くにボールが止まらない限り、自分がボールマークを残している認識はないでしょう。それが、直すように伝えてもなかなか直らない理由では?」と答えました。
 その解決策のひとつと言ってはおこがましいのですが、ヘッドスピードが速くないアベレージゴルファーも、プロが使う、スピンが利くコントロール系タイプのボールを一度使ってみることをお勧めします。それがグリーン上でのマナー向上につながるだけでなく、先にお話ししたように、アプローチが上達しスコアアップを期待できるからです。
 私の生徒さんに、60歳台前半の元クラブチャンピオンという方がいます。ボールは『スリクソン Z-STAR XV』を使っていますが、その方と一緒にラウンドすると、グリーン周りのアプローチでパーを拾うプレースタイルであることがわかります。今もブルーティからプレーされるのですが、フェアウェイウッドやユーティリティを駆使して170~220ヤードの2打目を巧くこなしてグリーン近くまでもっていく。そして、そこからパーを拾うのですが、そういうプレースタイルにはウレタンカバーのボールがやはりベストマッチです。この生徒さんの場合、ボールがプレースタイルに完全にマッチしているわけで、アマチュアがめざすべきプレーのモデルだと感じます。
 ヘッドスピード40m/sを越える熟練ゴルファーの場合、距離優先でディスタンス系のボールを使い、仮にドライバーであと5ヤード飛び、フェアウェイウッドと合わせて10ヤード飛んだとしても、アプローチショットでコントロールが利かないのであれば、飛ぶことによるメリットとスコアアップとの関連性は薄いと思われます。そういうゴルファーは、プレースタイルから考えると、やはりスピン系ボールを使ったほうがスコアメイクには有効です。
 一方、ヘッドスピードが40m/s未満のゴルファー、具体的には女性やシニアは、やはり飛距離を優先してソフトコアのディスタンス系ボールを使うべきだと思います。低ヘッドスピードなら、アプローチでもボールをコントロールできるでしょうから、何より飛距離性能を優先すべきです。
 ゴルフボール開発の近年の流れとしては、モデルチェンジのたびに低スピン化が進み、直進性が高くなっています。技巧派のプロゴルファーは、「ボールを曲げようとしても曲がらないから難しい」と悲鳴をあげています。自分の技術とプレースタイル、それにクラブとのマッチングがますます重要な時代になってきたと言えるでしょう。

一定期間同じボールを使うことが上達につながる

 ダンロップが古くから提唱している「インピーダンスマッチング理論」をご存じでしょうか。これは、クラブヘッドとボールの固有振動数をマッチングさせることで反発係数は大きくなるという理論で、わかりやすくいうと、ヘッドとボールが同じくらい柔らかいほうがインパクト効率が上がって飛距離が出るという考え方です。私は、レッスンをしていて、ときどきこの理論を思い浮かべては「なるほどなぁ!」と感じることがあります。
 ヘッドスピードが遅めの人が、肉厚で鍛造の硬いヘッドを使った場合、インパクトで打ち負けてしまって全然ボールがフェースにくっついていないように見えることがあります。逆に、私たちプロと同じくらいヘッドスピードの速いゴルファーが、薄肉で鋳造のたわむようなヘッドで打つと、ヘッドがたわみ過ぎてロスが生じ、結果飛ばないと感じることもあります。
 このように、ヘッドスピードに対し、「ヘッドとボールの硬さがマッチしていないのでは?」と思うゴルファーをときどき見かけるのです。こういうケースを見ると、ヘッドスピードとヘッド剛性、それにボールの硬さを併せて考えるインピーダンスマッチング理論は、とても重要だと思います。
 『ゼクシオ』ドライバーの特徴のひとつに、フェース面のバルジとロールの作り込みの上手さがありますが、これはまさにインピーダンスマッチング理論から生まれたものでしょう。こういう基礎研究をしっかり形に出来るのは、ダンロップの強みだと思います。
 話をボールに戻しますが、コーチという立場から言わせてもらうと、ロストボールを買って異なる種類のボールをまぜこぜに使うのはやめていただきたい。まぜて使うと、たとえば「このフィーリングなら右のラフで止まっているはずだ」と思ったショットが、ボールを替えたことでインパクトでボールが滑り、OBまで飛んでしまうということも起こりえます。そして、アプローチやグリーンを狙うアイアンショットでは、ボール毎にまったく結果が変わってくる可能性があります。したがって、100切りをめざすゴルファーこそ、使うボールを決めて、一定期間同じボールを使うべきだと私は思います。
 同じボールを使っていれば、グリーンで止まりにくいかどうかもわかるようになります。止まりにくいのであれば、アプローチ用の練習グリーンがあるコースに行ったときに、いつもと違うボールを使ってみる。たとえば、初心者のときからずっとディスタンス系のボールを使ってきたゴルファーが、『スリクソン Z-STAR』などのスピン系ボールを1スリーブだけ買って試してみてもいいでしょう。ボールの違いを実感するには、それが早いかもしれません。
 街の練習場にしても、コースボール使用を売り文句にしている練習場がありますが、私たちプロに言わせれば、あれは練習になりません。同じ打ち方をしても、一球一球の球の高さやフィーリングが違うからです。同じボールでショットをして、高さや弾道の違い、止まり具合など覚えておく。それが間違いなく上達につながるのです。
 もちろん、パターも、使うボールによって曲がり具合や球足の伸びが違ってきます。そのため、私がボールの試打テストをする場合には、必ずパットまでやらせてもらいます。そして、球足が伸びるボールだなと思えば、パットをショートしやすい人に勧めたりします。100を切るためには、当然パッティングの上達も欠かせませんから、タッチが合わない方は違うボールを試してみるといいでしょう。

PROFILE

永井延宏(ながい・のぶひろ)
1969年埼玉県生まれ。日大桜ケ丘高校でゴルフ部キャプテンとして活躍。卒業後、アメリカにゴルフ留学。ミニツアーに参戦しながらスイング研究に取り組む。その後、国内やオーストラリアでティーチングを行い、片山晋呉プロをはじめツアープロの優勝に貢献。古武術やゴルフギアについても造詣が深く、「クラブ・身体・スイング」が三位一体となった独自のティーチング理論は高い評価を受けている。2006年度ゴルフダイジェスト社選「レッスン・オブ・ザ・イヤー」受賞。
永井延宏オフィシャルウェブサイト「Deep in Golf」http://www.deepingolf.com/