
第1回 ドライバー編
ゴルフのスコアにおいて、多くのアベレージゴルファーの前に立ちはだかる「100のカベ」。そのカベをなかなか破れずに悩んでいるあなたのために、「クラブ・身体・スイング」を三位一体としたレッスンで知られる理論派プロ・永井延宏氏が、クラブ選びの観点から、そのカベをクリアするための考え方をアドバイスする。1回目のテーマは、苦手意識を持っている方も少なくないはずのドライバー。あなたの使っているドライバーに、永井プロが挙げる“症状”が当てはまるなら、何らかの対処が必要だ。
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最近のドライバーは、フックグリップで握りやすい
100切りをめざすゴルファーのみなさんに、まず理解してほしいのは、「ドライバーは、いちばんやさしいクラブである」ということです。なぜか? 近年のドライバーは「長・軽・大」といわれます。長くて軽いからヘッドスピードがラクに出せますし、ヘッドも大きい。それに、ゴルファーの体格や体力は人それぞれですが、重量をはじめ実に様々なスペックのドライバーが作られています。だから、女性を含めどんなゴルファーでも振り切れる。非常に打ちやすくて、イージーに距離を稼げるのが今のドライバーなのです。
とはいえ、100切りを目指すレベルのゴルファーがドライバーで苦労する姿は、日頃のレッスンや一緒にラウンドする中でよく目にします。そのいちばんの原因は、クラブフェースが開いてしまうこと。ゴルフを始めた人が、最初にぶつかるハードルがこの問題と言っていいでしょう。
どんなにつかまりがいいドライバーであっても、重心距離がゼロではない以上、スイング中、クラブフェースは開く方向に働きます。当然、開いたままではスライスなどのミスが出る。私が生徒さんに「あなたのスライスは、クラブフェースが開いてしまうのが原因ですよ」と説明すると、「ゴルフを15年やってきたけど、そんなアドバイスは初めて」と驚かれることがよくあります。そのため、100切りを目指すなら、ドライバーのフェースを閉じて使えるようにすることが第一のステップになります。
そのための方法のひとつは、「フックグリップで握り、フェースが開かないようにテークバックする」こと。実は近年のドライバーはヘッドの重心が深くなって後方が重くなった分、自然とフックグリップに握る人が増えています。それはジュニアゴルファーを見ると明らかで、彼らは驚くほどフックに握ります。それは、重心の深いドライバーを使ってゴルフを始めたからでしょう。それに対し、パーシモンやステンレスメタル世代の方は、左手を浅く握り右手を深くかぶせたウイークグリップ傾向が強いので、もう一度チェックしてみてください。
「ロフトが多め」「手元感覚も重視」のドライバーを
前置きが長くなりましたが、クラブ選びという観点から言うと、アベレージゴルファーは、ボールが十分に上がるロフトのドライバーを選ぶことを心がけるべきです。ドライバーは、打ち出しの高さがある程度ないと遠くに飛びません。ところが、アベレージゴルファーのショットを見ていると、ボールが上がり切らない人が多い。そのため滞空時間が稼げずに飛距離が出ないのです。これは、アマチュアのスイングとも関係しています。ドライバーのインパクトは、ティアップしていることもあり、アッパー軌道が理想です。ところが、アマチュアの場合、上から叩き潰すダウン軌道であるために、ヘッドが上から入ってしまうことが多い。それでは球が上がりません。だから、ロフトが多めのドライバーを使うべきなのです。フィッティングする場合にも、ボールが十分に上がるシャフトを選ぶようにしてください。

「いくつかに分割してバルジやロールを設計するなど、ダンロップのフェース面のつくりの上手さは特長的。フェース設計のノウハウはすごくあるなと思います」(永井プロ)
ゴルフのレッスンでは、よく「ヘッドを感じろ」という言葉が使われますが、ドライバーの場合、手とヘッドはけっこう遠いですよね(笑)。だから、できるだけ手元に近いところの感覚を大事にしてほしいと私は思っています。その方法のひとつが、グリップの下に鉛を貼って、手元の位置や動きのタイミングを感じやすくするカウンターバランスです。バックスイングのタイミングやトップの位置が感じにくかったり、切り返しの動きがぎこちなかったりする人が、カウンターバランスにすることでスイングがよくなることがあります。『ゼクシオ セブン』が、これまでよりもシャフトの重心を手元寄りに持ってきたのは、このカウンターバランスの考えに近いと思います。これを私は「カウンターフィーリング」という造語で呼んでいます。『ゼクシオ セブン』は、「重心を手元に持ってくることで慣性モーメントが小さくなって振りやすい」と謳っていますが、ヘッドを感じようとするときに、手元側にインターフェースというか、窓口があるのはとてもいいこと。このように、ヘッドだけでなく、手元の感覚も重視したドライバーを選ぶことをお勧めします。
なかなか芯に当たらなければ、ヘッドの重量を疑え
私は、生徒さんには、「コースでドライバーを打ったあとは、必ずフェースの打球痕を消してきれいにしておいてください」と指導していて、私自身も実践しています。なぜそんなことをするかというと、「フェースのどこに当たるとどういう球が出る」とか、「自分のイメージでこういう動きをしたときにはこういうミスが出て、その場合、フェースのここに当たった」といったことを自分なりに把握するためです。
「打球痕は、指や、タオルでこすればきれいに消えます」と永井プロ。
たとえば、いつもフェースの下のほうで打っていることがわかれば、それはヘッドがボールに届いていないわけですから、もっと上のほうに当たるよう工夫をする必要があります。この場合、ティアップを高くしてみるのがいちばん簡単な方法です。それでも変わらなければ、ヘッドが軽すぎるのが原因ですから、もう少しヘッド重量のあるドライバーに換えてみてもいいでしょう。
あるいは、鉛を貼ってヘッドを重くしてみる。鉛は貼る位置に注意しないといけませんが、0.5gの鉛を貼るだけでスイングは大きく変わります。「自分は下手だから鉛なんて……」というアマチュアの方もいますが、これは力学的な現象ですから、どんな人でも絶対に変わります。変化を感じないのは、鉛を貼った本人だけで、私が見ると、タメができて、切り返しのタイミングがよくなったりするのです。
ラウンドレッスンをしていて、他のクラブはうまく打てるのに、ドライバーになるとミスが出る生徒さんというのを見かけます。練習場で同じクラブを連続して打っているときにはわからないのですが、ラウンドで、一打ずつ違うクラブを使うとミスが出るのです。気になって、私がクラブをチェックすると、軽すぎたり、シャフトの調子が他と違ったり。こういう場合、鉛を貼ってあげることでスイングがよくなることがあります。
鉛がいいのは、コストがかからないところです。もちろん、自分に合った重量のクラブを選ぶのがベストですが、もしも軽すぎる場合には一度試してみてはいかがでしょう。
PROFILE

永井延宏(ながい・のぶひろ)
1969年埼玉県生まれ。日大桜ケ丘高校でゴルフ部キャプテンとして活躍。卒業後、アメリカにゴルフ留学。ミニツアーに参戦しながらスイング研究に取り組む。その後、国内やオーストラリアでティーチングを行い、片山晋呉プロをはじめツアープロの優勝に貢献。古武術やゴルフギアについても造詣が深く、「クラブ・身体・スイング」が三位一体となった独自のティーチング理論は高い評価を受けている。2006年度ゴルフダイジェスト社選「レッスン・オブ・ザ・イヤー」受賞。永井延宏オフィシャルウェブサイト「Deep in Golf」http://www.deepingolf.com/