
第3回 アイアン編
パターとともに、手にする頻度が最も高いアイアン。それほど大事なアイアンを、あなたは何となく選んでいないだろうか? “100のカベ”に苦しむアマチュアゴルファーに、理論派プロ・永井延宏氏が、クラブ選びの観点から、そのカベをクリアするための考え方を伝授する連載企画。今回のテーマであるアイアン選びに関しても、永井プロはユニークなアドバイスをしてくれた。
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アイアンは、ショートアイアンの打ちやすさで選ぶ時代
ひと昔前まで、アイアン選びは「ロングアイアンが打ちやすいかどうか」が基準でした。ロングアイアンが打ちこなせるモデルすなわちいいアイアンの条件だったわけです。ところがいま、アイアンセットは6番から下の番手で販売するのが一般的で、3、4、5番はアベレージゴルファーのキャディバッグからは姿を消してしまいました。こんなご時世で、何を基準にアイアンを選べばよいのか? それは、ずばりショートアイアンの打ちやすさです。私が生徒さんとラウンドしていて感じるのは、ショートアイアンでグリーンを狙うショットがショートすることが多いことです。ドライバーと同様、アマチュアはアイアンでもアウトサイドイン軌道によりヘッドが上から入り過ぎてしまうことが多く、ロフトの立った番手では、フェースの上でボールが滑ってスライス、そしてロフトの多い番手ではヒッカケというのが定番的ミスです。そこで、ショートアイアンでラインを出そうとすると、インパクトでフェースを開いて当てなければならず、インパクトロフトが番手本来のロフトより増えてしまいます。だから、ナイスショットだと思っても、上空で失速しあとひと伸び足りずにショートしてしまう。このフェースを開く動きがインパクトで強く出ると、リーディングエッジが上を向いてトップしたり、身体が起き上がればシャンクしたりと大きなミスにもつながります。せっかくドライバーでナイスショットを打って、2打目でグリーンオンのはずが大叩き……、この様な展開は、100のカベを越えられないゴルファーには思い当たる節があるでしょう。

長いクラブと同様、ショートアイアンも、重心距離はある程度長いほうがゆっくり振れますし、飛距離も出ます。ところが、そうでないクラブもあって、たとえば以前私が使用していた某メーカーのアイアンは、ロングからミドルまではよかったものの、ショートアイアンになると思ったような飛距離が出ませんでした。それは、いわゆるマッスルバックのアイアンによくあるヘッド形状の流れなのですが、ショートアイアンのヘッドがコンパクトになりすぎて重心距離が短すぎるのが原因。シャープさや操作性がメリットとして謳われる反面、重心距離が短いためインパクトでのスピードが出ずに球が軽くなります。感覚的には、ゆっくり振って厚いインパクトという、ショートアイアンらしい心地よさが得られません。
その点、『ゼクシオ セブン』アイアンのショートアイアンは、アマチュアゴルファーのヘッドスピードに合わせた重心距離があるため、ゆっくり振っても強くインパクトでき、イメージどおりの弾道が出ます。軽く振っても自然にヘッドがターンするので、球の捕まりもいい。その結果、打感がよくキレ味も出て、コントロール性の高いショットが打てるのです。
ショートアイアンを“軸”に考えるならスチールシャフトでもいい
このように、軽く振って狙ったとおりの距離が打てるのが理想のショートアイアンです。そんなクラブを見つけるには、重量にも注意しなければいけません。感覚的にわかると思いますが、短いクラブはある程度重量があるほうが打ちやすいですよね? ところが、レディス用のショートアイアンやウエッジの中には軽すぎるものもあります。本当に非力な女性には合うのでしょうが、たとえば、そこそこヘッドスピードがあるのにバンカーショットが一発で出ないという女性の場合、クラブが軽すぎるのが原因かもしれません。そういうミスが出る人は、今使っているアイアンの重量を疑ったほうがいいでしょう。シャフトも重さを重視すべきで、ショートアイアンの振りやすさでシャフトを選んだほうがメリットは大きいと思います。前回、フェアウェイウッドやユーティリティの中で自分の得意な一本を作ってくださいというお話をしましたが、アイアンにも同じことがいえます。自分のプレースタイルや得意距離に応じて、軸になる番手を持って欲しいのです。
その番手が、たとえば6番や7番なのであれば、振りやすさを考慮してカーボンシャフトを選べばいいでしょう。ただ、それより短い番手への依存度が高いゴルファーの場合、別の振りやすさを考える必要があります。つまり、ショートアイアンにカーボンは軽すぎると感じるなら軽量スチールにトライすべき。さらに、体力に自信があって、短い番手を軸に考えるなら、ダイナミックゴールドというチョイスもありです。「アマチュアにDGなんて打てないよ」という人がいるかもしれませんが、それはあくまで3番、4番の話。短い番手であれば、重すぎてヘッドスピードが落ちるということはないし、むしろ重い方がゆったり振れてスイングのコントロール性が高まることもあるのです。
ライ角フィッティングは標準から±2度が限度
いま使っているアイアンを自分のスイングに合わせる方法として、最近流行しているのがライ角フィッティングです。たしかにライ角が適正でないと、アイアンでもフックやスライスが出やすくなるため、私もライ角のチェックは必要だと考えています。ただし、実際に行なう場合にはよほど注意しないといけません。フィッティングする際によくある方法として、ソールに感圧紙などを貼ってインパクトでのソールの接地状態をチェックしますよね? けれど私は、このやり方でソールがベッタリと地面につくようにするのが最適なフィッティングとは思いません。

そういうゴルファーが、ライ角をアップライトにすることで、たしかにインパクトでソールが地面にきれいに当たる心地よさは感じるかもしれません。ただ、それだと逆にアドレス時にはトゥが完全に地面から浮き上がるため、構えにくいクラブになってしまいます。それに、実際にコースに出れば、フラットなところばかりではありません。ツマ先上がりやツマ先下がりのライから打つことも考えると、あまり極端にライ角を変えるのは考えものです。
なにより3度以上ネックを曲げてしまうと、ゴルフクラブの基本デザインそのものを壊してしまうことになります。ライ角はひとつの要素に過ぎないため、それにこだわり他の要素を台無しにしてしまっては本末転倒です。
私の生徒さんの中にも、ライ角フィッティングで失敗した人がいます。その生徒さんは、フェースが長めのアイアンを使っていました。どこかのゴルフショップでライ角フィッティングをやってもらったそうなのですが、長めのフェースゆえソールも長め。その長めのソール全面に感圧紙の跡が着くように調整されたそうです。そして、コースで打ってみると、すべてのショットの弾道がフックに……。その生徒さんは、「ショップでは、これでいいと言われたんです」と話していましたが、それでいいはずがありません。私に言わせれば、長いソールを全部べったり接地させれば、そういう球が出るのは当然であり、実際のインパクトでは、ソールが全部接地する必要はないのです。そう考えると、ライ角を調整するにしても、標準の±2度までが限界だと思います。
ウエッジは“浮いた歯”を打ちこむことでスピンがかかる
最後にウエッジ選びについても触れておきましょう。100切りを目指すレベルのアマチュアのみなさんに言いたいのは、とにかくバンスがあるウエッジを選んでくださいということです。
バンスをひと言で説明すれば「お助け機能」です。つまり、困ったときにゴルファーを助けてくれるのがバンスなのですから、たくさんあったほうがいい。

ただ、そんなゴルファーはプロの中でもほんのひと握りであり、多くのプロにはバンスは必要なのですから、アマチュアはなおさらバンス角が大きいものを選ぶべきですし、それに加えて私はソールが厚いものをお勧めします。
バンスがあると、「地面にはねられてトップするのでは?」「フェースを開いたときにどうしても歯が浮くので、それが怖い」という人がいます。でも、浮いた歯を地面に打ち込むことでスピンはかかるのであり、それがウエッジ本来の使い方なのです。
冬の枯れ芝の季節になると「ローバンスが有効」という説が必ず登場しますが、これはまったく逆の考え方。冬場こそ「バンスの効いたウエッジがいい」と思えるようになれば、ウエッジの機能を理解している証拠であり、100切りレベルは問題なくクリアできるでしょう。このあたりはプロや上級者でも勘違いしているゴルファーが多く、いわゆるアプローチイップスになってしまったプロ・上級者が使っていたウエッジの共通点は、ローバンスでエッジがカミソリのように薄いタイプだと聞いたことがあります。つまり「お助け機能」がないウエッジを使った結果、ミスのダメージがそのままメンタルを壊してしまった訳です。
みなさんも、このような勘違いで、アプローチが不調に陥っていませんか? エッジが丸く厚みがあり、バンスがあってソール厚めのウエッジこそ、多くのゴルファーを助けてくれる「お助け機能満載」のウエッジなのです。
PROFILE

永井延宏(ながい・のぶひろ)
1969年埼玉県生まれ。日大桜ケ丘高校でゴルフ部キャプテンとして活躍。卒業後、アメリカにゴルフ留学。ミニツアーに参戦しながらスイング研究に取り組む。その後、国内やオーストラリアでティーチングを行い、片山晋呉プロをはじめツアープロの優勝に貢献。古武術やゴルフギアについても造詣が深く、「クラブ・身体・スイング」が三位一体となった独自のティーチング理論は高い評価を受けている。2006年度ゴルフダイジェスト社選「レッスン・オブ・ザ・イヤー」受賞。永井延宏オフィシャルウェブサイト「Deep in Golf」http://www.deepingolf.com/