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悩めるあなたに、永井延宏プロがアドバイス! 100を切るためのクラブ選び

第4回 クラブセッティング編

みなさんのキャディバッグには、おそらくルール上限の14本のクラブが入っていることだろう。でも、その14本を選んだ根拠を聞かれて、明確に答えられるゴルファーはそう多くないはず。 “100のカベ”に苦しむアマチュアゴルファーに、理論派プロ・永井延宏氏が、クラブ選びの観点から、そのカベをクリアするための考え方を伝授する連載企画。4回目の今回は「14本のクラブの組み合わせ方」がテーマだ。

ロフトの間隔は、理論ではなくコースでの使いやすさで決める

 アマチュアのみなさんを見ていて、スコアアップのために「もう少し考えたほうがいいのでは?」と私が思うのが、クラブセッティングです。熱心な方はゴルフ誌などを読んで研究しているようですが、そんな人でもプレーとバッグの中身を見せてもらうと、人気のクラブを揃えているだけで、機能していないなと感じるケースが多いものです。
 当たり前のことですが、私たちプロのクラブセッティングはきわめて実戦的で、コースで実際にプレーしてみて使いやすいか、一本ずつが目的に対して機能しているかどうかが基準になります。ゴルフショップで測った重量やロフトピッチなどは、あくまで理論上の話であり、クラブとしての機能はもっとトータルで計るべきです。
 かつて私は、マッスルバックのアイアンを使っていましたが、3番、4番アイアンは低重心のモデルを使い、5番からは別のモデルをミックスして使っていました。ロフトを計測してみると、4番と5番のロフトピッチは約2度でした。これは理論的には番手間の間隔としては正しくありません。しかし、ロングアイアンは低重心性能により高弾道・低スピンが得られキャリーがよく出るので、プレーする際の“番手のピッチ”としては違和感がありませんでした。数字などの机上の理論と実際は違うという好例です。
 もうひとつ私の例を挙げると、私はいま52、58、60度という3本のウエッジをバッグに入れています。これもロフトの差だけ見れば正しくないと思われるかもしれませんが、58度と60度とでは用途がまったく違うのです。詳しく言うと、60度のウエッジをラウンドで使うのは一度か二度だけですが、バンカーのライやラフの状況によっては、どうしてもこのロフトでなければダメというケースがあります。そういうときにきちんと仕事をしてくれる“スーパーサブ”のような位置づけで、私は60度をバッグに入れています。そのため、他のウエッジとの流れで考える必要はないのです。

アイアンセットのロフトのすき間は、もう1本のウエッジで埋める

 第2回で、100を切れるかどうかは、フェアウェイウッドかユーティリティの活躍次第であり、とにかく自分の得意クラブを一本見つけてくださいというお話をしました。アイアンも同様で、たとえば7番アイアンなどは、みなさんよく練習する番手だと思いますので、得意クラブにするのは難しくないでしょう。
 このように、ロングゲームを担当するクラブを1本、7番アイアンが1本、それにウエッジとパターを加えた計4本のクラブを、自信を持って打てるようにすれば、私は必ずしもドライバーはバッグに入れなくてもいいと考えます。実際、少ない本数のクラブでラウンドするという楽しみ方をしているゴルファーはいますし、クラブの本数を減らしてもスコアが変わらなかった、という雑誌の企画をよく見かけます。ですから、ドライバーをうまく打てないことが原因でスコアが伸び悩んでいる方は、ぜひ試してみてはいかがでしょう。
 この考え方では、アプローチウエッジ(AW)も重要になるのですが、アマチュアの場合、ストロングロフトに起因する問題が避けられません。
 これは以前に私が目にした生徒さんの実例です。体格は人並みのアベレージゴルファーで、特に飛距離が出るわけでもないのに、100ヤードをSWで打っていました。私が理由を尋ねると、「AWだと120ヤード飛んでしまうから」と。たしかに、最近のAWはストロングロフト化によって、ロフトが50度あるいは51度とけっこう立っている。そしてディスタンス系のソフトコアのボールは、低ヘッドスピードでも反発が高いので、実際に「AWで120ヤード」という現象が起きてしまいます。となると「SWは100ヤード」と考えるのは無理もないですが、SWを拝見すると、やはりロフトは56度くらいありました。56度では当然100ヤードは届きません。届かないクラブで無理に飛ばそうとすると、トップやシャンクなど致命的ミスをしてしまいスコアアップの妨げになります。
 そのため、アイアンをSWまでセットで揃えるのはいいとして、距離の打ち分けが難しければ、ロフトのすき間を埋めるクラブ、具体的には異なるロフトのウエッジで間隔を調整するといいでしょう。100ヤード前後の距離というのは、スコアメイクにはかなり重要ですが、上級者であってもコントロールショットで距離を打ち分けるのは難しいものです。それよりも、フルショットで打ち分けるクラブバリエーションがあったほうが、距離の打ち分けはやさしいはずです。

フェースバランス型パターは、自分のタッチを身につけてから使おう

 アマチュアのパター選びについても、日頃私が痛感していることがあります。アマチュアの方にとって「やさしい」と定番化した感のある、フェースバランス型のパター、中でもいわゆるネオマレット型の大きなヘッドのパターですが、全国各地でレッスン会を行なう中で、その類のパターをちゃんと打ちこなせているゴルファーがひとりもいないということです。そういうパターは、ヘッドの慣性モーメントが大きいのがメリットですが、その分うねりも大きいために不安定になって、テイクバックが歪んだり、インパクト以降たんに左に引きずり込む動きになって、いわゆるリリースができません。ヘッドの慣性モーメントの大きさを生かしながら、正しくボールをヒットするストロークができているアマチュアは、私が見た限りゼロと言っていいでしょう。
 そもそもゴルフというのは、重心距離のある道具でボールを打ちこなすもの、というのが定義だと私は思っています。その意味では、重心距離のないフェースバランス型のパターが認められるのはおかしい。私がこういう話をすると、みなさんから反感を買うのですが(笑)、それはフェースバランス型のパターはアマチュアをいい方向に導かないと、レッスンの場で痛感するからです。
 私の経験では、重心距離のあるパターを使っているゴルファーの方が、低く真っ直ぐテイクバックを引くことができているように思います。フェースバランス型のパターやセンターシャフト型の方が、真っ直ぐ引きやすいという意見もありますが、うまくいっていないゴルファーを基準に考えると、細くて長いこん棒でボールを小突くような打ち方しかできずに自分のタッチをつかめていないゴルファーを救うには、重心距離のあるパターしかないと思います。
 また、みなさんには、「ジュニアはパットがうまい」という印象があるかもしれませんが、私が知るかぎり、ショットはいいのにパットはトンチンカンという子どもが少なくありません。そういう子を見ると、重心距離のないフェースバランス型のパターを使っていることが多いのです。
 そのため、これからタッチを磨かないといけないゴルファーは、結果を感覚にフィードバックしやすいパターを選んだほうがいいというのが私の考えであり、その意味では重心距離の長いモデルがお勧めします。そうなると、やはりいちばん無難なトゥ&ヒールタイプから入るべきでしょう。そういうパターで、重心を感じながらテイクバックして、しっかりとボールにコンタクトする。そうやって、まずは自分のタッチを磨くべきであり、そうして自分のタッチを身につけたあとであれば、フェースバランス型のパターのメリットも生かすことができるのです。

合わないクラブを使うことで起こる「スイング以上のミス」

 これは、組み合わせという話ではないのですが、アマチュアの方と一緒にラウンドしていて私が感じる大きな問題は、コースにおいて「スイング以上のミス」が出ているということです。どういうことかというと、私たちプロは、アマチュアの方と一緒にラウンドした場合、何ホールかプレーが進み、その方のショットを見れば、「ああ、このリズムで打つと、いいショットが打てるんだな」と、その人のタイミングやスイングのメカニズムがわかります。ところが、まったく同じように打ったのに、結果に大きな差が出るケースがあります。
 たとえば、私の目から見て、身体がほぐれていい感じになってきたなと思う頃、予想どおりスムーズなスイングができドライバーでナイスショットを打ったとします。ところが、第2打でフェアウェイウッドを持ち、ティショットと同じようなタイミング、スイングで打ったのに、なぜか今度はチョロに……。
 こういう場合のミスは、スイングが悪いのではなく、クラブが原因だと思われます。こういう場合、重量、シャフト、ヘッド特性など、いくつか疑うべき要素が瞬時にリストアップされます。これが、私のいう「スイング以上のミス」です。こういうミスは専門家にチェックしてもらうのが一番ですが、100切りを目指すレベルであっても、やはり自分のスイングは正しいと信じて、むしろクラブを疑ってほしいのです。この例のように、コースで他のクラブではナイスショットが出るのに、フェアウェイウッドだけが当たらないとか、7番アイアンだけ引っ掛かるというようなクラブに対する違和感は、得てして当たっていることが多いものです。それなりにコースに出ている人で、そういう違和感を覚えているなら、ぜひ検証すべきです。

PROFILE

永井延宏(ながい・のぶひろ)
1969年埼玉県生まれ。日大桜ケ丘高校でゴルフ部キャプテンとして活躍。卒業後、アメリカにゴルフ留学。ミニツアーに参戦しながらスイング研究に取り組む。その後、国内やオーストラリアでティーチングを行い、片山晋呉プロをはじめツアープロの優勝に貢献。古武術やゴルフギアについても造詣が深く、「クラブ・身体・スイング」が三位一体となった独自のティーチング理論は高い評価を受けている。2006年度ゴルフダイジェスト社選「レッスン・オブ・ザ・イヤー」受賞。
永井延宏オフィシャルウェブサイト「Deep in Golf」http://www.deepingolf.com/