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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.3 『ゼクシオ』ドライバーの選び方
その1「レギュラーモデル」編
 
 今回のテーマは、2000年度ドライバー部門売上げNo.1となった『ゼクシオ』の選び方です。『ゼクシオ』は、大ヒットしているだけにユーザーも実に様々。それ故、多くの人に使用してもらえるよう、「レギュラーモデル」の他に、「ツアーモデル」、そして「ツアーモデルライト」と3種類も用意されています。
 これだけの種類とスペックがあるのですから、必ず自分にマッチした『ゼクシオ』を選ぶことができるわけです。しかし逆に言えば、たくさんのスペックの中から、どの『ゼクシオ』が一番自分にマッチしているのかを探すのもなかなかに大変です。そこで、私、松尾好員が、皆さんに最適な1本を選べるように、3種のドライバーを同時に打ち比べ、またヘッドなどクラブのデータを見ながら、それぞれの特徴を 検証していきたいと思います。(データについては別表をご覧下さい)
 まずは、『ゼクシオ』の「レギュラーモデル」から見ていきましょう。このモデルは最も多くのゴルファーに向いているものです。ちなみにざっくりと3種類の『ゼクシオ』を分類すると、この「レギュラーモデル」は一般アベレージ向け、「ツアーモデル」はプロが使用するものとほとんど同じハードスペックモデル、そして「ツアーモデルライト」は「ツアーモデル」より少しパワーの少ない人向けといったところでしょうか。
 そういった基本的なことを踏まえたうえで、今回は「レギュラーモデル」にスポットを当てて、どんな人に向いているかを調べていきたいと思います。
 『ゼクシオ』の「レギュラーモデル」を検証するにあたり、代表的な10度のRシャフト仕様を実測してみました。シャフトの長さは46インチで、最近のドライバーの中では長めのクラブになっています。しかし、スイングウェイトはD1.3で、クラブ重さは285gと軽くなっています。
 このため、振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントは288万gcm2と、46インチの長さの割にはとても振りやすくなっています。
 ちなみに、『ゼクシオ』の「ツアーモデル」を調べてみると295万gcm2もあり、「ツアーモデルライト」でも291万gcm2あります。 つまり、「レギュラーモデル」は「ツアーモデル」より7万gcm2,「ツアーモデルライト」より3万gcm2少ないということになります。 
 では、クラブ慣性モーメント値とはいかなるものかとなるわけですが、例えばアイアンでいうと、1番手の差は約1.5万gcm2あります。つまり、3番アイアンと5番アイアンの2番手差の振りやすさの違いは約3万gcm2となります。この違いは、ゴルフの技量に関わらず、ほとんどの人が感じ取れるものだと思います。ということは、3万gcm2の違いは実に大きいものなのです。
 つまり、「レギュラーモデル」と「ツアーモデルライト」の振りやすさの違いは、3番アイアンと5番アイアンほどの違いがあるということなのです。そして「レギュラーモデル」と「ツアーモデル」は、なんと3番アイアンと8番アイアンぐらいの振りやすさの違いがあるということなのです。
 だからこそ、この「レギュラーモデル」は打ちやすいと評判となり、多くの方に愛されているのだと思いますし、ここにヒットの秘密があるのだと思います。
 そして、私の最近の調査で、以下の事柄が分かっています。

 1. ツアープロは295万~300万gcm2のものを使用している。目安としては、ヘッドスピードが50m/s以上で、飛距離が280ヤード以上のクラスの方。
 
 2. アマチュアの飛ばし屋で、ヘッドスピードが45~48m/sくらい、飛距離が250~270ヤードクラスの方は、292万~295万gcm2のものを使用している。
 
 3. ヘッドスピード」が40~42m/sくらいのアベレージゴルファーは、飛距離が220ヤード前後となるはずだが、この場合、明らかに290万gcm2以下のものを使用した方がよく振り切れる。
 
 このようなことから、この『ゼクシオ』の「レギュラーモデル」では、シャフトが軟らかめであることも考慮して、Rシャフトはヘッドスピードが40m/s前後の方が、Sシャフトはヘッドスピードが43m/s前後の方が使用するとよいと思います。  また、ロフト角に関しては、リアルロフトが表示よりも1度くらい多めですから、普段から高めの弾道の方でしたら1度ロフトが小さめでも大丈夫でしょう。
 
 しかし、以上のことはあくまで私の個人的な見解です。ですから『ゼクシオ』の「レギュラーモデル」を選ぶにしても、自分のスイングや弾道にあったものを選ばなければ意味がありません。だからこそ、本当に自分にあった1本を選ぶには、クラブの勉強もするようにしてほしいと思います。

レギュラーモデル ツアーモデルライト ツアーモデル

     レギュラーモデル レギュラーモデル ツアーモデルライト ツアーモデルライト ツアーモデル ツアーモデル
S-9° R-10° S-9° S-10° X-8° S-9°
クラブ長さ inch 46.0 46.0 45.6 45.6 45.3 45.4
クラブ重さ g 290.4 285.2 319.6 313.3 333.3 331.9
スイングウエイト   D2.0 D1.3 D1.8 D0.5 D2.6 D2.2
クラブ慣性モーメント gcm2 291万 288万 296万 291万 295万 295万
               
ヘッド重さ g 188.0 188.3 189.2 --- --- 188.0
ヘッド体積 ml 301 308 297 --- --- 298
リアルロフト角 deg 9.2 10.7 10.0 --- --- 10.7
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。
 次回は「ツアーモデル」と「ツアーモデルライト」を分析してみます。「レギュラーモデル」とは異なるヘッドスピードの持ち主の方は、大いに参考となるものだと思います。
 「レギュラーモデル」との比較もしながら分かりやすく解説したいと思います。期待して下さい。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。