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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.78

『スリクソンZフェアウェイウッド』を検証する


 新しくなった『スリクソンZ』シリーズのドライバーは、選べる3種類のヘッドが用意され、やさしく打てるものから本格派のツアーモデルまですべて揃っています。では、同時に発売された『スリクソンZフェアウェイウッド』の性能は果たしてどのようなものでしょうか。今回もクラブとヘッドをじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1) 2種類のヘッドで選べるようになった
 これまで『スリクソンZ』のフェアウェイウッドのヘッドは1種類でしたが、新しい『スリクソンZフェアウェイウッド』では2種類のヘッドを選べるようになりました。
 ドライバー同様、第一印象ではヘッドが大きくてやさしく打てそうな『Z525』と、少し小ぶりで使い勝手がよさそうな『Z725』の2モデルがあります。
   
2) 球が楽に上がってやさしい『Z525フェアウェイウッド』
 『Z525フェアウェイウッド』は、従来の『スリクソンZ』のフェアウェイウッドに比べて、ヘッドが大きくなり、アドレスしたときの安心感が増し、フェアウェイからだけでなく、ティショットにおいてもとても打ちやすくなりました。
 ヘッドが大きくなった分、球が上がりやすく、ヘッドスピードが40m/sくらいの方でも十分に球を上げられ、フェアウェイウッドで球が上がりにくい方にとって、とてもやさしく感じられるはずです。
 また、『Z525』のインパクト音は、『Z725』よりも少し高めで、爽快感があります。
 この『Z525』のモデルがあることで、これから上を目指すアベレージゴルファーの方も『スリクソン』のフェアウェイウッドを使えるようになったのはとてもよいことだと思います。
   
3) 操作性のよい『Z725フェアウェイウッド』
 『Z725フェアウェイウッド』は『Z525』に比べて、ヘッドがやや小ぶりで、フェースプログレッションも小さくなっています。
 このため、フェアウェイでもライの悪いところ、例えばラフやフェアウェイバンカーなど難しい状況下でもヘッドをボールの下に入れやすく、ナイスショットしやすくなっています。
 また、ヘッドが小ぶりと言っても競技ゴルファーにとっては十分なヘッドの大きさで、スウィープに払って打ってもよし、ダウンブローにロフトを立てて打ってもよし、操作性のよいフェアウェイウッドだと思います。
 そして、低めのインパクト音であるところが、『Z725ドライバー』や『Z925ドライバー』にマッチすると思います。
   
4) 進化した「クイックチューンシステム」搭載
 新しい『スリクソンZフェアウェイウッド』にはドライバー同様、進化した「クイックチューンシステム(QTS)」が装備されています。
 ウエイトビスによる重心位置調整による弾道調整に加えて、シャフト先端部分に取り付けられたスリーブの挿入向きを変えることで、フェース角、リアルロフト角、ライ角などを調整できるようになったことは大きな特徴です。
 前モデルにもソールにウエイトが装着されていましたが、固定式で交換による調整はできないタイプだっただけに、大きな進化です。
 フェアウェイウッドでも、フックフェースが好みの人、オープンフェースを好む人とそれぞれおられると思いますので、自分のスイング、自分の求める弾道に対してクラブを細かく調整できるのはうれしいことだと思います。
   
5) 理想の飛びと弾道を実現する「デュアルスピードテクノロジー」
 別添のデータ表では前モデルのデータを掲載していませんが、実は今回の『スリクソンZフェアウェイウッド』は前モデルと比べて、重量が5~6g重くなったヘッドが装着されています。
 前モデルとクラブ長さ設定は変わっていませんが、ドライバー同様に、シャフトの手元側(グリップ側)に重心を移動させることで、ヘッドを重くすることができ、その結果、ヘッドスピードとボールスピードの2つの速度を上げる「デュアルスピードテクノロジー」により、飛距離アップに寄与しています。
   
6) 「Miyazaki」シャフトとの相性が抜群
 フェアウェイウッドは主に地面にあるボールを打ち、時にはターフを取りながらショットすることもあるので、しっかりしたシャフトを装着したいものです。
 新しい『スリクソンZフェアウェイウッド』はドライバー同様に高品質のツアープレミアムシャフト、「Miyazaki KENA」が標準装着されているので、ますます安心感が高まると思います。
 もちろん、ゴルファーのスイングタイプやしなりの好みによって選ぶシャフトは違いますが、どのシャフトを選んでもヘッドとの相性のよさを感じることができるでしょう。
 インターナショナル・フレックス・コードの数値を参考に、自分に合うシャフトを選べば確実に正確性は高まるはずです。
   

■松尾好員の辛口トーク

 『Z725フェアウェイウッド』はヘッドが小ぶりなので、3番で43インチ設定ではアドレスするとヘッドが小さく見えて、やや難しそうに感じられます。
 一般米国モデルでも実測長さでは3番で42.5インチくらいですので、少し短い42.75インチ設定くらいにして、よりヘッド重量を重くしたほうが、飛距離やクラブの操作性においても有効な感じがします。
 

SRIXON Z フェアウエイウッドの実測データ
  Z525 Z525 Z525 Z725 Z725 Z725
#3 15度 #5 18度 #7 20度 #3 15度 #5 18度 #7 20度
KENA BLUE 6S KENA BLUE 6S KENA BLUE 6S KENA BLUE 6S KENA BLUE 6S KENA BLUE 6S
クラブ長さ inch 43.0 42.5 42.0 43.0 42.5 42.0
クラブ重さ g 321.4 325.7 330.5 322.4 326.5 330.5
スイングウエイト   D1.5 D1.5 D2.4 D1.8 D2.4 D1.9
クラブ慣性モーメント gcm2 283万 281万 281万 283万 283万 280万
 
ヘッド重さ g 214.1 218.6 222.9 212.2 216.8 221.6
ヘッド体積 ml 189 169 160 158 151 141
リアルロフト deg 16.2 19.2 21.7 15.0 18.5 21.0
ライ角 deg 59.0 59.5 59.5 58.5 59.0 59.0
フェース角 deg HOOK 0.5 HOOK 0.5 0.0 HOOK 0.5 0.0 HOOK 0.5
フェースプログレッション mm 16.5 18.0 19.6 16.0 17.2 18.2
 
重心距離 mm 33.5 33.7 33.0 32.6 34.4 33.2
重心深度 mm 30.0 29.2 29.3 26.5 27.0 27.1
フェース高さ mm 32.3 32.8 32.7 31.8 31.2 31.7
スウィートスポット高さ mm 25.3 24.6 24.5 23.4 23.5 24.8
低重心率 % 78.3 75.0 74.9 73.6 75.3 78.2
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,978 2,733 2,598 2,605 2,554 2,335
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,353 1,207 1,158 1,032 1,014 976
ネック軸回りモーメント gcm2 4,687 4,372 4,141 4,065 4,166 3,842

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。