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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.77

『スリクソンZドライバー』を検証する


 ダンロップスポーツのプロモデルブランド、『スリクソンZ』のニューモデルが昨年の8月から発売され、すでにツアープロを含め、多くのゴルファーから支持されています。そこで、まずはドライバーから、じっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1) 3タイプのヘッドが同時に登場
 今回、『スリクソンZ』シリーズのドライバークラブは、何と1度に3タイプのヘッドが登場しました。開発陣はさぞかし大変な作業だったと思います。
 まず、ヘッドの外観の印象を言いますと、3タイプともに前モデルよりもフェースプログレションが小さくなり、球をつかまえることが1つの目的であると思われます。
 大きめのヘッドで見るからにやさしそうな『Z525』、競技ゴルファーに程よい大きさの『Z725』、そして、ヘッドスピードの速いゴルファーが強い球を打てそうな『Z925』の3モデルが誕生しています。
   
2) 魅力的な『Z525』のやさしさ
 『Z525』は3モデルのうち、ヘッドが一番大きいことで、アドレスしたときに最もやさしく感じると思います。実際に打ってみたときに、3モデルの中で最も球が上がりやすく、キャリーを伸ばしやすくなっています。
 『スリクソンZドライバー』は3モデルとも「クイックチューンシステム(QTS)」を搭載しています。これは、フェース角、ライ角、ロフト角を調節できる「QTSスリーブフィッティングシステム」と、トウ、ヒールのウエイトを替えて重心位置を変えられる「ウエイトフィッティングシステム」を併せ持ち、ゴルファーのパフォーマンスを最大限に発揮できるシステムです。
 この『Z525』において、「QTSスリーブシステム」が標準Nポジションになっていて球のつかまりが悪いと感じる方がいれば、スリーブをL側にすればリアルロフト角も増えてさらにつかまりやすく、やさしくなり、少しヘッドスピードが遅めの方でも十分使えるようになります。
 実際、ヘッドスピード40m/sくらいのシニアでスライサーの方にも試打してもらいましたが、フェース角を変えることで球がつかまった弾道が打てるようになるので驚かれていました。
 さらに「ウエイトフィッティングシステム」で、ウエイトをヒール側に11g、トウ側に3gの仕様に替えれば、強いドローボールになって飛距離を伸ばすことができるでしょう。
   
3) 魅力的な『Z725』の操作性
 『Z725』は『Z525』に比べてやや小ぶりな大きさとなっていますが、45インチのクラブ長さに対してベストマッチングの大きさだと思います。
 ヘッドが大き過ぎないので、ヘッドの操作性がよくなり、標準Nポジションでも球をつかまえやすくなっています。
 『Z725』のインパクト音は『Z525』よりも少し低くなり、しかもヘッドの操作性もよいので、ドローやフェードのコントロール、また、『Z525』よりも低めの弾道に抑えることも可能なので、競技ゴルファーとの相性がよいと思います。
   
4) 魅力的な『Z925』の低重心
 最もヘッド形状が美しいのは、一番小さなヘッドの『Z925』だと思います。そして、ヘッド体積が小さいこともあって、重心位置が低くなり、3つのモデルの中では最も低重心モデルになっています。
 従って、ヘッドスピードが48m/s以上のパワーのある方は、その低重心と操作性を生かして、球が吹き上がらない強い弾道で飛距離を伸ばすことができるでしょう。パワーのある競技ゴルファーにとって、弾道の強さの魅力からすると『Z925』が一番だと思います。
(正直、悔しいですが、私のヘッドスピードでは手強いドライバーでした……)
   
5) 進化した「クイックチューンシステム」搭載
 新しい『スリクソンZドライバー』では前モデルから装備されていた「クイックチューンシステム(QTS)」がさらに進化しました。
 『Z525』で説明をしてしまいましたが、ウエイトによる重心位置調整による弾道調整に加えて、シャフト先端部分に取り付けられたスリーブの挿入向きを変えることで、フェース角、リアルロフト角、ライ角などを調整できるようになったことは大きな特徴です。
 自分のスイング、自分の求める弾道に対してクラブを細かく調整できるのはうれしいことです。
(Z525によるチューニング実測データは別表)
   
6) 理想の飛びと弾道を実現する「デュアルスピードテクノロジー」
 別添のデータ表を見ていただけますと、新しい『スリクソンZドライバー』は前モデルに比べて、重量が5~6gも重くなったヘッドが装着されているのがわかります。
 前モデルよりもクラブ長さが1/4インチ短くなっているので、その分、ヘッド重量が重くなるのは当然なのですが、通常ドライバーでの1/4インチの長さに対応するヘッド重量は約2.5gですので、その2倍の重量がヘッドに有効的に付加されているわけです。
 つまり、クラブとして、シャフトの手元側(グリップ側)に重心を移動させることで同時にヘッドを重くでき、その結果、ボール初速を上げることに寄与しています。
 クラブ市場には、46インチを越える長尺ドライバーも多く見かけますが、多くは180g台の非常に軽いヘッドが装着されており、長尺であるにもかかわらず、軽いヘッドではボール初速が上がらない現実があります。
 『スリクソンZドライバー』は重いヘッドを速く振れることで、ヘッドスピードとボールスピードの2つのスピードアップを果たす「デュアルスピードテクノロジー」が施され、理想の飛びと弾道を手に入れるクラブとなっています。
   
7) 弾道が強く感じるインパクトサウンド
 ダンロップスポーツのクラブというと、やはり『ゼクシオドライバー』のイメージが強く、「カキーン!」という高いインパクト音が魅力と思っておられる方も多いかも知れません。
 しかし、プロモデルブランドの『スリクソンZドライバー』では、ヘッドスピードが比較的速いゴルファーを対象としているので、逆に低めのインパクト音のほうがインパクトフィーリングを感じやすく、フェース面に球が乗ってコントロールしやすいフィーリングを得やすくなっています。
 しかも、ヘッドが大きい『Z525』がやや高めのインパクト音で、小さい『Z925』がより低めのインパクト音に調整されており、対象ユーザーを考えてインパクトサウンドを作るのはやさしくないだけにさすがだと思います。
   
8) 高品質シャフト装着によりクラブの価値がアップ
 今回の『スリクソンZドライバー』には手元重心設計の「Miyazaki KENA」シャフトが標準装着されています。一層、シャフトのラインアップが豊富になりました。
 以前からダンロップスポーツのクラブにおいては、その標準装着シャフトの品質の高さに感銘を受けています。
 インターナショナル・フレックス・コードの数値を参考に、自分に合うシャフトを選べば確実に飛距離は伸びるはずです。

■松尾好員の辛口トーク

『Z725』のヘッド形状が違う
 ヘッド形状が美しいのは『Z925』、そしてその『Z925』を全体的に大きくしたのが『Z525』で、両者共に『スリクソン』らしい美しい形状をしています。
 ところが、なぜかその両者の中間の『Z725』のヘッド輪郭形状が、少し3角形的で、『Z525』と『Z925』とは違う形状をしています。誰か契約プロの好みでしょうか?理由を知りたいところです。
 

SRIXON Z ドライバ− 実測データ
  Z525 Z725 Z925 前 Z-TX 
9.5度 9.5度 9.5度 9.5度
KENA BLUE 6S KENA BLUE 6S KENA BLACK 6S BLUE 72S
クラブ長さ inch 45.0 45.0 45.0 45.25
クラブ重さ g 311.0 312.5 315.0 314.5
スイングウエイト   D1.8 D2.7 D3.0 D1.8
クラブ慣性モーメント gcm2 289万 291万 293万 290万
 
  (N位置7g-7g) (N位置7g-7g) (N位置7g-7g)  
ヘッド重さ g 199.4 200.3 201.2 194.7
ヘッド体積 ml 452 421 373 449
リアルロフト deg 10.2 10.0 10.5 10.0
ライ角 deg 58.0 58.0 58.0 58.0
フェース角 deg HOOK 0.5 HOOK 0.5 HOOK 0.5 0.0
フェースプログレッション mm 16.9 16.7 17.5 18.6
 
重心距離 mm 39.5 36.7 36.0 36.1
重心深度 mm 37.3 35.8 34.1 35.6
フェース高さ mm 55.2 53.8 54.3 54.7
スウィートスポット高さ mm 35.8 34.8 33.2 35.7
低重心率 % 64.9 64.7 61.1 65.3
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 4,085 3,860 3,419 4,157
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 2,479 2,300 2,021 2,582
ネック軸回りモーメント gcm2 6,753 6,161 5,569 6,424

Z525ドライバーのクイックチューニングシステムによる実測データ
         Z525        
9.5度
Nポジション Rポジション Lポジョション Nポジション Nポジション
トウ7g、
ヒール7g
トウ7g、
ヒール7g
トウ7g、
ヒール7g
トウ11g、
ヒール3g
トウ3g、
ヒール11g
ヘッド重さ g 199.4
ヘッド体積 ml 452
リアルロフト角 deg 10.2 9.6 11.8
ライ角 deg 58.0 59.0 58.5
フェース角 deg HOOK 0.5 OPEN 0.5 HOOK 1.5
フェースプログレッション mm 16.9 16.3 18.5
       
重心距離 mm 39.5 40.7 37.8
重心深度 mm 37.3 37.4 37.2
フェース高さ mm 55.2 55.2 55.2
スウィートスポット高さ mm 35.8 35.7 35.4
低重心率 % 64.9 64.7 64.1
       
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 4,085 4,114 4,041
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 2,479 2,481 2,475
ネック軸回りモーメント gcm2 6,753 6,907 6,589

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。