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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.76

『ゼクシオ7』アイアンを検証する


 『ゼクシオ』は2000年に初登場以来、ドライバーだけでなく、常にアイアンも大ヒットを続けてきました。それは2年に1度のモデルチェンジで着実な進化を遂げてきたからでしょう。そして7代目となった『ゼクシオ7』もドライバーだけでなくアイアンもこれまで同様に販売1位となっています。
 そんな大ヒット中の『ゼクシオ7』アイアンはすでに発売から数ヶ月経過していますので、多くの方が使用されているかと思いますが、私なりに詳しく検証してみました。(実測データは別表で、前モデルとの比較付き)

1) 球をつかまえるイメージで、素直に構えられるヘッド
 まず、基本的に『ゼクシオ7』のアイアンはフェースの大きさが大きく、アドレスしたときにフェース面がよく見えるので、ストロングロフト仕様にもかかわらず、ロフト角が付いているように見えて、とてもやさしそうに感じます。
 そして、グースネックと丸いトップラインで、球を包み込むようなイメージが出ており、球をつかまえやすそうに感じます。そのグースネック度合いも的確にフローしており、5番、6番、7番では強めのグースネックで球をつかまえやすくし、8番、9番では少しグース度合いを緩めたセミグースネックでコントロール性も考慮し、ピッチングウエッジでは小さめのグースネックで方向性が重視されており、全番手で求める性能が考慮されています。
   
2) 前モデルよりも低重心になったヘッド
 今回の『ゼクシオ7』のアイアンは、前モデルに比べてスイートスポット高さが実測平均で0.8mm低くなっています。これによって、スイープにインパクトしてもフェースの芯で球をとらえやすく、重くなったヘッドとも相まって、ボール初速が速くなるでしょう。
 0.8mmと聞けば小さく感じるかも知れませんが、完成域にある『ゼクシオ7』アイアンで、スイートスポット高さを0.8mmも低くするのは簡単なことではありません。
 特に、通常アイアンショットではスイープにスイングして、ターフを取るようなダウンブローには打たず、ソールのバンスを使わないアベレージゴルファーにとってはさらに打ちやすくなり、より高弾道で攻めることができるでしょう。
   
3) 高度な設計と製造技術で作られるヘッド
 『ゼクシオ7』アイアンの4番から7番までは、ネック部とソールのトウ側にタングステンニッケル合金でできた別のパーツが取り付けられ、外周重量配分により慣性モーメントが大きくなっています。
 これにより、ミドルからロングアイアンの難しい番手に対して、よりフェースの芯を外れたミスショットに強くなっています。
 そして、特にネック部にタングステンニッケル合金を使って製品品質を安定させるには、設計だけでなく、高度な製造技術もかかわっています。
   
4) シャフトでも球がつかまり、高弾道が打てる
 『ゼクシオ7』ドライバーのシャフトと同様に、『ゼクシオ7』の「MP700」カーボンシャフトは、中間部から手元部を軟らかくすることで、ダウンスイングでのしなりを大きくし、インパクトへ向けてヘッドスピードを上げやすくしています。シャフト先端側も前「MP600」カーボンシャフトより少し軟らかくすることによって、球を上げやすくしています。
 こうしたことから、アベレージゴルファーにとってもシャフトのしなりを感じながらスイングしやすく、ストロングロフトにもかかわらず、高い弾道を打ちやすくしています。
 また、軽量スチールシャフトも「NSプロ950」から「NSプロ920」へと軽量化され、「MP700」シャフトと同様にシャフトの中間部が軟らかく作られていますので、アイアンとして適度な重みを感じながら、強く高い弾道が打ちやすくなっています。

■松尾好員の辛口トーク

1) アプローチウエッジがとても良くなった
 以前の辛口トークの中で、アプローチウエッジを単にセットのウエッジではなく、使えるアプローチウエッジにして欲しいと希望しました。そうしたら何ということでしょう。この『ゼクシオ7』ではついに、上げても良し、転がしても良しという、オールマイティなアプローチウエッジになっているではありませんか。設計した方に感謝です。
   
2) 本当はソールにバンス角が欲しい
 上記で今回の『ゼクシオ7』では「ソールのバンスを使わないスイープスイングの方には打ちやすくなりました」と書きましたが、実は逆にダウンブローに打てる人にとってはソールの抜け感が少し悪くなっているように感じます。個人的には、本当はバンス角があるほうが飛距離も出るので、もう少しバンスが欲しいところです。ダウンブローにスイングできる方は、次に販売されるであろう『ゼクシオフォージド』アイアンに期待というところでしょう。

XXIO7 アイアン 実測データ
  #5 #7 #5 #7 前モデル#5 前モデル#7
MP700
S
MP700
R
NS920
S
NS920
R
MP600
S
950HL XXIO
R
クラブ長さ inch 38.0 37.0 38.0 37.0 38.0 37.0
クラブ重さ g 360.4 367.5 398.3 404.7 364.1 407.6
スイングウエイト   D0.0 C9.5 D2.2 D1.4 D0.0 D1.0
クラブ慣性モーメント gcm2 263万 260万 274万 269万 264万 268万
 
ヘッド重さ g 250.4 264.0 - - 249.5 262.6
リアルロフト deg 24.2 30.2 - - 23.5 30.5
ライ角 deg 60.4 61.5 - - 61.0 61.8
フェースプログレッション mm 1.4 2.2 - - 1.0 2.3
ソールバンス角 deg -1.0 0.0 - - 2.0 2.2
 
重心距離 mm 39.6 39.7 - - 39.9 40.3
重心深度 mm 4.5 3.7 - - 4.5 3.4
スウィートスポット高さ mm 19.9 20.1 - - 20.6 21.0
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,800 2,952 - - 2,770 2,943
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 605 657 - - 606 650
ネック軸回りモーメント gcm2 6,123 6,596 - - 6,290 6,734
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。