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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.75

『ゼクシオ7』フェアウェイウッドとユーティリティを検証する


 『ゼクシオ7』のフェアウェイウッドとユーティリティは、ドライバーと同様のコンセプトで開発されたシャフトと、そのシャフトに合うように考えられた重めのヘッドで、「ヘッドとボールのスピードアップテクノロジー」が取り入れられています。
 従来からシニアゴルファーの方に人気がある『ゼクシオ』のフェアウェイウッドとユーティリティですが、7代目の『ゼクシオ7』ではどのように進化しているのでしょうか。今回もじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

■『ゼクシオ7』フェアウェイウッドを検証


1) ヘッドが球をつかまえやすいイメージになった
 まず『ゼクシオ7』のフェアウェイウッドにおいて、アドレスして気づくことは、今までの『ゼクシオ』よりもフェースプログレッション(FP値)が小さくなった(いわゆるフェースの出っ歯の具合が小さくなった)ことで、球をつかまえやすいイメージが上手く出ています。
 アベレージゴルファーの中には、「フェアウェイウッドはフェースが前方に出ているので構え方や打ち方がよくわからない」と言われる方が少なくありません。前モデルと比べて平均2mmくらい小さくなったフェースプログレッションが、フェアウェイウッドの苦手意識を解消してくれると思います。
   
2) シャローフェースになって、球が上がりやすくやすくなった
 前述のFP値だけでなく、前モデルと比べて大きく変わったところがフェースの高さです。
 前モデルに比べてシャローフェースになったことで、シニアアベレージゴルファーにとってより球を拾いやすく感じられ、実際に球を上げやすくなってキャリーを伸ばしやすくなり、フェアウェイウッドがやさしく感じられることでしょう。
 アドレスしたときに見えるフェース面とロフト角の関係では、4番ウッドが最もバランスがとれていて構えやすく感じます。
   
3) ヘッド重量が重くなって、反発が良くなった
 今回の実測した『ゼクシオ7』のフェアウェイウッドは、前モデルと比べてヘッド重量が平均3g重くなっていました。それにもかかわらず、クラブの慣性モーメント値は決して大きくなっていません。
 つまり、振りやすさは変わらず(同じように振りやすいこと)、ヘッド重量が重くなっているので、ボールへのエネルギーの伝わりが大きくなり、ボール初速が上がって前モデルよりも強い球を打ちやすくなっています。
 また、フェースには最薄部1.5mmのチタンフェースが付けられており、基本性能としてヘッドの反発性能は高くなっています。
   
4) 番手が大きくなるにつれて、球の止まりにも配慮
 気づいている方は少ないかもしれませんが、『ゼクシオ7』のフェアウェイウッドは3番から7番へと番手が大きくなるにつれて、フェース面のスコアラインの本数が1本ずつ増えています。
 これは非常に細かい配慮で、3番では飛びを意識し、7番ではグリーン上にキャリーしたときの球の止まりを考慮しています。
   
5) シャフトでも球がつかまり、高弾道が打てる
 『ゼクシオ7』ドライバーの「MP700」シャフトと同様に、フェアウェイウッドの「MP700」も中間部から手元部を軟らかくすることで、ダウンスイングでしなりを大きくし、インパクトへ向けてヘッドスピードを上げやすくなっています。
 また、シャフト先端側も前「MP600」より少し軟らかくすることで。球を上げやすくなっています。

■『ゼクシオ7』ユーティリティを検証する

1) フェアウェイウッドに比べてやさしい!
 『ゼクシオ7』のユーティリティも同様ですが、一般にユーティリティの特徴として、フェアウェイウッドよりもクラブ長さが短いために、多少起伏のあるライでもミート率が良くなり、ショットのアベレージが高くなるということがあります。
 また、フェアウェイウッドに比べてフェース面のスイートスポットの高さが低いので、全体にバックスピンも少なめになるため、アゲンストの風でも球が吹き上がりにくく、同時に左右への曲がりも少なくなるのが特徴です。
 今回の『ゼクシオ7』のユーティリティは、構えたときのヘッドの投影面積が大きく、安心感があります。また、実際のショットではフェアウェイウッドに比べて低めの弾道ですが、ショットの安定感は高くなっています。
 フェアウェイウッドを苦手とされる方には、このユーティリティを上手く組み合わせると良いでしょう。
   
2) ヘッド重量が重くなって、反発が良くなった
 今回、実測した『ゼクシオ7』のユーティリティは、前モデルと比べてヘッド重量が平均2g重くなっています。このことにより、ボールへのエネルギーの伝わりが大きくなり、ボール初速が上がって前モデルよりも強い球を打ちやすくなっています。
 また、フェースは最薄部1.5mmのマレージング素材となっていて、基本性能としてヘッドの反発性能が高くなっています。インパクトサウンドも高めなので、打っていて心地良い感じがあります。
   
3) 番手が大きくなるにつれて、球の止まりにも配慮
 『ゼクシオ7』のユーティリティはフェアウェイウッド同様に、U3からU6へと番手が大きくなるにつれて、フェース面のスコアラインの本数が1本ずつ増えています。非常に細かい配慮で、U3では飛びが意識され、U5やU6ではグリーン上にキャリーしたときの球の止まりを考慮しています。
   
4) 番手の呼び方が変わった
 今回の『ゼクシオ7』からユーティリティの番手の呼び方が変わりました。
 従来のU5がU3+に、従来のU6がU3に、同じくU7がU4に、U8がU5にというように番手の呼び名が変わったので、従来使用されている『ゼクシオ』から買い替えされるときは少し注意が必要です。また、『ゼクシオ7』では新たにロフト角25度のU6が加わりましたので、この番手はヘッドスピードが遅めの方には特にお勧めです。

■松尾好員の辛口トーク
1) ユーティリティのフェースプログレッションをもう少し小さくして欲しい
 今回の『ゼクシオ7』のフェアウェイウッドの特徴の1つとしてフェースプログレッションが小さくなったことが上げられます。逆にユーティリティはヘッドの拡大に伴って、前モデルよりもややフェースプログレッションが大きくなっています。
 このことによって、私は両者の差を大きく感じてしまいました。確かに一般他社のユーティリティよりも球が上がりやすくなっていて、ヘッド速度が遅めのゴルファーの方にとっては扱いやすくなっていますが、ユーティリティではライの悪いところや難しい傾斜地などから使って球をつかまえようとするので、個人的には次の『ゼクシオ』のユーティリティはフェースプログレッションがもう少し小さくなることを期待したいです。
   
2) フェアウェイウッドのソールをユーティリティのように少し丸くして欲しい
 私の周辺では上級者でも『ゼクシオ』のフェアウェイウッドを使っている人をよく見かけます。上級者においてはフェアウェイウッドでもライが悪ければダウンブローにスイングしてターフを取ることもあるので、フェアウェイウッドのソールの抜けをより良くするために、できれば次の『ゼクシオ』では、ソール面はユーティリティのような丸みが欲しいと思います。
   
3) お勧めのセット組み
 これは「辛口トーク」ではありませんが、番手別の飛距離差を上手くつけるためにも、アベレージゴルファーの方には次のような組み合わせをお勧めしたいです。
 ドライバーは11.5度、フェアウェイウッドは4番と7番、次いでユーティリティはU5(場合によってはU6も)、そして、アイアンは5番(U6を入れれば6番から)から。そうした組み合わせが良いと思います。

XXIO7 FW&UT 実測データ
  W#3
15
W#4
16.5
W#5
18
W#7
20
UT U3
19
UT U5
23
MP700-S MP700-S MP700-R MP700-R MP700-S MP700-R
クラブ長さ inch 43.0 42.5 42.0 41.5 40.5 39.5
クラブ重さ g 303.5 307.0 308.5 311.1 334.7 337.2
スイングウエイト   D1.0 D1.0 D0.0 D0.3 D1.6 D0.3
クラブ慣性モーメント gcm2 278万 276万 273万 272万 274万 267万
 
ヘッド重さ g 208.0 210.7 215.0 220.5 228.3 238.3
ヘッド体積 ml 179 165 156 139 113 112
リアルロフト deg 15.0 17.0 18.7 20.0 19.5 23.5
ライ角 deg 58.5 58.5 59.5 59.7 59.8 61.0
フェース角 deg HOOK 1.5 HOOK 1.5 HOOK 1.3 HOOK 1.3 HOOK 0.5 HOOK 1.0
フェースプログレッション mm 15.4 15.3 15.7 16.7 17.9 19.8
 
重心距離 mm 35.1 34.3 36.6 35.7 33.7 35.4
重心深度 mm 30.4 32.2 30.1 31.6 24.1 24.5
フェース高さ mm 32.4 30.2 29.6 28.9 30.6 31.0
スウィートスポット高さ mm 23.3 23.4 22.8 22.4 21.2 22.2
低重心率 % 71.9 77.5 77.0 77.5 69.3 71.6
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,727 2,624 2,562 2,431 2,365 2,353
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,301 1,212 1,110 1,084 793 801
ネック軸回りモーメント gcm2 4,884 4,755 4,846 4,638 4,114 4,371
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。