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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.4 『ゼクシオ』ドライバーの選び方
その2「ツアーモデル」「ツアーモデルライト」編
 
 前回は『ゼクシオ』の「レギュラーモデル」を分析し、このクラブの特徴とどういったゴルファーにマッチするのかを、個人的にお話ししました。今回は「ツアーモデル」と「ツアーモデルライト」について、ヘッドを実測し、実際に打ってみたことから、これらのクラブがどんなゴルファーに向いているのかを見てみたいと思います。

ゼクシオツアーモデル

ゼクシオツアーモデルライト
 まず「ツアーモデル」から検証していきましょう。このクラブは、まさしく競技ゴルファー向けに設定されたモデルであるといえます。パワーのあるアマチュアが何とか使えるかな、と思える9度のSシャフト仕様を実測してみますと、クラブ長さは45.25インチで、スイングウェイトはD2.2、クラブ重さが332gと非常に重くなっています。
 そしてクラブ慣性モーメントに関しては、295万gcm2と大きく、ヘッド速度が48m/sくらいの方でないと使いこなせない数値が出ています。
 ちなみに、最近のツアープロのクラブ重さは年々軽くなってきています。
 例えば、加瀬秀樹プロや細川和彦プロ、そして宮瀬博文プロは340g、星野英正プロは319g、そして片山晋呉プロは311gとなっています。ちなみに思いクラブを使用してきた尾崎将司プロも340gまで下がってきました。
 したがって『ゼクシオ』の「ツアーモデル」は、星野プロや片山プロのクラブよりも重く、他のツアープロのクラブともほぼ同様の重さであるというわけです。重さだけでなく、その仕様においてもツアープロに近いものであるといえるでしょう。特に8度のモデルはそのままでツアープロ用と言えると思います。
 ただ、この「ツアーモデル」は、シャフトの太さが細いために、グリップが細くなっています。そこでこの「ツアーモデル」を使うのであれば、より太いグリップに交換することが多くなるのではと思います。できればはじめから「レギュラーモデル」と同じやや太いグリップを装着するべきではなかったかと感じています。

 次に「ツアーモデルライト」です。『ゼクシオ』シリーズとしては少し遅れて、2000年秋に登場したのがこの「ツアーモデルライト」です。
 さすがに「ツアーモデル」ではヘビーだったのでしょう。このモデルの登場で助けられた方も多いと思います。
 ではこのモデルの10度のSシャフト仕様を具体的に見て行きましょう。クラブ長さは45.5インチ、スイングウェイトはD0.5、クラブ重さが313gとなっています。
 やさしさの尺度となりますクラブ慣性モーメントに関しては、この「ツアーモデルライト」は291万gcm2となっていて、「ツアーモデル」に比べて明らかに振りやすくなっています。
 私が今回試打した3つのモデルの中では、この「ツアーモデルライト」が最も球が強く、飛距離も最も出ていました。恐らくドライバーで230ヤードを飛ばせる方でしたら、レギュラーモデルよりもこの「ツアーモデルライト」の方がよいのではないかと思いました。
 ただ、この「ツアーモデルライト」のシャフトは太く作られており、それにしたがってグリップも非常に太くなっています。「ツアーモデル」のグリップが細いといっても、このグリップよりもかなり太いというのは疑問に感じます。
 後から発売されたモデルという理由でこうなったのかも知れませんが、できればこのモデルだけが太くならないようにして欲しかったとも思います。
 そこで、次の『ニューゼクシオ』の時は、ぜひとも最初から3モデルとも同時に発売して欲しいと思います。

 最後に前回でも述べましたが、これだけのバリエーションがありますと、確かに自分に適したものを選びやすくはなっています。しかし、自分のスイングや弾道に合ったものを選ばなければ意味がありません。皆さんに合ったより良いものを見つけるためにも、ぜひクラブの機能を勉強するようにして下さい。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。