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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.12 『NEWゼクシオ・ユーティリティ』を検証する
 
 『ゼクシオ』が、初代モデルから『NEWゼクシオ』にモデルチェンジするにあたり、ドライバーとフェアウェイウッドは高反発フェースとなり、飛距離がアップしました。アイアンは低・深重心化が進み、さらに打ちやすくなりました。それぞれしっかりと研究開発され、進化したことが大ヒットにつながっているのだと思います。こうした『NEWゼクシオ』ですが、今回はこの秋に新発売された『NEWゼクシオ・ユーティリティ』を分析してみました。結論としては「ドライバーに次ぐ進化を遂げている」と言えるのではないでしょうか。

1. 狙い通りに真直ぐ飛ぶようになった
 『初代ゼクシオ・ユーティリティ』はフックフェースで、ライ角度はアップライでした。このために、パー3でティアップして打つ場合などでは、かなり引っ掛かりやすく、フェースを開いてアドレスして打っていた方も多かったのではないでしょうか。しかし『NEWゼクシオ・ユーティリティ』では見事に改善され、ストレートフェースになりました。見た目だけでなく、実際にクラブヘッドのスペックを実測しましたが、ほぼストレートフェースになっています。さらに試打をしてみたところ、自然に構えられ、打球も真直ぐ飛ぶようになりました。(別表参照)
 ヘッド速度を40m/sくらいで試打したところ、『U5』ではキャリーが200ヤードでランが10ヤード、『U6』ではキャリーが185ヤードでランが5ヤード、そして『U7』ではキャリーが170ヤードで、ランは2ヤードという結果でした。
2. シャローフェース&低重心でますます打ちやすい
 本来、この種のユーティリティークラブは、フェアウェイウッドをうまく打てない方が、やや低い弾道でロングアイアン並みの飛距離を出すためのクラブです。従って、180ヤード前後の距離を狙うことが多くなります。
 実際のコースでは、ボールは低い所に止まろうとしますので、沈みやすく、なかなか良いライにならないことが多いものです。こんな時、低重心設計の『NEWゼクシオ・ユーティリティ』なら、ハーフトップ気味に当たっても強い弾道で飛んで行きますし、うまく当たれば予想以上に飛距離が出ます。フェースの高さを低いシャローフェースにしたことで、さらなる低重心化が達成されているのです。
3. 軟らかいシャフトで振りやすい
 『ゼクシオ』は、軟らかいシャフトで振りやすいことが共通の特徴ですが、これはこの『NEWゼクシオ・ユーティリティ』にも受け継がれています。ドライバーに比べて、フェアウェイウッドやユーティリティではシャフトの硬いものが多い中、『NEWゼクシオ・ユーティリティ』のシャフトはドライバーと同様なので、違和感なくスイングできます。
4. 価格が安くなったのもうれしい
 『NEWゼクシオ・ユーティリティ』の価格ですが、『初代ユーティリティ』よりもパフォーマンスが上がって、1本につき7,000円も安くなったのは評価できます(いや、『初代ユーティリティ』が高すぎたのかも!?)。
5. 松尾好員の辛口コメント
 最後にいつもの辛口コメントを言いたいところですが、今回は残念ながら(!?)悪いところが見つかりません。「よくできました」の花まるマークです(笑)。
 強いてダンロップさんにリクエストするならば、上級者への配慮です。このヘッドなら上級者も使えます。しかし、標準モデルのシャフトフレックスでは軟らかすぎます。そこでリシャフトして使いたいところですが、ヘッドのシャフト穴径が太すぎて、市販に多い8.5mmチップのシャフトが付けられません。残念ですね。やはり、ツアーモデルとしてのユーティリティーが欲しいところです。軽量スチールシャフトを付けても良いクラブになりそうですよ。
『NEWゼクシオユーティリティ』実測データ
 
  U5 S-flex U6 S-flex U7 S-flex
クラブ長さ(inch) 41.4 40.9 40.4
クラブ重さ(g) 329.2 326.1 338.7
スイングウエイト D1.0 D0.4 D1.3
クラブ慣性モーメント(gcm2) 275万 272万 273万
       
ヘッド重さ(g) 215.4 223.4 226.8
ヘッド体積(ml) 103 104 101
リアルロフト(deg) 16.7 19.5 23.0
ライ角(deg) 58.5 59.5 59.5
フェース角(deg) フック 0.3 0.0 フック 0.2
フェースプログレッション(mm) 17.6 18.0 20.3
       
重心距離(mm) 30.3 30.9 31.5
重心深度(mm) 25.3 26.3 27.0
重心角(deg) 14.0 14.5 13.2
フェース高さ(mm) 30.7 31.1 30.6
スウィートスポット高さ(mm) 21.3 22.0 23.0
有効打点距離(mm) 9.4 9.1 7.6
       
ヘッド左右慣性モーメント(gcm2) 2176 2252 2182
ヘッド上下慣性モーメント(gcm2) 831 880 890
ネック軸回りモーメント(gcm2) 3585 3859 3689
※フェース角は、計測方法がいくつかあり、同じヘッドでも異なる数値が出ることがあります。ダンロップの計測方法では、フック側に強めに値が出ます。
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。