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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.14 『ゼクシオNEWプライム』を検証する ~ウッド編~
 
 『NEWゼクシオ』は2002年のベストセラーモデルであり、ゴルフダイジェスト誌による同年の「クラブ・オブ・ザ・イヤー」にも選定されました。そして、今回新たに「ゼクシオシリーズ」の最高級モデルとして『ゼクシオNEWプライム』が登場しました。
 『ゼクシオNEWプライム』は、『NEWゼクシオ』よりも、ヘッドは大きく、クラブの総重量は軽くなり、価格もアップしていますが、果たしてその性能はどのようなものでしょうか?今回はフェアウェイウッドとあわせてじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

■『ゼクシオNEWプライム』ドライバー
1. 軽くて振りやすい
 『ゼクシオNEWプライム』のターゲットは、明らかにシニアクラスのゴルファーですから、まず振りやすいクラブが求められます。そこで、この『NEWプライム』は、レギュラーモデルの『NEWゼクシオ』よりも総重量はわずか2gくらいしか軽くなっていませんが、クラブ長さを0.5インチ短くすることと、スイングウェイトをC8にすることで、ずいぶんと振りやすいクラブに仕上げています。
 具体的にクラブ全体の慣性モーメント値を見ますと、レギュラーモデルの『NEWゼクシオ』は285万gcm2で、『NEWプライム』は276万gcm2しかありません。ちなみにアイアンクラブの1番手の慣性モーメントの差は約2万gcm2ですので、アイアン4番手分くらい『NEWプライム』のほうが振りやすくなっているといえるのです。
 私の長年の研究から考えますと、この『NEWプライム』の276万gcm2という数値は、ヘッド速度が38m/sくらいの方にとって、ちょうど振りやすいと感じられるものです。
2. ヘッドが大きく安心感がある
 『初代プライム』の体積が330cm3、レギュラーモデルの『NEWゼクシオ』が350cm3であることを考えますと、今回の『NEWプライム』の420cm3は一般の予想を超え、かなり大きく設定されたと言えます。
 しかも、クラブ長さは44.5インチと短かめになっています(4月から45.5インチも追加販売されたとのことですが、メインは44.5インチと聞いています)ので、構えた時の安心感が非常に大きくなりました。
3. 反発の高いヘッド
 ダンロップさんは、基本的に反発については非常に良く研究しているメーカーです。したがって、そのフラッグシップモデルが低反発であるはずがありません。
 レギュラーモデルの『NEWゼクシオ』はフェースをカップ型にして高反発を得ていますが、『NEWプライム』は、大同特殊鋼のDAT55Gの板材がフェース面に使われています。この材料は強度が比較的高く薄肉フェースに向いていますので、同時に反発性能も良くなります。
 また、インパクト音は高めですが、ヘッドスピードの速い方が使うわけではないので特に問題はなく、かえって心地良い打球音になっています。
4. しっかりしたシャフト
 『NEWプライム』のシャフトは、ターゲットを考えると相当軟らかく頼りないものかと思っていましたが、全く違っていました。ドライバーではSRとRを試打しましたが、共にしっかりしており、SRはヘッド速度が43~44m/sくらいの方でも使えそうなくらいです。
 ですから本来の対象ユーザー(ヘッド速度が36~39m/s)ではRシャフトでちょうど良く、SRでは硬く感じられるかもしれません。

■『ゼクシオNEWプライム』フェアウェイウッド
1. シャローフェースで低重心のヘッド
 『NEWプライム』のフェアウェイウッドは、ドライバー同様チタンヘッドで作られていますので、ヘッドの大きさからしますとヘッドの重量配分にかなり余裕があるはずです。そこでフェース高さの低い、いわゆるシャローフェース設計にすることができ、文字通りフェアウェイから打つためのフェアウェイウッドに仕上げられています。
 特にスウィートスポット高さは非常に低く設定(#3で20.4mm、#5で20.7mm)されていて、ベアグラウンドのような悪いライからでもナイスショットが可能になっています。
2. ロフトバリエーションが豊富
 『NEWプライム』のフェアウェイウッドには#4が加わっており、通常の#3、5、7、9と合わせて5番手のラインアップになっています。ヘッド速度が35~39m/sくらいの方では15度のロフトの#3ウッドを使いこなすのは難しいため、#4は重宝しそうです。
 

■松尾好員の辛口トーク
『ゼクシオNEWプライム』ドライバー
 ヘッドの形状、リアルロフト角の設定、重心高さ、外観仕上げなどは申し分ありません。
 ただ、シニアクラスを対象とすることからつかまりを重視したいはずのヘッドなのに、ドライバーはライ角度がフラット気味なのと、重心距離が長めなため、ちょっと球のつかまりに物足りなさを感じます。
 また、レギュラーモデルの『NEWゼクシオ』のシャフト(MP200)から見ても、シャフトがちょっとしっかりし過ぎている感じもします。
『ゼクシオNEWプライム』フェアウェイウッド
 私が個人的に使うのであればこの低重心さに興味がありますが、ヘッド速度が40m/s未満の方に使っていただくのであれば、ちょっと重心が低すぎるような気がします。特に#3はフェアウェイからではスピンが少なく、ボールが上がり切らないのではないかと心配しますし、43インチ設定が少し長く感じます。ただ、救いなのは前述しましたように#4が備わっていることです。
 ディスタンス系ボール(ゼクシオやハイブリッド)を使われている皆さんへのお勧めとして、セッティングは#4、#7、#9が良いのではないでしょうか。おそらくフェアウェイからは#3よりも#4の方が球が上がってキャリーが出ると思います。

次回は、このたび新しく登場した『ゼクシオNEWプライム』のアイアンを検証します。

『ゼクシオNEWプライム』ウッドの実測データ
 
  #1
10.5度
SR
#1
11.5度
R
#3
15度
R
#5
18度
R
クラブ長さ(inch) 44.6 44.5 43.1 42.1
クラブ重さ(g) 285.5 284.9 288.0 296.2
スイングウエイト C8.3 C7.8 C8.2 C8.2
クラブ慣性モーメント(gcm2) 276万 276万 272万 269万
ヘッド体積(ml) 416 421 162 138
ライ角(deg) 57.0 56.5 57.5 59.0
フェース角(deg) フック 1.0 フック 1.8 フック 3.0 フック 1.0
フェースプログレッション(mm) 18.2 21.3 19.8 20.0
         
重心距離(mm) 38.6 37.7 34.2 35.2
重心深度(mm) 34.7 35.2 33.8 32.6
重心角(deg) 21.8 20.8 23.5 20.7
フェース高さ(mm) 56.6 57.0 31.1 28.8
スウィートスポット高さ(mm) 35.7 36.5 20.4 20.7
有効打点距離(mm) 20.9 20.5 10.7 8.1
         
ヘッド左右慣性モーメント(gcm2) 3,895 3,928 2,130 2,023
ヘッド上下慣性モーメント(gcm2) 2,265 2,286 1,123 1,005
ネック軸回りモーメント(gcm2) 6,827 6,431 4,207 4,167
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。