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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.15 『ゼクシオNEWプライム』を検証する ~アイアン編~
 
 ドライバーと並んで、アイアンもまた2002年のベストセラーに輝いた『NEWゼクシオ』。今もなお多くのゴルファーに愛されています。そして今回新たに、シリーズの最高級モデルとして『ゼクシオNEWプライム』のアイアンが登場しました。ドライバーとは違いヘッドは小さくなっており、シャフトを短くすることでとても振りやすくなっています。美しい外観仕上げで高級感がありますが、果たしてその性能はどのようなものでしょうか?(実測データは別表)

1. 軽くて振りやすい
 『ゼクシオNEWプライム』はドライバー同様、アイアンもターゲットゴルファーは明らかにシニアクラスの方ですから、まずは振りやすいということが求められます。このアイアンはレギュラーモデルの『ゼクシオ』とほぼ同じクラブ重さですが、クラブ長さを0.5インチ短くすることと、スイングウェイトをC8設定にすることで振りやすくしています。
 具体的にクラブ全体の慣性モーメント値を見ますと、現レギュラーモデルの『ゼクシオ』が262万gcm2であるのに対し、『NEWプライム』は259万gcm2しかありません。ちなみにアイアンクラブの1番手差は約2万gcm2ですので、『NEWプライム』は、アイアン1.5番手くらいの振りやすさが向上されているのです。
 つまり5番アイアンを7番アイアン感覚で振れるということなのです。
2. シャフトが軟らかくてラク
 レギュラーモデルの『ゼクシオ』のシャフトも軟らかく振りやすいですが、この『NEWプライム』はさらに軟らかくなっており、ドライバーでのヘッド速度が35m/s前後の方(ドライバーの飛距離で170から180ヤードくらいの方)でもシャフトのしなりを感じることができるでしょう。
3. 小振りで操作性の良いヘッド
 レギュラーモデルの『ゼクシオ』と比べますと、『NEWプライム』は約2mm、フェース長さが短くなっており、明らかにヘッドが小さく設計されています。したがって重心距離が1.4mm短く、ヘッドの操作性を表すネック軸回りの慣性モーメント値が小さくなり、ヘッドの返りやすさや操作性が向上しています。また、ライ角度もレギュラーモデルよりもアップライになりましたので、球のつかまりが良くなっています。
4. 飛びにこだわるロフト角設定
 5番アイアンで24度、7番アイアンで30度と、『NEWプライム』は超ストロングロフト設定ですので、最大の飛距離が得られやすくなっています。またインパクト音も高く、爽快感があります。

■松尾好員の辛口トーク
1. ウッドとのシャフトフレックスのマッチング
 『NEWプライム』のドライバーとフェアウェイウッドもあわせて試打した結果からの印象ですが、このアイアンのシャフトはウッドのシャフトに比べて比べて柔らか過ぎると思います。そこで、勝手ながら私のおすすめセッティングは、ドライバーがRならば、アイアンはSRにというように、アイアンを1フレックス硬めにされると良いと思います。
2. 小さく見えすぎるヘッド
 『NEWプライム』のアイアンは、フェース長さを少し短く、フェース高さを高めに設計していますので、上級者向けモデルのような印象を受けます。レギュラーモデルの出来が良いのでついつい比較してしまいますが、『NEWプライム』が構えた感じ難しそうに見えるのはちょっと惜しい気がします。
3. ストロングロフトすぎ?
この『NEWプライム』アイアンを、ヘッド速度の遅いグランドシニアの方に何人か試打してもらったところ、24度の5番アイアンでは十分に球が上がりませんでした。ヘッド速度が35から38m/sくらいの方ですと、27度の6番アイアンからのセットで十分だと思います。その分、9番ウッドを入れてはいかがでしょうか。

次回は、4代目をむかえたHI-BRIDシリーズの新製品『CF1』を検証します。

『ゼクシオNEWプライム』アイアンの実測データ
 
  NEWプライム
5番アイアン
(SR)
NEWプライム
7番アイアン
(R)
ゼクシオ
レギュラーモデル
5番アイアン
(R)
クラブ長さ(inch) 37.5 36.5 38.0
クラブ重さ(g) 355.6 362.1 355.5
スイングウエイト C8.5 C8.5 C9.5
クラブ慣性モーメント(gcm2) 259万 254万 262万
       
ヘッド重さ(g) 254.9 267.8 249.7
リアルロフト(deg) 24.0 30.0 25.0
ライ角(deg) 61.2 61.8 59.4
フェースプログレッション(mm) 1.4 1.8 1.4
       
重心距離(mm) 38.4 38.1 39.8
重心深度(mm) 5.6 5.0 5.2
重心角(deg) 16.2 17.7 13.2
スウィートスポット高さ(mm) 21.6 20.8 20.6
       
ヘッド左右慣性モーメント
(gcm2)
2,491 2,553 2,692
ヘッド上下慣性モーメント
(gcm2)
668 690 628
ネック軸回りモーメント
(gcm2)
6,193 6,430 6,482
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。