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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.16 『ハイブリッドCF1』を検証する ~ウッド編~
 
 ダンロップの『ハイブリッド』といえば、広くアベレージゴルファーのためのブランドで、1997年に誕生した『初代ハイブリッド』に始まり、1999年の『オートフォーカス』、2001年の『デジタルオートフォーカス』へと順次進化してきました。そして、今年新たに『CF1』と言うサブネームのついた4代目『ハイブリッド』が登場しました。製造技術の進歩とともに予想通りヘッドは大きくなってきていますが、果たしてその性能はどのようなものでしょうか?今回はフェアウェイウッドとあわせてまずウッドについて、じっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

■『ハイブリッドCF1』ドライバー
 『ハイブリッド』のターゲットゴルファーは、ビジネスマンで例えると次のような方々ではないでしょうか?
 たとえば、社会人になってゴルフをしてみる気になった若いゴルファー。こうした人はあまり安いもので妥協はしたくない。かといって高価なものは必要ないというゴルファーでしょう。また、新しいクラブが欲しい中間管理職の方々。ゴルフは2~3ヶ月に1度くらいなので立派なものは必要ない。小遣いは余裕がないけど、やはり新しいクラブが欲しいといったゴルファーです。
 いずれにしても、いわゆるコストパフォーマンスを一番に求められているクラブが、この『ハイブリッド』だと私は思っています。
1. ようやく落ち着いたヘッド形状
 ではクラブを見てみましょう。まずクラブで最初に見るのはヘッド、つまり「顔」です。『ハイブリッド』のドライバーは、初代から先代の『デジタルオートフォーカス』まで、一種独特の形状や雰囲気を持っていました。良くいえば個性が有るといえるのでしょうが・・・。でも、今回の『CF1』はオーソドックスにうまく改善され、プロや上級者でも構えられるヘッドになり、誰にでも受け入れられやすい形に変わっています。これならば店頭で見て、欲しくなる方も多いことでしょう。
2. 適度な重みで振りやすい
 ヘッドの形状が良ければ、次のポイントは振りやすさです。これは軽ければ良いということでは決してありません。上述しましたように、比較的パワーのある方が中心的なターゲットとなりますので、ヘッド速度は41~43m/sくらいではないかと見ています。そうしますと、振りやすさの指標となるクラブ全体の慣性モーメントが284万~286万gcm2あたりだと、ヘッド速度とマッチしやすくなるのです。実際、データを見ますとSシャフトで285万gcm2というクラブ慣性モーメントに仕上がっており、しっかり振りたい方にぴったりです。
3. 加速するシャフト
 最近は、とにかく軟らかいシャフトをメーカー各社は好んでつける傾向にあります。そのため、楽にスイングしたいという方にはシャフトがしなってやさしいのですが、ある程度しっかり振りたいという方には単に軟らかいだけでは不向きです。今回の『CF1』に装着されている「HB200カーボンシャフト」は、グリップ寄りの剛性(硬さと考えても結構です)を下げ、ダウンスイングの初期にシャフトがたわんで ヘッドが加速しやすくなっています。また、シャフトの先側(ヘッド寄り)がしっかりしており、叩ける安心感もあります。ドライバーではSとRを試打しましたが、Sの許容範囲が広く、ヘッド速度が40~44m/sくらいの方でも使えると感じました。
4. 価格が安い
 以上のような顔や機能を持っていて定価が\45,000というのは、本当に安いと思います。これまでの3代の『ハイブリッド』のどれよりもコストパフォーマンスがあり、「メーカーとして良くがんばった」とハナマルをあげられる出来といえるでしょう(他のクラブが高く感じてしまうほどです)。

■『ハイブリッドCF1』フェアウェイウッド
1. オーソドックスなつくりのフェアウェイウッド
 フェアウェイウッドはステンレス(本体)とマレージング鋼(フェース)でつくられています。以前にもお話をさせていただいたことがありますが、フェアウェイウッドはステンレス製で十分です。そして『CF1』は適度なフェース高さでシャローフェース過ぎないので、ティーショットでも安心ですし、フェアウェイからも全く問題ありません。重心が少し高めですが、このほうがスピンが掛かりやすくてグリーンに止められるので、かえって使い勝手の良いフェアウェイウッドといえるでしょう。
2. インパクト音が心地よい
 フェース部にマレージング鋼を用いて外縁薄肉構造を採っているので、インパクト音が高めで心地よく、爽快感があります。

■松尾好員の辛口トーク
『ハイブリッドCF1』ドライバー&フェアウェイウッドともに
 『ハイブリッド』のようなコストパフォーマンスクラブこそ、安心感のある仕上がりとメーカーへの信頼感が求められると思いますので、今回のモデルチェンジにはまさに「太鼓判」を押します。
 ただ、『CF1』という記号のようなサブネーム(他社も多いですが)は個人的に好きではないですね。これだけ真面目にモデルチェンジさせたならば、『ゼクシオ』同様に『NEWハイブリッド』と正攻法で押し進めて欲しかったです(性能に関係ない話ですが…)。

次回は、『ハイブリッドCF1』のアイアンを検証します。

ハイブリッドCF1ウッドの実測データ
 
  #1 10度 S #1 11度 R #3 15度 R #5 19度 R
クラブ長さ(inch) 44.5 44.5 43.0 42.0
クラブ重さ(g) 301.4 296.1 303.9 310.7
スイングウエイト D0.7 D0.0 D0.0 D0.0
クラブ慣性モーメント(gcm2) 285万 282万 278万 274万
ヘッド体積(ml) 360 358 167 146
ライ角(deg) 56.5 57.0 57.0 58.2
フェース角(deg) フック 1.0 フック 2.0 フック 1.5 フック 1.0
フェースプログレッション(mm) 16.5 17.5 18.7 20.1
         
重心距離(mm) 36.7 37.9 34.4 35.8
重心深度(mm) 33.7 34.0 30.0 29.7
重心角(deg) 23.1 23.3 19.0 17.3
フェース高さ(mm) 49.4 50.0 33.1 32.1
スウィートスポット高さ(mm) 31.6 32.5 24.9 25.8
有効打点距離(mm) 17.8 17.5 8.2 6.3
         
ヘッド左右慣性モーメント
(gcm2)
3,544 3,464 2,803 2,682
ヘッド上下慣性モーメント
(gcm2)
2,026 2,001 1,310 1,240
ネック軸回りモーメント
(gcm2)
6,359 6,434 4,673 4,611
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。