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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.17 『ハイブリッドCF1』を検証する ~アイアン編~
 
 ダンロップの『ハイブリッドアイアン』も1996年の『初代ハイブリッド』に始まり、1999年の『オートフォーカス』、2001年の『デジタルオートフォーカス』へと順次進化し、今年新たに『CF1』と言う名前のついた4代目『ハイブリッド』が登場しました。4世代を通して一貫しているのがチタンフェース構造ですが、果たして、最新の『CF1』の性能はどのようなものでしょうか。(実測データは別表)

1. 構えやすいヘッド形状
 先代の『ハイブリッドデジタルオートフォーカス』も構えやすかったのですが、この『CF1』も大型ヘッドならではの抜群の構えやすさをもっています。ウッドと同様に安心感があります。これが一番大切なことだと思います。また仕上げも綺麗で良いですね。
2. バランスの良い重心位置
 重心位置は非常に重要な要素ですが、1つの項目だけが突出していてもだめなんです。距離、深度、高さがバランス良く設計されていなければいけません。今回の『CF1』は特に低重心ではありませんが、21.1mmというオーソドックスなスウィートスポット高さですので、ティーショットでもフェアウェイからでも、弾道や飛距離に安定感をもたらすでしょう。そして、重心距離は先代『デジタルオートフォーカス』よりも短くなり、操作性が良くなりました。重心深度も5.0mmを実現しています。
3. 適度な重みで振りやすい
 アイアンでは、特に総重量には注意しなくてはいけません。アイアンに求められるのは第一に「安定した飛距離を得ること」だと思いますので、スイングするには適度な重みがある方がタイミングを崩さずに済むのです。先代『デジタルオートフォーカス』よりもわずかですが、重めにしたのは評価できます。
4. しっかりしたシャフト
 アイアンの場合、ドライバーほどには振り回しません。方向性を重視したことで、今回のシャフト「HB200」では手元部分の軟らかさよりも、ヘッド側のしっかり感をより強く感じます。また、アベレージゴルファーの方々のミスの多くはトゥ寄りのトップショットですから、インパクトで当たり負けてフェースが開きやすくなります。しかし、ねじり剛性の高いこの「HB200」シャフトならば、当たり負けの違和感を緩和してくれます。

松尾好員の辛口トーク
 実際に実打して本当に不思議だったのですが、なぜかほとんどフェースの真ん中(上下には外れますが、トゥ-ヒール方向では常に真ん中)に当たるのです(私の腕が良いからではありませんよ。笑)。
 これは明らかに、ヘッドとシャフトのマッチングが良いことの証明です。仕事柄、いろいろなメーカーのアイアンをたくさん試打しますが、これほどフェースの真ん中に当たりやすいものには出会ったことがありません。このように優れた性能を持っていて、なおかつ価格が1本\15,000ですので、ウッド同様、このアイアンも「太鼓判」です。
 しかし、しっかりスイングがしたいターゲットユーザーにとっては、まだ総重量が軽すぎます。できれば軽量スチールシャフト仕様もあわせてラインナップして、価格を1本\12,000程度で出していただけると最高ですね。それだと親が買ったものを将来、子供(例えば中学生くらい)にも使わせることもできます。2世代で愛用されて、クラブも本望なことだと思います。メーカーとしては痛し痒しなところでしょうけれど(笑)。

ハイブリッドCF1アイアン実測値
 
  CF1
5番アイアン(S)
CF1
7番アイアン(R)
先代
(デジタル
オートフォーカス)
5番アイアン(S)
クラブ長さ(inch) 38.0 37.1 38.1
クラブ重さ(g) 376.7 379.7 372.3
スイングウエイト D0.2 C9.7 C9.8
クラブ慣性モーメント
(gcm2)
268万 263万 267万
       
ヘッド重さ(g) 253.1 266.7 253.4
リアルロフト(deg) 25.0 31.2 25.5
ライ角(deg) 60.5 60.6 60.2
フェースプログレッション
(mm)
2.2 2.8 2.1
       
重心距離(mm) 39.2 37.6 40.6
重心深度(mm) 5.0 4.3 4.6
重心角(deg) 14.3 15.9 12.7
スウィートスポット高さ
(mm)
21.1 21.1 20.5
       
ヘッド左右慣性モーメント
(gcm2)
2,806 2,879 2,803
ヘッド上下慣性モーメント
(gcm2)
637 702 609
ネック軸回りモーメント
(gcm2)
6,410 6,419 ---
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。