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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.20 『スリクソンUR-X』を検証する
 
 ダンロップ(SRIスポーツ)さんは長年に渡って世界のトッププロにボールを供給しており、今日に至るまでに数えきれないほどのツアー勝利に貢献しています。ある年には、4大メジャーを全て勝利したこともあります。そして、現在でも片山晋呉、中嶋常幸、青木功、宮瀬博文、星野英正、細川和彦、トム・レーマン、ファジー・ゼラー、トーマス・ビヨーン、カリー・ウェブ、ローラ・デービーズらに愛用されています。
 また、兵庫県に世界でも1、2を争う規模のテストフィールドを持ち、毎日のようにボールやクラブのテストが行われています。関西でトーナメントが開催される時やシーズンオフには契約プロがテストに訪れますので、ツアープロのスイング、ヘッド速度、スピン量など、ボールを開発するための多くのデータが蓄積されています。
 さて、皆さんは、5月の日本プロゴルフ選手権で優勝した片山晋呉プロのプレーぶりを覚えておられるでしょうか? ぶっちぎって飛んでいたドライバーショットと、スピンの効いたアプローチ。簡単に言えば、あれこそ「スリクソン」のニューボール『UR-X』の特徴なのです。今回はこのコラムでは初めてボールについて検証してみます。

1. ドライバーで飛ぶ
 前モデルの『PRO UR』が飛ばないというわけではなかったのですが、『UR-X』の方がさらに飛ぶように作られています。ボールの中心部分を構成するコアと呼ばれるものが大きくなり、反発性能が上がりましたので、ボール初速が速くなっています。さらに、ドライバーでのバックスピン量を抑えた設計ですので、アゲンストの風に強くなっています。アゲンストの時に飛ぶかどうかはプレーの組み立ての上で非常に大事なポイントです。その意味でも、優れたボールといえます。
 
2. アプローチではスピンで止まりやすくなった
 『PRO UR』では時々スピンがほどける感じがありましたが、この『UR-X』では全くそれがなく、やや低めに飛び出してスピンでギュっと止まるようになりました。したがって、30~50ヤードくらいのアプローチでも、ピン近くに低めの弾道で落としてもすぐに止まってくれるようになり、アプローチが楽になった気がします。
 
3. パターでの打感が良い
 最近のパターは、フェースにインサートが施されたタイプが主流です。『PRO UR』ではやや高めのインパクト音がしていましたが、この『UR-X』になって低めの音になり、速いグリーンでも非常にタッチが出しやすくなりました。インパクトの音が高いと、ゴルファー心理としてインパクトが緩んでパットがショートしがちになります。穏やかな低めの音のほうが、デリケートなタッチが要求されるパットでもしっかりヒットできます。
 
構造図 高反発ポリアミドブレンド ウレタンエラストマーカバー 大小4種410ディンプル ここがダンロップ独自! ウレタンに高反発素材ポリアミドをブレンド 高反発・高弾性ラバーミッド ここがダンロップ独自! 堅い樹脂でなくゴムで高反発化を実現 高反発ソフトE,G,Gコア ここがダンロップ独自! ミッドを含めたマルチE.G.Gコアを大容量化 E.G.GはEnergy Growing Grandlentの略。

■松尾好員の辛口トーク
『UR-X』は飛距離・アプローチ性能ともに優れたボールですが、私がダンロップさんの技術力に期待しているのは、アプローチ性能を維持しながらも、特にドライバーでもっと飛ぶボールなんです。ダンロップさんなら実現できると思います。ぜひ近い将来には、再び世界をリードするようなボールを開発して欲しいものです。いや、もうすでに開発されているかもしれませんね(笑)。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。