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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.21 『ニューゼクシオ』レギュラーモデルドライバーを検証する
 
 最初にゼクシオが登場したのは4年前の2000年です。
 初代、2代目はアベレージゴルファーから上級者まで幅広い支持を得て、ベストセラーモデルになりました。そして今回は3代目となり、あらゆる意味で真価を問われることになりそうです。確かに開発の定石通りヘッドは大きくなっていますが、果たしてその進化と性能はどのようなものでしょうか?
 まずは『ニューゼクシオ』のレギュラーモデルドライバーからじっくりと検証してみることにしました。
(実測データは別表)

1. 迫力ある大容量ヘッド
 今回の『ニューゼクシオ』レギュラーモデルドライバーの体積は、実測で415cm3もあります(メーカー公表値は405cm3ですが、もう少し大きいようです)。2代目と比べますと60cm3も大きくなっていますので、ビッグチェンジといえるでしょう。
 全体の形状は、初代から2代目の流れを忠実に受け継いでおり、輪郭にメリハリがあって、見慣れた方にとっては、とても安心感のある形状となっています。
 フェース高さは60mm近いディープフェースですが、投影面積が大き過ぎず、違和感なく構えることができます。
 
2. 素晴らしい高反発ヘッド
 2代目も当時としては高いレベルの高反発ヘッドでしたが、今回はさらに上の高反発を目指して設計されています。製造が非常に困難なDAT55Gでの鍛造カップフェース、そしてクラウン部分までも極限まで肉薄にしたユニークな設計など、他社に類を見ない極めて高度な製造方法によって高反発を実現しています。
 
3. 低重心を維持
 通常ヘッドが大きくなって、しかもディープフェースになりますと、おのずと重心が高くなります。しかし、『ニューゼクシオ』は、低重心を極力目指したことから、ヘッドの高さ(厚み)との対比で見ますと、2代目同様の低重心を維持しています。したがって、バックスピンの量も抑えられ、アゲンストの風にも強い球を打ちやすくしています。
 
4. 球のつかまりが良い
 ヘッドの大型化は、重心距離が伸びることから、ヘッドの操作性の悪化につながりやすい傾向があります。重心距離が伸びると、ヘッドが返りにくくなり、一般的にスライサーには向きにくいといわれるのです。しかし、『ニューゼクシオ』レギュラーモデルドライバーは、400cm3を超える大型ヘッドながら重心距離を抑えて設計されており、他の400cm3を超えるヘッドに比べて操作性が良くなっています。
 
5. ミスショットに強くなった
 もちろん体積が大きくなったのが主な要因ですが、『ニューゼクシオ』は、ヘッドの慣性モーメントが左右・上下ともに10%以上大きくなっています。しかも、フェース面の肉厚を複雑に変化させ、高反発域を広く取っていますので、多少のミスもナイスショットと変わらずに飛んで、平均飛距離も上がるはずです。
 
6. しなりを感じて振りやすいシャフト
 今回の『ニューゼクシオ』レギュラーモデルに装着された「MP300シャフト」は、前モデルの「MP200」に比べて、ヘッド側(先)がしっかりしていて、ミスショット時の方向性が良くなっています。
 また、グリップ側(手元)は逆にやや軟らかくして、ダウンスイング時にシャフトをしなりやすくすることでタメがつくりやすくなっていますので、シャフトがスムーズにしなる感じがするはずです。
 

■松尾好員の辛口トーク
 基本的には今まで説明しましたように、『ニューゼクシオ』は、非常に高度なレベルで開発されたクラブですから、良いに決まっているともいえるほどです。しかし、実際にゴルファーがその性能を最大限に引き出すためには、いかに自分に合ったスペックを選ぶかにかかってきます。
 『ニューゼクシオ』はとても多くの種類(スペックバリエーション)が準備されていますので、ユーザーにとっては必ずマッチするものが見つかるはずなのですが、逆にユーザー側からしてみれば 何を基準に選べば良いのかがわかりにくいかもしれません。
 スペック選びで最も大切なのがシャフトの硬さです。『ニューゼクシオ』を試打して感じることは、シャフトがちょっとしっかりめかな、ということです。SかRかで迷っておられるなら、ズバリRをおすすめします。ゴルフ専門誌上でも「『ニューゼクシオ』はシャフトが硬くなって難しくなった」とか書かれていることがありますが、私はこれでクラブ本来の姿になったとむしろ肯定的に受け止めています。皆さんもお気付きだと思いますが、一般的に最近ではシャフトが軟らかくなり過ぎ、多くのRシャフトは以前のレディース用と同じかそれ以上に軟らかくなっています。ですから、スイングがばらつけば、たわみすぎたり、ねじれすぎたりして正確なインパクトを再現しにくくなっており、これもミスショットの原因になると思います。ですから、ややしっかりめになった『ニューゼクシオ』のシャフトは、歓迎すべき改善がなされたと言えます。
 ただ、そういう意味で今回のXシャフトはかなりハードです。特にロフト8度のヘッドはかなりのパワーがないと使いこなせないと思います。でもそのようなパワーの持ち主はレギュラーモデルではなく、シャフトが重いハードスペックを選ぶのではないでしょうか。
 
 辛口トークのつもりがあまり"辛く"なっていませんね(笑)。それだけ非の打ちどころのない出来に仕上がっていると思います。唯一の問題点として8度Xのような難しいスペックの存在意義について指摘させていただきましたが、その意味でも、早くハードスペック(従来のツアーモデル)も試打してみたくなりました。近く検証したいと思います。
『ニューゼクシオ・レギュラーモデルドライバー』実測値
 
  8度 X 9度 S 10度 R 11度 R2 2代目 10度R
  MP300 MP300 MP300 MP300 MP200
クラブ長さ(inch) 45.0 45.0 45.0 45.0 45.0
クラブ重さ(g) 301.0 296.6 291.3 290.7 287.0
スイングウエイト D3.3 D1.9 D1.1 D1.5 D1.7
クラブ慣性モーメント(gcm2) 290万 287万 284万 285万 285万
           
ヘッド重さ(g) 195.5 193.4 195.2 193.8 195.2
ヘッド体積(cm3) 409 413 415 420 352
ライ角(deg) 58.5 58.0 58.0 58.0 55.5
フェースプログレッション(mm) 18.2 20.4 21.7 23.4 20.5
           
重心距離(mm) 36.5 35.6 35.9 36.8 35.3
重心角(deg) 21.0 21.0 20.5 18.0 21.6
フェース高さ(mm) 58.9 58.7 58.8 59.1 54.1
スウィートスポット高さ(mm) 34.4 35.6 35.9 35.9 32.7
有効打点距離(mm) 24.5 23.1 22.9 23.2 21.4
           
ヘッド左右慣性モーメント
(gcm2)
3,679 3,689 3,762 3,700 3,409
ヘッド上下慣性モーメント
(gcm2)
2,312 2,306 2,352 2,298 2,057
ネック軸回りモーメント
(gcm2)
6,220 5,938 6,061 5,902 5,683
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。