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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.22 『ニューゼクシオアイアン』を検証する
 
 3代目となる『ニューゼクシオ』。特にアイアンは、初代モデルの登場以来、常に完成度が高く、他社のベンチマークにされ、いろいろな角度から研究されてきたといわれています。アイアン販売の記録を塗り替え続けてきた『ゼクシオ』。はたして『ニューゼクシオアイアン』も進化し続けているのでしょうか?
(実測データは別表)

1. まさに飛びそのもの
 まず、3代目の『ニューゼクシオアイアン』を試打して驚くのが、その飛距離です。もちろん皆さんもご存知のように、2代目よりもロフト角が1度立っていることがあるのですが、体感的にはそのロフト以上に飛ぶ感じがします。
 SRIスポーツは、ヘッドの反発係数の研究についてもトップレベルのメーカーですので、それがアイアンにも存分に生かされているのでしょう。
 また、多少芯を外して打ってもキャリーがほとんど変わらないため、スイートエリアの広いクラブであることがわかります。まさにアマチュアにとって頼もしい限りのクラブです。
 
2. 操作性が良く、球がつかまりやすくなった
 初代、2代目と、『ゼクシオアイアン』はフェース長さが長く、ヘッドの返りがゆっくりしているだけでなく、ライ角度もフラットでしたので、どちらかといえば打球が左に行かないアイアンでした。
 しかし、この3代目の『ニューゼクシオアイアン』は、ライ角度が標準的な値となり、重心距離も少し短くなりましたので、ネック軸回りの慣性モーメントが5%ほど改善されています。
 その結果、ヘッドの操作性が良くなり、球がつかまりやすくなったのは大きな改良です。
 
3. 2代目よりも小さく見えるヘッド形状
 初代、2代目と、どちらかといえばフェース長さが長く見えて、大型ヘッドのイメージがあった『ゼクシオアイアン』ですが、3代目の『ニューゼクシオアイアン』はトップラインの幅が厚くなり、構えた感じでは小さく小ぶりに見えるようになりました。
 実際に計ってみると、フェース長さはわずかしか短くなってはいないのですが、印象としてはかなりすっきりしています。
 
4. 打感が良い
 私は個人的にはチタンフェースの打感が好きですが、中には軟鉄鍛造に比べて打感がいまひとつという方もいらっしゃいます。しかし、今回の『ニューゼクシオアイアン』では、チタンフェースの薄肉外周部を広く取ったため、打感がとてもマイルドになりました。軟鉄鍛造派の方も、違和感なく使えるのではないでしょうか。
 
5. クラブとして適度に重量感があり、かなり良くなった
 別表のように、2代目ではクラブが軽過ぎる感じがしていましたが、3代目の『ニューゼクシオアイアン』はカーボンシャフト仕様で4g、スチールシャフト仕様では5gほどクラブ総重量が重くなっており、クラブ慣性モーメントが2~3万gcm2上がって、よりドライバーとのマッチングが良くなりました。
 アイアンがドライバーに比べてクラブ重量が軽過ぎますと、明らかに振りやすくなり過ぎ、かえってタイミングがとりずらくなってミスショットが出やすくなります。したがって、『ニューゼクシオアイアン』で総重量が重くなったことは、より良い改善と言えます。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. 5番アイアンのスコアラインがトウ寄りに見える
 これだけじっくり開発され完成度の高い『ニューゼクシオアイアン』ですが、5番アイアンを構えた時に、フェースを見る目線がしっくりこないのです。ややトゥ寄りに目線が行って、ライ角度もフラットに感じます。おそらくネック形状が2代目から少し変化していることが影響しているのだと思います。
 
2. カーボンとスチールで、グリップの太さが違い過ぎる
 カーボンシャフトのグリップと、スチールシャフトのグリップの太さが違いすぎる(スチール用が太い)のではないでしょうか。同時に2つを試打することは少ないのかも知れませんが、手とクラブを結ぶのはグリップですし、太さは重要に思います。
 

 スコアラインの見え方とグリップの太さにあえて苦言を呈しましたが、『ニューゼクシオアイアン』の機能面での完成度はきわめて高く、初代、2代目に続いて大ヒットを予感させるつくりになっています。

 次回は、ハードヒッター用の『ハードスペックウッド』と『ツアーアイアン』を検証したいと思います。

『ニューゼクシオアイアン』実測値
カーボンシャフト仕様 #5 #5 #7 #7 2代目
#5
2代目
#5
MP300
(S)
MP300
(R)
MP300
(S)
MP300
(R)
MP200
(S)
MP200
(R)
クラブ長さ(inch) 38.0 38.0 37.0 37.1 38.0 38.0
クラブ重さ(g) 362.2 363.4 372.0 372.6 357.8 355.5
クラブ慣性モーメント
(gcm2)
266万 264万 262万 262万 263万 262万
             
ヘッド重さ(g) 249.2       249.7  
リアルロフト(deg) 24.2       25.0  
ライ角(deg) 60.2       59.4  
フェースプログレッション
(mm)
1.9       1.4  
ソール角(deg) -0.5       -0.5  
             
重心距離(mm) 39.4       39.8  
重心深度(mm) 5.3       5.1  
重心角(deg) 13.2       13.2  
スウィートスポット高さ
(mm)
21.0       20.6  
             
ネック軸回りモーメント
(gcm2)
6,187       6,482  

スチールシャフト仕様 #5 #5 #7 #7 2代目
#5
NSPRO
890 (S)
NSPRO
890 (R)
NSPRO
890 (S)
NSPRO
890 (R)
NSPRO
950 (R)
クラブ長さ(inch) 38.0 38.0 37.0 37.0 38.0
クラブ重さ(g) 399.6 398.3 414.2 412.7 394.5

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。