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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.23 『ニューゼクシオ・ハードスペックドライバー』と『ニューゼクシオ・ツアーアイアン』を検証する
 
 前回と前々回にわたり、『ニューゼクシオ』の『レギュラースペックドライバー』と『レギュラーモデルアイアン』を検証しましたが、そこで、その飛びの実力を実感することができました。
 『レギュラーモデル』は、ウッド、アイアンともにクラブ重量が軽いので、確かに振りやすくヘッド速度が上がりますが、私が本気で使うとすれば、少し物足りなく感じる部分があるのも事実です。
 そこで今回は、楽しみにしていた『ニューゼクシオ』の『ハードスペックドライバー』と『ツアーアイアン』を検証する機会に恵まれましたので、ぜひ皆さんにその結果を報告したいと思います。(実測データは別表)

■『ニューゼクシオ・ハードスペックドライバー』
1. クラブ重量が的確なドライバー
 『ニューゼクシオ』の『ハードスペックドライバー』は、クラブ重量がXシャフトで318g、Sシャフトで314g、そしてSRシャフトで311gと重くなっています。Sシャフトで言えば、『レギュラーモデル』と比べて約17gも重くなっています。
 また、クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントは、Xで293万gcm2、Sで291万gcm2、そしてSRで289万gcm2と大きくなっています。その結果、一般的にはそれぞれヘッド速度が、Xで46~48m/s、Sで44~46m/s、SRで42~44m/sくらいの方がちょうど振りやすくなっています。
 したがって、『レギュラーモデル』とはかなり振りやすさに違いがあります。スイングのタイミングが早くなることでミスの多い方や、クラブの重みを感じて振りたい方には、こちらの方が良いはずです。
 
2. レギュラーモデルと変わらない高反発ヘッド
 『ハードスペックドライバー』は、打感も良く、ボール初速の速さは『レギュラーモデル』と変わらない高反発です。クラブを振り切れるパワーさえあれば、飛距離は変わることなく飛びます。
 
3. スクエアフェースになって構えやすくなった
 『ハードスペックドライバー』は、『レギュラーモデル』に比べて少しスクエアフェースになっています。アドレスで、より正確にターゲットへ構えやすくなっています。
 
4. 手元のしなりを感じて振りやすいシャフト
 『ハードスペックドライバー』に装着されている、「ツアーブラックV25カーボンシャフト」は、『レギュラーモデル』に装着されている「MP300カーボンシャフト」より重量が約10g重くなっています。また、先端側のねじれが抑えられていますので、スイング中にヘッドが暴れにくくなっており、叩いてもミスショットになりにくい感じがします。
 

■『ニューゼクシオ・ツアーアイアン』
1. 飛距離コントロールがしやすい
 『レギュラーモデルアイアン』はどこまでも飛んでいく感じがあって、微妙な距離をコントロールショットで狙うには「飛び過ぎて」しまい、かえって難しいという面もありました。
 ところが、この『ツアーアイアン』では、ロフト角設定がノーマルになり、番手間のロフト差もより適切になっています。そこで、#5は#5の距離、#7は#7の距離を打ちやすく、距離が前後してしまうミスは少なくなるでしょう。
 
2. ヘッドが小振りで構えやすい
 『ツアーアイアン』は、『レギュラーモデルアイアン』を見慣れた方にとっては、ヘッドが小さいと思えるかも知れません。しかし、一般的にはまだ十分に大きく、安心感のある大きさと言えます。
 『ツアーアイアン』は、『レギュラーモデルアイアン』に比べ、フェース長さでは約1.5mm短く、高さ方向では約2mmシャローフェースになっていますが、構えた瞬間から「これは行ける!」と感じる面構えをしています。
 また、『ツアーアイアン』は、フェースプログレッションの値も3.3mmとセミグースネックとなり、『レギュラーモデルアイアン』のグースネックが好みでない方も、きっと大丈夫です。
 
3. ヘッドの操作性が良い
 『ツアーアイアン』は、フェース長さが短くなり、重心距離も短くなっていますので、おのずとネック軸回りの慣性モーメントも小さくなり、明らかにヘッドの操作性が良くなっています。したがって、ラフからスライス気味に振り抜いたりする高度なコントロールショットもしやすくなっています。
 
4. ソールの抜けが良い
 『レギュラーモデルアイアン』では、ソール角度がスクープ気味ですので、明らかに払い打ちに合うように設計されています。一方、『ツアーアイアン』は適度にバンスが付いているため、ダウンブローにスイングできる方にとってはこちらの方がソールの抜けが良くなっています。
 
5. クラブの重さが重くて良い
 ドライバー同様に、『レギュラーモデルアイアン』はクラブが軽くて振りやすさに過剰すぎる面もありました。しかし『ツアーアイアン』は「ライフル100」のシャフトを採用することにより、重量感がありながらシャフト中央部のしなりを感じてゆっくり振りやすくなりました。どちらかと言えばスイングタイミングがゆっくりしている方に向いています。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. ドライバーがもう少しスクエアフェースでも良い
 『ハードスペックドライバー』の8度のヘッドは、確かに計測ではオープンフェースで、上級者が見ればちょうどスクエアフェースになっています。しかしながら、9度はもう少し、10度はもっとスクエアフェースであれば、なおさら良いと思いました。今回は検証していませんが、フェアウェイウッドも同様に思います。
 
2. 8度Xが打てるようになった
 これは辛口トークではありませんが、『レギュラーモデルドライバー』を検証したときは8度Xでは球が上がらず、うまく打つことは非常に難しかったのです。ところが、今回『ハードスペックドライバー』でクラブ重量が重くなると、8度Xでも普通に打てるようになり、飛距離・方向性ともにかなり良かったです。
 やはり、クラブ選びには、ゴルファーに合った「クラブ重量選び」がとても大切であると、あらためて実感しました。
 
3. コントロール性を望まれるのであれば『ツアーアイアン』
 これも辛口トークではありませんが、ヘッドの操作性や番手間飛距離の安定性を考えますと、私はこの『ツアーアイアン』をお勧めします。もし必要であればロフトを立てて少しグースネックにすることもできますし、方向性や球のつかまりが合わないのであればライ角度の調整も可能です。
 したがって、アベレージゴルファーの方でもむしろこの『ツアーアイアン』を選択されるほうが、トータルではメリットが大きいのかなと思います。標準装着の「ライフル100シャフト(Rで101g)」が重いという方は、「NSプロ950GH(Rで95g)」や「NSプロ950HP(Rで93g)」シャフトを特注することが可能です。
 
4. ネーミングがややこしい
 最後の最後で文字通りの辛口トークです。ウッドは『ハードスペック』でアイアンが『ツアーアイアン』ではわかりにくいですね。2代目まではウッドは『ツアーモデル』でした。何か意図があってのネーミング変更でしょうが、第一印象としてわかりにくいと感じました。
 

 今回で『ニューゼクシオ』をひととおり検証しました。ネーミングは別として(笑)、今回の『ハードスペックドライバー』と『ツアーアイアン』は、私個人としては大変に気に入っています。もちろん、『レギュラーモデル』も完成度が高く、「さすがゼクシオ!」といったところです。
 ゴルフ界のウッド部門では、「フルチタンVSカーボン複合」の"素材戦争"が注目されていましたが、この戦いは、フルチタンの雄である『ゼクシオ』の勝利か、と思っていました。しかしながら、この度、『ゼクシオ・プライム17ドライバー』が発表されたところ、このドライバーはカーボン複合ヘッドを採用しているとのこと。興味深いところです。次回はこの『ゼクシオ・プライム17ドライバー』を検証してみます。

『ニューゼクシオ・ハードスペックドライバー』実測値
  8度(X) 9度(S) 10度(SR) レギュラー
9度(S)
V25 V25 V25 MP300
クラブ長さ(inch) 45.0 45.0 45.0 45.0
クラブ重さ(g) 317.8 314.1 311.3 296.6
スイングウエイト D3.3 D2.0 D1.0 D1.9
クラブ慣性モーメント
(gcm2)
293万 291万 289万 287万
         
ヘッド重さ(g) 195.7 194.7 195.2 193.4
ヘッド体積(cm3) 409 418 414 413
ライ角(deg) 59.0 57.5 58.0 58.0
フェース角(deg) オープン 1.0 0.0 フック 1.0 フック 0.5
フェースプログレッション(mm) 19.2 20.7 21.2 20.4
         
フェース高さ(mm) 59.2 59.4 59.5 58.7
         
ヘッド左右慣性モーメント(gcm2) 3,694 3,764 3,790 3,689
ヘッド上下慣性モーメント(gcm2) 2,338 2,362 2,367 2,306
ネック軸回りモーメント(gcm2) 6,186 5,909 6,203 5,938

『ニューゼクシオ・ツアーアイアン』実測値
  #5 #5 #7 #7 レギュラー#5
ライフル
100(S)
ライフル
100(R)
ライフル
100(S)
ライフル
100(R)
NSプロ
890(S)
クラブ長さ(inch) 37.75 37.75 36.75 36.75 38.0
クラブ重さ(g) 415.3 409.8 429.3 425.2 399.6
スイングウェイト D2.5 D1.5 D2.0 D1.5 D2.2
クラブ慣性モーメント(gcm2) 278万 275万 274万 272万 275万
           
ヘッド重さ(g) 256.8       249.2
ライ角(deg) 59.7       60.2
フェースプログレッション(mm) 3.2       1.9
ソール角(deg) 3.3       -0.5
           
重心距離(mm) 38.1       39.4
スウィートスポット高さ(mm) 21.2       21.0
           
ヘッド左右慣性モーメント(gcm2) 2,779       2,601
ヘッド上下慣性モーメント(gcm2) 622       624
ネック軸回りモーメント(gcm2) 5,999       6,187

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。