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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.25 『スリクソンI-404』を検証する
 
 ツアープロも使用しているプロ・上級者モデルのスリクソン。評判の高かった前モデルの『I-302』は、今も尚、一部のツアープロに愛用され続けています。今回のニューモデル『I-404』はそれを上回る高性能といわれ、加瀬秀樹プロが「ようやく巡り合えたアイアン」と絶賛するほどですし、中嶋常幸プロほか多くのプロがすでに愛用していています。その『I-404』の性能は、果たしてどのようなものでしょうか、じっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1. 小振りになっても構えやすいヘッド形状
 今回の『I-404』は前モデルの『I-302』よりもフェースが小さくなって、難しくなったのかな? と思っていましたが、全体のまとまりが良く、構えた瞬間にいいアイアンであると納得できました。少し小さめのフェースですが、ストレートネックでラインが出しやすくなっていますし、フェースのトウ側が高めなので、球がつかまる感じが出ています。小ぶりのヘッドで、操作性をより重視される方にはとても良さそうです。
 
2. 打感は最高
 『I-404』は、キャビティ部の最も薄いところでも3.5mmの厚みがありますので、打感がマイルドで最高です。フェースが複合フェースではないので、インパクトでの嫌な振動がまったくないのがいいです。
 
3. スイートスポットが低くなって打ちやすい
 前モデルの『I-302』よりも、スイートスポット高さが約1mm低くなったことで、悪いライからでも芯に当たりやすくなりました。ダウンブローに強く打てない人でも、まったく問題なく使えます。僅か1mmですが、この1mmの低重心化は、かなりのモデルチェンジと言えます。
 
4. 重心深度が深くなった
 『I-404』ではキャビティのデザインなどを変えることで、重心深度が『I-302』の2.2mmから2.6mmと深くなり、ミスショットでのインパクトの“当たり負け感”が改善されています。また、ヘッドは小さくはなりましたが、ヘッドの慣性モーメントは『I-302』とほとんど変わらずにしっかりと維持されています。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. フェースが大きなモデルを追加して欲しい
 一般的に『I-302』でもヘッドは小ぶりの部類です。『I-404』はさらに小さくなりました。ツアープロにはこの大きさでも良いのでしょうが、アマチュアのベタープレーヤーにおいては、大きなヘッドで重心距離がもう少し長いものが欲しいと考えている方も多いはずです。
 軟鉄鍛造アイアンのラインアップとして、別にもう少し重心距離が長めで、より大型ドライバーにマッチするモデルも作って欲しいと思います。
 
2. ダイナミックゴールドでは重過ぎる
 シャフトは「ダイナミックゴールド(以下DG)」と「NS950」が準備されているのですが、対象ユーザーやドライバーの重量を考えますと、90g台のシャフトと105~110gのスチールシャフトをむしろ標準にしてはどうでしょうか? 最近のベタープレーヤーにとっては、むしろ「DG」が特殊で、逆に「NS950」と「DG」の間の重さのシャフトがほしいのではないかと思います。
 

SRIXON I-404 実測データ
  #5
NS950 S
#7
NS950 S
#5
DG S200
#7
DG S200
クラブ長さ(inch) 37.8 36.8 37.5 36.5
クラブ重さ(g) 403 413.8 428.6 440.6
スイングウェイト D1.2 D1.1 D2.0 D2.0
クラブ慣性モーメント(gcm2) 271万 268万 275万 272万
         
リアルロフト(deg) 27.0 34.0 - -
ライ角(deg) 60.5 61.8 - -
フェース角(deg) 4.0 4.0 - -
         
スウィートスポット高さ(mm) 20.5 20.6 - -
         
ヘッド左右慣性モーメント(gcm2) 2,231 2,355 - -
ヘッド上下慣性モーメント(gcm2) 568 634 - -
ネック軸回りモーメント(gcm2) 4,574 4,989 - -

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。