「松尾好員が斬る!」はリニューアルしました。2015年以降の記事はこちらをご覧ください。
バックナンバー

クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.26 『NEWゼクシオプライム』を検証する ~ウッド編~
 
 『ゼクシオ』は現在のモデルが3代目となり、高級クラブのベストセラーブランドとして、高い地位を築いています。そして、その『ゼクシオ』シリーズには、さらに上質な『ゼクシオプライム』というモデルがあり、今春待望の新製品が登場しました。
 『NEWゼクシオプライム』は、ヘッド体積が大きく、コンポジット製法で作られていますが、果たしてその性能はどのようなものでしょうか? 今回もフェアウェイウッドと併せてじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表で、前モデルとの比較付き)。

『NEWゼクシオプライム』ドライバーを検証
1. 難易度の高い製法で作られたヘッド
 標準モデルの『ゼクシオ』がモデルチェンジする時には、いつもSRIスポーツの技術の 高さに驚いていますが、今回の『プライム』も、私の想像を超える難易度の高い設計手法が採用されていました。通常ならば、カーボンコンポジット製法だろうと思っていましたが、扱いが難しいマグネシウムを採用し、カーボン、チタンと3つの素材でヘッドを作っていました。
 通常、カーボンを使ったコンポジットヘッドは音が鈍いのですが、このニューモデルも、前モデル同様に高いインパクト音が健在です。
 
2. 反発の高いヘッド
 SRIスポーツさんは反発については非常によく研究しているメーカーですし、実際、量産品でも高い反発係数を維持しています。
 特に、標準の『ゼクシオ』よりもヘッド速度が遅いゴルファー向けに開発されている『プライム』は、より高い反発を示していますので、ボール初速が上がることは間違いありません。
 
3. クラブ長さは2種類
 クラブ長さは44.5インチと45.5インチが準備されていて、好みに応じて選ぶことが出来ます。私の見解では、44.5インチのほうがミート率が上がり、高い反発係数のヘッドの良さをより生かせると思います。
 
4. ミスショットに強いやさしいヘッド
 『NEWゼクシオプライム』は、3つの異なる材料を使うことで、ヘッドを軽量化し、余剰の重量を多く生み出しています。
 そして、その余剰の重量を適切に使うことで、重心深度が深くなり、周辺に重量配分をすることができたことで、ヘッドの慣性モーメントが大きくなっています。
 そのために、ネック軸回りの慣性モーメントも大きくなり、芯を外れたミスショットの時でも、ヘッドのブレが小さくなっています。
 
5. ダウンスイングで加速するシャフト
 『NEWゼクシオプライム』は、標準の『ゼクシオ』よりもヘッド速度の遅い方を対象にしているため、シャフトもより軟らかいものが装着されています。ドライバーではSRとRを試打しましたが、特にRシャフトは軟らかく、ヘッド速度が35~37m/sくらいの方でも、ダウンスイングではシャフトが上手くしなってくれそうな感じがしました。
 本来の対象ユーザー(ヘッド速度が36~39m/s)の方においては、スイングタイミングが早い方はSRシャフトを選ばれても良いと思います。
 

『NEWゼクシオプライム』フェアウェイウッドを検証
1. シャローフェースで低重心のヘッド
 『NEWゼクシオプライム』のフェアウェイウッドは、チタンとカーボンのコンポジット製法で作られています。そのため、ヘッドの重量配分にかなりの余裕ができ、したがって、ヘッドをいかようにも作ることができます。今回の『プライム』では、その重量が深い重心深度と低重心のヘッドになるよう使われています。
 フェース高さの低いシャローフェース設計は前回通りのコンセプトですが、さらに重量配分が向上したことから、一層、フェアウエイから打つためのフェアウェイウッドに仕上がっています。
 特にスイートスポット高さは非常に低く(#3で21.5mm、#5で21.8mm)、悪いライからでもフェースの芯に当たりやすくなっています。

 
2. 飛距離がすごい
 先程も述べたように、『プライム』のフェアウェイウッドはかなりの深・低重心設計になっていますので、球が上がりやすく、バックスピンも少なめになるため、アゲンストの風でも球が吹き上がることなく、前へ前へと飛んで行きます。
 
3. ロフトバリエーションが豊富
 フェアウェイウッドの番手構成は、通常は#3、5、7、9のパターンが多いのですが、『プライム』では、それに#4と#11が加わっていて、自分の使いたい距離に応じて番手を選ぶことができます。
 ヘッド速度が35~39m/sくらいの方は、#4、#7、#9の組み合わせも良さそうに思います。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. 『NEWゼクシオプライム』ドライバー
 チタン、カーボン、マグネシウムと3つの材料を使っての複雑なヘッド設計には頭が下がる思いです。そして、ヘッドの形状、重心位置、外観仕上げなどは申し分ありません。
 ただ、実際に年配の方が使っていらっしゃるのを見ていますと、もう少しリアルロフトを増やしてもよい感じがします。特に、10.5度仕様では、球が上がり切らないような気がします。
 (当然、このような方は11.5度を選ばれるとよいのですが、結構10.5度表示にこだわることが多いようです)
 
2. 『NEWゼクシオプライム』フェアウェイウッド
 辛口ではないのですが、フェアウェイウッドの顔がほぼスクエアフェースなので、 いつもの『ゼクシオ』らしさがないように思います。つまり、このヘッドのままで、上級者にも十分に使えそうな気がします。(もちろん、重いシャフトは必要ですが……)
 また、深・低重心であることが効いているため、SRIスポーツさんの中で、最も飛ぶフェアウェイウッドではないかと思うくらいです。
 特に#3の飛び方は、ドライバーに近いものでした。
 
3. セットマッチング
 ドライバーの長さは、44.5インチと45.5インチの2つがありますが、フェアウエイウッドとのつながりを考えますと、ドライバーは44.5インチのほうが良さそうに思います。
 44.5インチのドライバーから、#3、#5とつなげて行きますと、一定間隔でクラブ慣性モーメントが小さくなりますので、同じスイング、同じタイミングで振ることができ、ミスショットも少なくなるような気がします。
 

「NEWゼクシオプライム」ウッドの実測データ
  #1
10.5度
SR
#1
11.5度
R
#3
15度
SR
#5
18度
SR
前モデル
10.5度
SR
クラブ長さ(inch) 44.5 45.5 43.0 42.0 44.6
クラブ重さ(g) 285.6 284.1 292.7 300.3 285.5
スイングウエイト C8.0 D0.0 C8.2 C8.0 C8.3
           
ライ角(deg) 57.5 57.5 57.5 58.5 57.0
フェース角(deg) フック
1.0
フック
1.0
フック
0.5
フック
0.5
フック
1.0
フェースプログレッション (mm) 20.7 21.4 18.8 19.1 18.2
           
重心距離(mm) 39.3 39.9 33.9 33.8 38.6
重心深度(mm) 36.8 37.0 36.2 34.8 34.7
重心角(deg) 21.1 20.4 26.0 24.1 21.8
フェース高さ(mm) 58.8 58.8 31.7 29.2 56.6
スウィート スポット高さ(mm) 36.6 37.8 21.5 21.8 35.7
有効打点距離(mm) 22.2 21.0 10.2 7.4 20.9
           
ヘッド左右慣性 モーメント(gcm2) 3,952 3,899 2,192 1,958 3,895
ヘッド上下慣性 モーメント(gcm2) 2,439 2,420 1,087 963 2,265
ネック軸回り モーメント(gcm2) 6,826 6,834 4,229 4,068 6,827

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。