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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.27 『NEWゼクシオプライム』を検証する ~アイアン編~
 
 3代目の『ゼクシオアイアン』も、これまでの『ゼクシオ』同様、多くのゴルファーに支持され、昨年のベストセラーモデルになりました。そして、今回は新たに、『ゼクシオ』シリーズの高級モデルである『NEWゼクシオプライム』が登場しました。
 そしてこの『NEWゼクシオプライム』は、これまでにも増して美しい外観の仕上げで高級感がありますが、果たしてその性能はどのようなものでしょうか。詳しく検証してみたいと思います。(実測データは別表、前モデルと比較付き)。

1. ゼクシオ史上、最も飛ぶアイアン
 前モデルでもストロングロフト設定で飛距離が出たのですが、今回の『NEWゼクシオプライム』は、さらにロフトが1度立って、#5で23度、#7で29度となりました。
 実際に試打してみると、その飛距離性能は感動ものです。やはりアイアンも飛んだ方が良いとする意見も、確かにもっともなことだと思ってしまいます。
 
2. 重心深度が深く、やさしく感じる
 単にストロングロフトなだけであれば、弾道が低くなってキャリーが出にくくなってしまうのですが、SRIスポーツの高度な重心位置設計により、この新しい『プライム』は、重心深度が5mmを超え、非常に深くなっています。そのために、ストロングロフトでも球が上がりやすく、またミスショットの時でもショックアブソーブラバーの助けもあり、嫌な振動が手に響きにくくなっています。
 オーソドックスなヘッド形状を維持しながら、重心深度を深くするのは困難なことで、重心深度5mm台は素晴らしいと思います。
 
3. 振りやすいクラブ長さと重さ
 『NEWゼクシオプライム』の対象ゴルファーは、シニア及びグランドシニアの方々ですから、アイアンにおいても、まず振りやすいクラブが求められます。この『プライム』は、前回同様に標準モデルよりクラブ長さを0.5インチ短くすることと、スイングウエイトをC8設定にすることで振りやすくしています。
 また、多くのシニアやグランドシニアの方々の身長を考えると、#5が37.5インチはベストな長さだと思います。
 
4. 小振りで操作性の良いヘッド
 『NEWゼクシオプライム』を構えて見ればとよくわかるのですが、標準の『ゼクシオ』よりもヘッドがやや小さく、操作性が良くなっています。そして、ヘッド形状がバランス良くできているため、ターゲットに対して、自然にスクエアに構えやすくなっています。
 
5. シャフトが軟らかくて楽
 『NEWゼクシオプライム』は、ドライバーのシャフトも軟らかく振りやすいのですが、このアイアンもダウンスイングでしなりを感じることができ、大変に振りやすくなっています。
 
6. 払い打ちに適したソール角度
 新しい『プライム』は、前モデルよりもソール角度(バンス角度)が#5、#7ともにスクープソールが強くなっています。したがって、レベルブローの払い打ちをしてもソールが跳ねることはなく、スムーズに振り抜けると思います。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. 上級者向けの顔をしたヘッド
 これはある程度好みの問題かも知れませんが、『NEWゼクシオプライム』は標準モデルの『ゼクシオ』よりも顔が良く、上級者も構えやすく感じることでしょう。フェースの長さやヘッドの輪郭とのバランスが、非常によくできていると思います。
 
2. ユーティリティーが欲しくなる
 『NEWゼクシオプライム』は、#4アイアンでロフトが21度となっていますので、シニアやグランドシニアの方では、重心深度が深いとはいえ、フェアウェイから球を上げるのは難しいかもしれません。
 かと言って、高番手フェアウェイウッドでは構えづらいと感じる方も多いと思いますので、#5ウッドや#7ウッドと♯5アイアンとの間の距離をカバーする、ユーティリティーが欲しくなってしまうと思います。
 
3. アイアンクラブがドライバーに比べて少し軽い気がします
 『NEWゼクシオプライム』のアイアンは、他のクラブよりも0.5インチ短く、それが打ちやすい理由でもあるのですが、ウッドとのマッチングを考えますと、アイアンのクラブ重量がもう少し重くても良いように思います。
 アイアンが軽いと楽に振れ過ぎ、かえって手打ちになってしまう危険性があると思います。 
 

「NEWゼクシオプライム」アイアンの実測データ
  #5-R #7-R 前モデル
#5-SR
クラブ長さ(inch) 37.5 36.5 37.5
クラブ重さ(g) 354.6 365.2 355.6
スイングウエイト C8.0 C8.2 C8.5
       
ヘッド重さ(g) 256.0 268.4 254.9
リアルロフト(deg) 22.7 28.8 24.0
ライ角(deg) 60.0 61.2 61.2
フェースプログレッション(mm) 1.5 1.8 1.4
       
重心距離(mm) 38.6 38.1 38.4
重心深度(mm) 5.4 5.5 5.6
重心角(deg) 14.5 17.2 16.2
       
ヘッド左右慣性モーメント(gcm2) 2,497 2,512 2,491
ヘッド上下慣性モーメント(gcm2) 659 688 668
ネック軸回りモーメント(gcm2) 6,161 6,431 6,193

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。