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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.28 『ハイブリッド アドフォース』を検証する ~ウッド編~
 
 「ハイブリッド」はアベレージゴルファーが安心して使えるブランドとして定着しており、今回の『アドフォース』が4代目となります。「ハイブリッド」は、これまで常に丁寧な物作りがなされているため、性能も良く、しかもコストパフォーマンスに優れたモデルでしたが、今度の新製品の性能は果たしてどのようなものでしょうか? 今回もフェアウェイウッドと併せてじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表で、前モデルとの比較付き)

『アドフォース』ドライバーを検証する
1. 反発が高く、しかもフィーリングの良いヘッド
 ヘッドやボールの反発に関する研究において、世界のトップクラスであるSRIスポーツ。『アドフォース』に対しても、そのすべての技術が注ぎ込まれています。
 まずはヘッド部のフェースですが、これにはフィーリングの良さも兼ね備えた6-4チタンの板材が使われています。そのフェースは厚みを細かく変えたミーリング加工で作られているため、高い反発性能を得ることができ、しかも打感が良く、気持ち良くスイングできます。
 
2. ヘッドが大きく、安心感がある
 前回の『ハイブリッドCF1』は、ヘッドの体積が360cm3でしたが、今回の『アドフォース』は実測で431~434cm3と非常に大きくなりました。しかもクラブ長さが44.5インチとやや短く設定されていますので、そのヘッドの大きさをより大きく感じることができ、構えた時の安心感は抜群です。44.5インチ長さの設定は大正解だと思います。
 
3. 球がつかまるヘッド
 『アドフォース』のヘッドデザインに関しては、トウ側のボリュームが大きいことで、構えた時にライ角がアップライに見えるように設計されています。これにより、球をつかまえやすい感じが良く出ていますし、フェース角もフックフェースの設計でフェースプログレッションも小さく、すべてにおいて球のつかまりを良くする考慮がなされています。
 
4. 球が曲がり難く、ミスショットに強いヘッド
 『アドフォース』のヘッドは大きく、かつトウ寄りに重量感がありますので、重心距離も長くなっています。その結果、ヘッドの慣性モーメントも大きくなり、ネック軸回りの慣性モーメントも大きいので、芯から外れたミスショットでもヘッドがブレにくく弾道が安定しやすくなっています。
 
5. 球がフェアウェイに戻って来やすいフェース設計
 今回の『アドフォース』ではフェースのバルジ(フェース面のトゥヒール方向での丸み)が研究されていて、フェースの両側に大きく外れたミスショットに際しても、フェアウェイに球が戻って来やすいように考えられています。従って、アベレージゴルファーのミスショットに対して、まさしく寛容なヘッドと言え、スコアメイクにも役立ちそうです。
 
6. 全体に軟らかくなって、振りやすくなったシャフト
 『アドフォース』のシャフトフレックスは、SとRの2種類のため、よりシンプルで明解になっています。従来よりもしなり感が出ていますので、Sがしっかりし過ぎて振りづらいと感じていた方にとっては丁度良さそうです。Rフレックスも軟らかく感じ、よりしなり感を感じることができるため、振りやすくなっています。
 

『アドフォース』フェアウェイウッドを検証する
1. やさしく球が上がるヘッド
 『アドフォース』のフェアウェイウッドも、ドライバーの流れでヘッドが大きく安心感があります。ヘッドの重心位置がよく研究されているため、適度なスピンがかかりやすく、球がドロップせずに適正なキャリーが出やすくなっています。スプーンでも球を上げることが実感できる設計です。
 
2. 慣性モーメントが大きく、ミスショットに強い
 『アドフォース』のフェアウェイウッドは、ヘッドの左右の慣性モーメントが非常に大きくなっているため、アベレージゴルファーのミスショットをかなり助けてくれそうです。重心距離も長く、トウ寄りのミスヒットに対してもさらに強くなっています。
 
3. セット組みをシンプルにすることも可能
 『アドフォース』のフェアウェイウッドは、ロフトが2度間隔で、3、4、5、7番が用意されています。その中から、3、5、7番の3本を選ばれることが多いかも知れませんが、アベレージゴルファーの方にはむしろ、3番と5番、もしくは4番と7番というように、よりシンプルなセット組にして、割り切って使うのも良い方法だと思います。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. 『アドフォース』ドライバー
 ずばりドライバーの価格からしますと、非常に良くできていると思います。ゴルフ以外にも趣味が多く、特にクラブにお金をかけたくないゴルファーにとって、アドフォースは良い買い物になると思います。ただ、構えた感じのライ角度がアップライに見え過ぎて構え難い一面があります。もっともこのことは、ボールが捕まりにくい人にとっては安心感につながります。
 
2. 『アドフォース』フェアウェイウッド
 ドライバーはヘッドを大きくフックフェースにして球のつかまりをカバーしているのはわかるのですが、ヘッドの小さいフェアウェイウッドでは、もう少しストレートフェースに近くても良かったかな? と思います。
 

アドフォースウッドの実測データ
  #1
10度 S
#1
11度 R
#3
15度 S
#5
19度 R
前モデル
10度 S
クラブ長さ(inch) 44.5 44.5 43.0 42.25 44.5
クラブ重さ(g) 298.0 294.8 302.7 303.6 301.4
スイングウエイト D1.3 C9.8 D1.0 C9.8 D0.7
クラブ慣性モーメント(gcm2) 287万 284万 279万 274万 285万
           
ヘッド体積(ml) 431 434 172 150 360
リアルロフト(deg) 11.5 12.3 15.0 20.0 10.0
ライ角(deg) 57.5 58.0 57.0 57.5 56.5
フェース角(deg) HOOK
1.0
HOOK
1.0
HOOK
1.5
HOOK
1.5
HOOK
1.0
フェースプログレッション(mm) 18.0 18.5 19.0 20.2 16.5
           
重心距離(mm) 41.0 40.2 36.6 37.3 36.7
重心深度(mm) 36.4 36.6 32.5 33.0 33.7
重心角(deg) 23.2 24.0 20.0 19.7 23.1
フェース高さ(mm) 56.1 55.8 33.2 32.5 49.4
スウィートスポット高さ(mm) 35.0 35.8 24.2 25.2 31.6
有効打点距離(mm) 21.1 20.0 9.0 7.3 17.8
           
ヘッド左右慣性モーメント(gcm2) 3,985 3,983 2,850 2,754 3,544
ヘッド上下慣性モーメント(gcm2) 2,510 2,552 1,382 1,252 2,026
ネック軸回りモーメント(gcm2) 7,471 7,419 5,116 5,101 6,359

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。