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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.32 『スリクソンI-505』アイアンを検証する

『スリクソン』のニューアイアンである『スリクソンI-505』は、外観的にはシャープなデザインに仕上がっており、その性能の高さと確かさから、すぐに多くの契約選手に使われています。果たしてその性能はどのようなものでしょうか。じっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1. 少しフェースが長くなって、やさしく見えるヘッド形状
前モデルである『I-404』は引き締まった形状で、やさしさと言うよりもシャープに見える感じがありました。今回の『I-505』は、フェース長さが『I-404』よりも1mm長くなり、アドレス時の安心感が増しています。わずか1mmですが、比べてみると良くわかると思います。
また、トップラインがかなり丸くなり、アドレス時に球を包み込む感じが強くなっています。アマチュアの方には特に球がつかまりやすいイメージを与えてくれると思います。
 
2. 少しグースネック感が出て構えやすい
『I-404』はいわゆるストレートネックですが、この『I-505』はネックの形状が変わり、ややセミグース的なネックになっています。このために、アドレスでのボール位置がスタンスの中寄りの方にはかなり構えやすくなったと思います。
また、球のつかまりも良くなっています。
 
3. 非常にスイートスポットが低い
ヘッドの実測データを見ますと、『I-505』はスイートスポット高さ(以下SS高さ)が19.1mmと非常に低くなっています。『I-404』ではSS高さが20.5mmでしたので、1mmも低くなっています。
このために、フェアウェイや芝の薄い悪いライからでもフェースの芯で球をとらえやすくなっていますし、ダウンブローに打たずにスイープに払って打ってもナイスショットできます。今回は都合で#3ヘッドは計測出来ませんでしたが、#5よりもさらにSS高さが低くなっているはずです。
 
4. 低重心&深重心で、球が上がりやすい
『I-505』はSS高さが低いだけでなく、『I-404』よりも重心深度が深くなっています。タングステンウエイトがついた#5だけでなく、タングステンウエイトのない#7でも『I-404』よりも重心深度が深くなっていますので、球が上がりやすくなっています。
特に試打した#3や#5は、1番手違うような感覚で球が上がりますので、プロモデルとしてはとても楽でやさしい感じがします。
 
5. 抜けの良いソール形状
ツアープロの意見が取り入れられているだけあって、『I-505』の抜けの良いソール形状はわずかにダフっても上手く抜けて行ってくれます。
また、そのソール形状はトウ・ヒール方向のラウンドも強めですので、あらゆるライにおいてもソール面が地面に沿いやすくなっているため打ちやすいです。
 

■松尾好員の辛口トーク
ネック軸回りの慣性モーメントを大きくしたプロモデルを
ツアープロの意見を取り入れ、またツアープロがト-ナメントで使うアイアンですから、確かにヘッドの操作性が良く、ラフに負けにくい設計などが重要に思います。
しかし、アマチュアが使うには、アイアンの重心距離がもう少し長く、ネック軸回りの慣性モーメントが大きくなったもの、つまりもう少しヘッドがゆっくり返るものがよりドライバーとマッチングすると思います。
『スリクソン』ブランドで、フェースがもう少し長めのアイアンもぜひ欲しいところです。

次回は、『スリクソン Z-STEEL』ついて検証します。


I-505アイアン(ダイナミックゴールドシャフト)実測値
  #3
S200
#5
S200
#7
S200
I-404 #5
S200
I-404 #7
S200
クラブ長さ inch 38.5 37.5 36.5 37.6 36.6
クラブ重さ g 417.9 428.9 441.5 428.6 440.6
スイングウエイト   D1.8 D2.0 D1.8 D2.0 D2.0
クラブ慣性モーメント gcm2 278万 276万 273万 275万 272万
 
ヘッド重さ g 未計測 252.6 266.6 255.5 268.8
リアルロフト deg 27.0 34.0 27.0 34.0
ライ角 deg 61.2 62.0 60.5 61.8
フェースプログレッション mm 3.6 4.3 4.2 4.5
ソール角 deg 2.0 4.5 4.0 4.0
 
重心距離 mm 未計測 33.9 33.8 33.4 33.9
重心深度 mm 3.2 2.6 2.6 1.9
重心角 deg 12.2 13.4 10.5 13.0
スウィートスポット高さ mm 19.1 19.8 20.5 20.6
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 未計測 2,044 2,235 2,231 2,355
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 531 584 568 634
ネック軸回りモーメント gcm2 4,525 4,950 4,574 4,989


I-505アイアン(NSプロ950GHスチールシャフト)実測値
  #3
S
#5
S
#7
S
I-404 #5
S
I-404 #7
S
クラブ長さ inch 38.75 37.75 36.75 37.8 36.8
クラブ重さ g 389.5 400.0 413.6 403.0 413.8
スイングウエイト   D1.0 D1.2 D1.0 D1.2 D1.1
クラブ慣性モーメント gcm2 273万 271万 268万 271万 268万
 
ヘッド重さ g 未計測 252.6 266.6 255.5 268.8
リアルロフト deg 27.0 34.0 27.0 34.0
ライ角 deg 61.2 62.0 60.5 61.8
フェースプログレッション mm 3.6 4.3 4.2 4.5
ソール角 deg 2.0 4.5 4.0 4.0
 
重心距離 mm 未計測 33.9 33.8 33.4 33.9
重心深度 mm 3.2 2.6 2.6 1.9
重心角 deg 12.2 13.4 10.5 13.0
スウィートスポット高さ mm 19.1 19.8 20.5 20.6
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 未計測 2,044 2,235 2,231 2,355
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 531 584 568 634
ネック軸回りモーメント gcm2 4,525 4,950 4,574 4,989

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。