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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.33 『スリクソン Z-STEEL』フェアウェイウッドを検証する

『スリクソン』のクラブは、世界のプロゴルファーや競技指向の上級者を満足させるために開発されています。ドライバーやアイアンだけでなく、フェアウェイウッド(以下FW)においても、男子契約選手は『スリクソン』ブランドの『Z-STEEL』に替えてツアーを戦っています。
今回の『スリクソンZ-STEEL』は『スリクソンW-404』のFWよりディープフェースになって、力強さと汎用性が増しています。果たしてその性能はどのように変わったのでしょうか?ヘッドやシャフトなどじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1. ディープフェースになって、ティショットにも使いやすくなった
『Z-STEEL』を前モデルの『W-404』と比べますと、『Z-STEEL』はフェース高さで2~3mmディープになりました。『W-404』はむしろシャローフェースと呼べるくらいで、フェアウエイからは球を拾いやすそうなイメージはあったのですが、例えばラフから打つ時には、下をくぐってテンプラしそうなイメージもありました。
また、ティショットの場合、特にアマチュアでは高くティアップしがちですので、ある程度フェースの厚みがあったほうが安心感があります。
 
2. ソール面が丸くなって、様々なライに対応しやすい
『Z-STEEL』は『W-404』と比べますと、ソール面のラウンドが強くなっていますので、地面への接地面積が小さくなり、より抵抗が小さくなっています。
したがって、様々なライにも対応しやすく、また悪いライでも芝の抵抗を受け難くなっています。
 
3. 重心距離が短くなって操作性が良くなった
『W-404』と比べますと、『Z-STEEL』は重心距離が約2.5mm短く、ネック軸回りの慣性モーメントも500gcm2前後小さくなり、ヘッドの操作性が良くなりました。したがって、球のつかまりは良く、ドロー系の強い球が打ちやすくなっています。
 
4. FP値が大きく、SS高さも高くなって球が上がりやすくなった
『Z-STEEL』を『W-404』のFWと比べますと、FP値(フェースプログレッション)が大きくなり、フェース面が前方に出ています。このために、球を拾いやすくなっており、明らかに球が上がりやすくなっています。
そして、ディープフェースになった分、ソール面からのSS(スイートスポット)高さが約1mm高くなっています。
これにより、バックスピンの量が増え、コントロールしながらグリーンに止めやすくなっています。球が上がりやすいのは、とてもやさしく感じます。
 
5. 打感が良く、力強い
『Z-STEEL』は高強度のマレージング鋼がフェース面に使われており、高反発になっているだけでなく、弾きの良いしっかりとしたフィーリングが得られます。
 
6. クラブ重量が少し重くなって、FWとして安定して振りやすい
『Z-STEEL』を『W-404』のFWと比べますと、クラブ重量が3~4g重くなっています。しかし、ターゲットゴルファーからしますと適度な重さになって、よりタイミング良くスイングしやすくなっています。
また、FW専用シャフト「SV-3005J」は中から手元にかけてしなりを感じやすく、アマチュアでもダウンスイングでタメを作りやすくなっています。
 

■松尾好員の辛口トーク
『Z-STEEL』もドライバー同様に、基本的に球のつかまり重視で作られていると思います。しかし上級者にとって、5番ウッドや7番ウッドなどの高番手においては、よりつかまりやすい感じがあります。


『スリクソン Z-STEEL』フェアウェイウッド実測値
  #3
S
#5
S
#7
S
W-404
#3 S
W-404
#5 S
W-404
#7 SR
クラブ長さ inch 42.9 42.1 41.5 43.1 42.0 41.5
クラブ重さ g 328.4 336.5 339.2 326.5 332.1 334.7
スイングウエイト   D2.0 D2.0 D2.0 D2.6 D1.3 D1.3
クラブ慣性モーメント gcm2 285万 283万 281万 287万 280万 278万
 
ヘッド重さ g 211.8 211.7 219.2 209.4 218.5 219.9
ヘッド体積 ml 175 151 139 166 149 133
リアルロフト deg 14.5 17.8 20.0 14.8 18.4 20.7
ライ角 deg 57.0 58.5 59.0 57.0 58.5 59.0
フェース角 deg 0.0 OPEN
0.5
HOOK
0.2
OPEN
0.2
OPEN
1.0
HOOK
0.7
フェースプログレッション mm 17.2 18.3 19.0 16.3 17.4 18.5
 
重心距離 mm 30.6 29.1 29.4 33.0 31.9 31.0
重心深度 mm 29.3 28.4 27.8 30.3 29.2 28.9
重心角 deg 19.5 18.0 16.8 21.2 18.6 18.4
フェース高さ mm 35.5 33.3 32.4 32.8 31.7 30.5
スウィートスポット高さ mm 25.2 24.5 23.8 24.1 23.6 23.0
有効打点距離 mm 10.3 8.8 8.6 8.7 8.1 7.5
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,516 2,225 2,167 2,550 2,398 2,194
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,300 1,169 1,102 1,330 1,220 1,149
ネック軸回りモーメント gcm2 4,011 3,477 3,415 4,487 4,128 3,776

※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。