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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.35 『ALL NEW ゼクシオ』フェアウェイウッドを検証する

 ゼクシオのフェアウェイウッドの場合、ドライバーと共に使われるケースが多く、常に高い性能が要求されています。そして初代から3代目までは全てヘッドはチタンで作られており、高性能ではありますが高価格でもありました。
そして、今回の4代目で初めてヘッド本体がマレージング製になり、比較的購入しやすい価格になりましたが、果たして性能はどの様なものでしょうか?
今回もじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1. 複雑な構造からなる高度な設計のヘッド
フェアウェイウッドでは、米国の大手メーカーのものでも比較的簡単な設計で作られているものを多く見かけます。しかし、ALL NEW ゼクシオでは非常に複雑な高度な設計でヘッドが作られています。
まずヘッド本体が高強度のマレージングを用い、チタンよりも比重が重いので周辺重量配分になりやすく、慣性モーメントが従来よりも大きくなっています。
そして、フェース面には反発と打感のバランスの取れた材料SP-700が用いられ、フェースの反発アップに寄与しています。そして、フェース面にチタンを使うことで、フェース部が軽く作れますので重心深度も深くしやすくなっています。
そして、ヘッドのクラウン部(上面のこと)には、薄肉のチタンを取り付け、上面を軽くすることで低重心にしやすくなっています。
また、ソール部後方には比重の重いタングステンニッケル製のウエイトを2ケ所付けられており、フリーウエイト分を使って深重心化を達成しています。
この様に、説明するだけでも長くなる様な複雑かつ高度な設計手法がフェアウェイウッドにも応用されているのはすごいことなのです。
 
2. 反発が高く、高弾道で飛ぶ
フェースの反発性能ではやはりチタンが有利ですが、ヘッド本体のステンレスとフェースのチタンとの接合については現代の技術を持ってしても非常に難しいものとなっています。そして、この困難さを解決した上で、フェース面にはSP-700が用いられ、部分的に1.8ミリと言う超薄肉を達成し、高反発なフェアウェイウッドを実現しています。
そして、フェアウェイウッドとして重心深度が30ミリを優に超えて本当に深くなっていますので、球が上がりやすいのを実感しやすくなっています。そして、その高弾道により、更に大きく飛ぶ弾道を打ちやすくなっています。
 
3. 低重心で悪いライでも打ちやすい
クラウン部をチタンの薄肉(0.5ミリ)にすることで、設計のフリーウエイトを増やし、深・低重心化を達成出来ています。スウィートスポット高さが22ミリ前後と低いですので、芝の薄いところからもスウィートスポットで球をとらえやすく、しかも低スピン弾道を得られやすいので、吹き上がらない強い弾道を打つことが出来ます。
 
4. 構えやすくなったヘッド
従来のゼクシオのフェアウェイウッドではフックフェース度合いが強く、確かに球のつかまりは良いのですが、ともすれば左にフックしやすく、スライサーでも引っ掛かるケースがありました。
しかし、ALL NEW ゼクシオでは、そのフック度合いが減少し、非常に構えやすいヘッドになり、幅広いユーザーに支持されることでしょう。特にロフトの多い#5や#7が引っ掛かりにくくなってピンを狙いやすくなったと思います。
 
5. 軟らかくなって振りやすくなったシャフト
ドライバー同様にシャフトの中間部が軟らかくなってスイング中にしなりを感じて振っていてやさしく感じます。そして、ヘッドの効果とシャフトの効果との相乗効果で高弾道で大きな球を打つことが出来ます。
 

■松尾好員の辛口トーク
今回試打したのは#3、5、7の3本です。
#3は、クラブが長いと言うこともありますが、アドレス時にシャローフェースの影響が出ており、見た目のロフト角が実際よりも小さく見えてしまっています。
このため、心理的に球が上がりにくそうな感じに見えてしまってます。
一方、#5は#3に比べてかなり打ちやすく、安定した弾道と飛距離を得やすくなっており、アベレージゴルファーの方でも使いやすい様に思います。
実感として、#3と#5の差が大きいと言う感じです。
従って私は、アベレージゴルファーの方に対しては#4と#7の2本の組み合わせをお勧めしたいと思います。
理由は、#4と#7には3.5度のロフト差が有るので飛距離の適度な差が付くと言うことと、#4の方が#3より半インチ短くミートしやすいのでミスショットを防げて、しかもショットのアベレージが上がると思うからです。


  W#3
MP400
S
W#3
MP400
R
W#5
MP400
S
W#5
MP400
R
W#7
MP400
S
W#7
MP400
R
『ALL NEW ゼクシオ』フェアウェイウッド実測値
クラブ長さ inch 43.1 43.1 42.0 42.0 41.5 41.5
クラブ重さ g 303.0 298.6 311.9 306.3 314.1 309.3
スイングウエイト   D1.2 D0.0 D0.5 D0.5 D0.8 C9.8
クラブ慣性モーメント gcm2 280万 277万 275万 274万 274万 271万
 
ヘッド重さ g 204.6 --- 215.3 --- 220.5 ---
ヘッド体積 ml 171 --- 147 --- 136 ---
リアルロフト deg 15.0 --- 18.7 --- 21.0 ---
ライ角 deg 57.5 --- 58.5 --- 59.0 ---
フェース角 deg HOOK
2.0
--- HOOK
1.0
--- HOOK
1.8
---
フェースプログレッション mm 18.2 --- 19.5 --- 21.4 ---
 
重心距離 mm 33.8 --- 34.9 --- 35.3 ---
重心深度 mm 32.1 --- 31.9 --- 31.5 ---
重心角 deg 22.6 --- 19.1 --- 17.0 ---
フェース高さ mm 33.9 --- 31.9 --- 31.5 ---
スウィートスポット高さ mm 22.0 --- 21.7 --- 23.0 ---
低重心率 % 64.9 --- 68.0 --- 73.0 ---
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,705 --- 2,527 --- 2,539 ---
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,212 --- 1,087 --- 1,036 ---
ネック軸回りモーメント gcm2 4,596 --- 4,581 --- 4,437 ---
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。