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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.36 『ALL NEW ゼクシオ』アイアンを検証する

 今年発売のALL NEW ゼクシオは、初代ゼクシオから数えて4代目になりました。
ゼクシオアイアンはいつもベストセラーアイアンとして君臨しており、常に他社から注目されています。はたして4代目も進化し続けているのでしょうか?
じっくり検証してみました。(実測データは別表)

1. 反発の究極を得るチタンフェース構造
初代ゼクシオからずっとチタンフェース構造が踏襲され、常に飛びを目標に研究されてきています。そして、4代目のALL NEW ゼクシオではチタンフェースの取り付け構造が変わり、更に反発が高くなっています。
ヘッドを良く見れば分かりますが、フェースのトップラインまでチタンフェース部が伸びており、フェース下部方向にもチタンフェース面積が拡大しています。
そして、更にフェース中央部の肉厚が2.0ミリと薄くなり、とても高反発なアイアンへと進化しています。
1球打った瞬間から感じられる高反発感で、球が突き進んで行く感じがします。
 
2. ロフトを立てなくても飛距離アップ
過去3代のゼクシオアイアンは、モデルチェンジごとにロフトが1度立ってきており、ある程度の飛距離アップは当然のことでした。しかし、今回のALL NEW ゼクシオでは前モデル3代目と同じロフト角24度ですが、飛距離が伸びているのは驚きに値します。これは、反発係数アップと高い打ち出し角度を得るレベルの高い設計技術によるものです。
 
3. 高弾道を得る深い重心深度
ゼクシオアイアンは特に2代目からは深い重心深度が達成されており、高い打ち出し角度を得やすくなっています。そして、既にチタンフェースアイアンとして限界に近い深重心だと思われていましたが、今回のALL NEW ゼクシオでは#5で5.3ミリと更に深度が深くなっており、やさしさは勿論のこと、誰が打っても高弾道を実感出来るものになっています。
 
4. 適切な低重心
アイアンの設計手法の中に低重心化と言うものがあります。確かにアベレージゴルファー向けのアイアンではほぼ100%低重心と言う言葉を目にします。
しかし、低重心は万能ではなく、行き過ぎた低重心はインパクトの時にスウィートスポットよりも上側で当たることになり、かえって球の飛びを悪くしてしまいます。
しかし、ALL NEW ゼクシオでは#5のスウィートスポット高さが20.6ミリとボールの半径約21ミリより僅かに低い絶妙な位置に配置されていますので、フェアウェイからは芯に当たりやすく、ティーアップショットでも上側に外れ過ぎない様に考えられています。
 
5. シャフトが楽しく仕事をしてくれる
MP400のカーボンシャフトはシャフト中央部が軟らかくなり、スイング中にしなりを感じやすく、また、たわんだ分だけインパクトで戻りますので、ヘッド速度も上がりやすくなっています。そして、ヘッドの深・低重心との相乗効果で高弾道を得やすく、キャリーボールを打ちやすくなっています。しかし、単に軟らかいだけでなく先端部と手元はしっかりしていますので、方向性重視であることも伺えます。

一方、ALL NEW ゼクシオ専用の軽量スチールNS950GHシャフトですが、基本的にはMP400カーボンと同じコンセプトで開発されています。
そして、シャフトの中間部が細いので、一般のNS950と全く違う設計であることが外観からも良く分かります。更に、シャフトの中間部の肉厚が薄く作られ、中間部がよりたわみやすくなっていますので、カーボン同様に打ち出し角度が高く、ヘッド速度も上がりやすくなっています。
軽量スチールとしてはよりやさしくスイング出来る様に作られていますので、少し軟らかいフィーリングになるでしょう。

そして、振りやすさを判断するクラブ慣性モーメントから見ますと、カーボンと軽量スチールで約10万gcm2の差が有りますので、対象者のヘッド速度では約6m/sくらいの差が有ると思って良いでしょう。
 

■松尾好員の辛口トーク
ゼクシオアイアンは初代から今回のALL NEW ゼクシオまで4代約8年間、同じ様な外観、同じ様なムードで作られています。それが、信頼感の高いゼクシオと言われればそれまでですが、ちらっと見ただけでは何代目かが分かりにくいのも確かです。ドイツの高級車的イメージと言えるかも知れません。
しかし、今回ALL NEW ゼクシオでは、ドライバーのヘッド形状がかなり変わりましたので、アイアンもイメージチェンジして欲しかったと思うのは私だけでしょうか。


  #5
MP400
S
#7
MP400
R
#5
NS950GH
S
#7
NS950GH
R
『ALL NEW ゼクシオ』アイアン実測値
クラブ長さ inch 38.0 37.0 38.0 37.0
クラブ重さ g 360.6 369.0 401.7 409.4
スイングウエイト   D0.0 C9.2 D1.7 D1.0
クラブ慣性モーメント gcm2 264万 259万 274万 269万
 
ヘッド重さ g --- 236.4 253.1 ---
リアルロフト deg --- 30.0 24.0 ---
ライ角 deg --- 61.4 60.5 ---
フェースプログレッション mm --- 2.0 1.7 ---
ソール角 deg --- -0.7 -1.0 ---
 
重心距離 mm --- 39.8 38.9 ---
重心深度 mm --- 4.4 5.3 ---
重心角 deg --- 16.0 14.4 ---
 
ネック軸回りモーメント gcm2 --- 6,664 6,129 ---
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。