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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.38 『スリクソン ZR-600』アイアンを検証する

 前モデルのI-505は外観的にはやや小ぶりなヘッドで、球を包み込むようなイメージを持たせたもので加瀬秀樹プロ、宮瀬博文プロらが愛用しています。
そして、新しいZR-600は今期初めから星野英正プロ、田島創志プロらが 使用しています(ドライバーと同様に最初は鉛でブランドが隠されていました)が、果たしてその性能はどの様なものでしょうか、じっくり検証してみることにしました。
(実測データは別表)

1. 少しフェースが長くなってよりやさしくなったヘッド
I-404は比較的小ぶりなヘッドでシャープに見える感じがありました。
そしてI-505では、フェース長さが404よりもわずかに長くなり、トップラインが丸くアドレス時に球を包み込む感が強くなりました。
そして、今回のZR-600では、505よりも更にわずかにフェース長さが長くなり、より安心感が高くなりました。そして、トップラインは505よりもストレート感が出ているので、フェースがかぶった感じがしなくなり、スクエアにアドレスしやすくなっています。
また、フェースのトウ側の高さが高くなり、同じライ角度でもアップライに見える様になりましたので、505とは別の意味でアドレス時に球がつかまりやすいイメージが出ています。
 
2. 少しストレート感のあるネックになった
I-505ではセミグース的なネックになっており、球を包み込むイメージと共にアドレスで球位置がスタンスの中寄りの方には構えやすかったと思います。
ZR-600では、I-404と505の中間的なネック形状になっており、505よりもストレートネックでグース感が弱まり、スクエア感が出ています。
 
3. フェース面のプレスミーリングでスピン量が安定
フェース面にミーリング模様がプレスされており、高級感溢れるきれいな仕上りとなっています。この為に、フェース表面の摩擦係数が向上して晴れの日と雨の日でのスピン量の差が小さくなります。特にショートアイアンではスピン性能も向上し、しかも安定した飛びが得られてピンをデッドに狙いやすいでしょう。
 
4. ヘッドの慣性モーメントが大きくなった
フェース長さが少し長くなっていますが、重心距離はほとんど変わっていません。
また、ヘッドの慣性モーメントが大きくなり、I-505に比べて左右では4%アップ、上下では6%も改善されており、芯を外れたミスショットに強くなっています。
外観だけでなく、中身もやさしくなったZR-600です。
 
5. 低いスウィートスポット高さをキープ
通常フェース高さが高くなりますと、スウィートスポットの高さもかなり高くなってしまいますが、ZR-600は低いスウィートスポット高さを維持しています。
この為に、フェアウエイや芝の薄い悪いライからでもフェースの芯で球をとらえやすくなっていますし、ダウンブローに打たずにスウィープに払って打ってもナイスショット出来ます。
 
6. 抜けの良いソール形状
ZR-600では全体に丸みの有るラウンドソールになりました。ツアープロの意見が取り入れられているだけあって、ダフっても上手く抜けて行ってくれます。
また、トウーヒール方向のラウンドも強めですので、あらゆるライに於いてもソール面が地面に沿いやすくなっています。
 
7. 軟らかめのNS950装着で振りやすい
NS950装着モデルは、ヘッド速度が43m/sくらいの方でも振りやすくなっています。プロモデルを使ってみたいが難しいと思われていた方にとって、使いやすいと思います。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. リーディングエッジをストレートに
ソール面のラウンド(丸み)があるので、アドレスした時にトウーヒール方向のリーディングエッジがやや丸くエッジが丸く見えます。人によって好き嫌いはありますが、個人的にはーディングエッジがストレートな方が好みです。
しかし、この丸みが様々なライからの抜けの良さにつながっているのも事実です。
 

  ZR-600#5
DGS200
ZR-600#7
DGS200
I-505#5
DGS200
I-505#7
DGS200
ZR-600アイアン(DGシャフト)実測値
クラブ長さ inch 37.5 36.5 37.5 36.5
クラブ重さ g 429.3 444.1 428.9 441.5
スイングウエイト   D2.0 D2.2 D2.0 D1.8
クラブ慣性モーメント gcm2 275万 273万 276万 273万
 
ヘッド重さ g 256.6 266.5 252.6 266.6
リアルロフト deg 27.0 34.0 27.0 34.0
ライ角 deg 61.0 61.7 61.2 62.0
フェースプログレッション mm 3.8 3.9 3.6 4.3
ソール角 deg 2.0 3.4 2.0 4.5
 
重心距離 mm 34.0 34.0 33.9 33.8
重心深度 mm 3.1 2.6 3.2 2.6
重心角 deg 10.7 12.9 12.2 13.4
スウィートスポット高さ mm 20.1 20.2 19.5 19.8
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,135 2,304 2,044 2,235
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 564 587 531 584
ネック軸回りモーメント gcm2 4,748 5,135 4,525 4,950

  ZR-600#5
NS950-R
ZR-600#7
NS950-R
I-505#5
NS950-S
I-505#7
NS950-S
ZR-600アイアン(NS950シャフト)実測値
クラブ長さ inch 37.75 36.75 37.75 36.75
クラブ重さ g 395.8 410.6 400.0 413.6
スイングウエイト   D1.0 D0.8 D1.2 D1.0
クラブ慣性モーメント gcm2 269万 267万 271万 268万
 
ヘッド重さ g 256.6 266.5 252.6 266.6
リアルロフト deg 27.0 34.0 27.0 34.0
ライ角 deg 61.0 61.7 61.2 62.0
フェースプログレッション mm 3.8 3.9 3.6 4.3
ソール角 deg 2.0 3.4 2.0 4.5
 
重心距離 mm 34.0 34.0 33.9 33.8
重心深度 mm 3.1 2.6 3.2 2.6
重心角 deg 10.7 12.9 12.2 13.4
スウィートスポット高さ mm 20.1 20.2 19.5 19.8
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,135 2,304 2,044 2,235
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 564 587 531 584
ネック軸回りモーメント gcm2 4,748 5,135 4,525 4,950
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。