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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.41 『スリクソン WR』フェアウェイウッドを検証する

『スリクソン』の新製品である『スリクソンWR』ブランドで、フェアウェイウッド(FW)も発売されました。プロや上級者には『スリクソンZ- STEEL』の使用者が多いですが、新しい『WR』のFWの性能は果たしてどのようなものでしょうか?クラブとヘッドをじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1. 球がつかまるフェアウェイウッド
『スリクソンWR』ドライバーの検証では、「球がつかまる」ことがわかりました。その設計コンセプトはFWにも継承されています。
まず、実測でもわかるように、『Z-STEEL』に比べて、ライ角度がかなりアップライの設定になっています。ロフト角が大きいFWではライ角度がアップライになると、アドレス時からフェース面が左を向きやすく球がつかまるようになります。
また、フェース角も『Z-STEEL』よりも若干フックフェースの設定になっているので、もちろん球をつかまえることを助けています。『WR』のFWは、インパクトでフェースが開きやすくて強い球を打てないアベレージゴルファーにとって、とても良いクラブだと思います。
 
2. 楽に球が上がる
『スリクソンWR』のFWは『Z-STEEL』と比べると、ヘッドの重心深度がかなり深く設計されているので、インパクトロフトが大きくなり、球が上がりやすくなっています。
また、フェース高さが低く、つまりシャローフェースになりましたので、見た目のやさしさと共に、ボールの下に潜り込ませるイメージも強くなり、より球が上がりやすくなっています。今までFWでは球が上がりにくかったゴルファーでも楽に球を上げることができ、バンカー越えでもキャリーボールでピンを狙えるようになるでしょう。
 
3. ヘッドの慣性モーメントが大きくなってミスヒットに寛容
『Z-STEEL』はプロ・上級者用として設計されていて、確かに多少シビアな点もあると思います。しかし、『スリクソンWR』のFWは、重心距離が長くなり、重心深度も深くなって、ヘッドの慣性モーメントが左右、上下ともにかなり大きくなりました。これによって、フェースの芯を外れたミスヒットでもヘッドがぶれにくくなり、方向性、飛距離ともに安定感が増したので、打点のばらつくアベレージゴルファーでも十分使えると思います。
 
4. 打感が良く、力強い
『スリクソンWR』のFWには高強度のマレージング鋼がフェース面に使われていて、高反発だけでなく、はじきの良いしっかりとしたフィーリングが得られます。
 
5. クラブ重量が軽くなって振りやすい
『スリクソンWR』のFWは、『Z-STEEL』と比べると、クラブ重量が約13g軽くなっています。また、振りやすさを表すクラブ慣性モーメントは約3万gcm2も小さくなっているので、明らかに振りやすくなりました。シャフトもドライバー同様に軟らかくなり、スイング中にタメを感じて振りやすく、やさしく感じるはずです。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. ソール面が平ら過ぎるかな
今回の『スリクソンWR』全般に言えますが、ソール面が結構平たく設計されています。特にフェアウェイウッドは地面にあるボールを打って行きますので、もう少し丸みのあるラウンドソールのほうが抜けが良かったような気がします。
 

  WR
#3S
WR
#5S
WR
#7S
Z-ST
#3S
Z-ST
#5S
Z-ST
#7S
SRIXON WR FW 実測データ
クラブ長さ inch 43 42 41.5 42.9 42.1 41.5
クラブ重さ g 315.2 321.8 326.9 328.4 336.5 339.2
スイングウエイト   D2.2 D2.0 D2.0 D2.0 D2.0 D2.0
クラブ慣性モーメント gcm2 282万 279万 278万 285万 283万 281万
 
ヘッド重さ g 208.6 214 218 211.8 211.7 219.2
ヘッド体積 ml 174 156 142 175 151 139
リアルロフト deg 16.2 19.7 21 14.5 17.8 20
ライ角 deg 59 60 61 57 58.5 59
フェース角 deg HOOK 1.0 HOOK 0.5 HOOK 0.4 0 OPEN 0.5 HOOK
0.2
フェースプログレッション mm 17.3 19.3 20.6 17.2 18.3 19
 
重心距離 mm 36.4 36.1 35.9 30.6 29.1 29.4
重心深度 mm 32.4 31.5 32 29.3 28.4 27.8
重心角 deg 21.3 18.7 19 19.5 18 16.8
フェース高さ mm 34.2 32.3 31.3 35.5 33.3 32.4
スウィートスポット高さ mm 24 24.3 23.9 25.2 24.5 23.8
有効打点距離 mm 10.2 8 7.4 10.3 8.8 8.6
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,740 2,518 2,386 2,516 2,225 2,167
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,453 1,351 1,263 1,300 1,169 1,102
ネック軸回りモーメント gcm2 5,229 4,836 4,737 4,011 3,477 3,415
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。