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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.42 『ALL NEW ゼクシオ460』ドライバーを検証する

 昨年発売された『ALL NEW ゼクシオ』は、これまでの『ゼクシオ』同様、ベストセラーモデルとして高い地位を築いています。そして今春、さらにその仲間としてSLEルール適合の460ccという大容量の『ALL NEW ゼクシオ460』が新たに加わることになり、すぐに使用したいというファンも多いことでしょう。私としても非常に興味があるモデルですので、じっくり検証してみることにしました。(実測データは別表で、前モデルとの比較付き)

1. 安心感があり、やさしく打てるヘッド
何と言っても『ALL NEW ゼクシオ460』の460cm3という大型ヘッドは、見た目にも大変に大きいので、構えた時の安心感が抜群です。打点のばらつくアベレージゴルファーにとっては、この見た目の安心感はとても重要でしょう。
 
2. ミスショットに強いやさしいヘッド
『ALL NEW ゼクシオ460』は、ヘッドが大きくなったためにヘッドの慣性モーメントが大きくなり、フェースの芯を外れたミスヒットにも強くなっています。またネック軸回りの慣性モーメントはヘッドの返りやすさを表すだけでなく、ミスショットの場合にヘッドがシャフト軸回りに回転しにくいことも表していて、打点がフェースのトウ側やヒール側に大きく外れた場合でも、ヘッドがしっかり受け止めてくれるので、いつもよりも思い切ってスイングすることができます。しかも、きめ細かいフェース面のラウンド(丸み)により、ミスヒット時の方向性安定性をさらに高めてくれます。
 
3. 中身の濃い重心設計
『ALL NEW ゼクシオ460』はヘッドのクラウン(上面)部に0.5mmという薄肉のチタン板材が使われているため、ヘッドの上部が軽量化されています。さらにフェース面に少し比重の軽い特殊なチタン合金を使うことで、フェース面も軽量化されています。これらから得られた余裕の重量を深・低重心化に使うことによって、460cm3の大容量ヘッドながら、重心深度は深く、スイートスポット高さも低くできています。
 
4. 球が上がりやすく、高弾道の大きな球が打てる
『ALL NEW ゼクシオ』の標準モデルである432cm3の同じロフトと比較しても、『ALL NEW ゼクシオ460』のほうが球を楽に上げやすくなっているため、大きな弾道の球が打ちやすくなっています。
 
5. 心地良いインパクトサウンド
さすがにゼクシオサウンドです。『ALL NEW ゼクシオ460』は大容量のSLE適合モデルでありながら、心地良い高めのインパクトサウンドですので、打っていて爽快感があります。
 
6. 低めのティアップでもレベルにスイングできる
『ALL NEW ゼクシオ』の標準モデルである432cm3と比較した場合、『ALL NEW ゼクシオ460』のフェースの高さはほとんど変わりません。ソール面からのスイートスポット高さが約35mmと低いため、いわゆるロングティを使ってあおるような打ち方をする必要がありません。低めのティアップでレベルにスイングしても、球が吹き上がらないため、スイングも良くなります。
 
7. 球をつかまえるシャフト
『ALL NEW ゼクシオ460』はヘッドが大きくなり、一見球のつかまりが悪いかのように感じてしまいますが、「MP400」のシャフトは手元側と先側が結構しっかりしているので振り遅れにくく、インパクトで球をつかまえることができますので、安心してしっかりスイングできます。
 

■松尾好員の辛口トーク
1. ロフト9度と10度の選択は慎重に
『ALL NEW ゼクシオ460』は打ちやすいため、ロフトの立った9度でも球をつかまえることができますが、ヘッドスピードの速くないゴルファーで、9度を使用したい方の中には、ややつかまりにくく感じる方がいらっしゃるかもしれません。その際は10度をお試しになることをおすすめします。
 

  460
9度-S
MP400
460
10度-R
MP400
432
9度-S
MP400
432
10度-R
MP400
ALL NEW ゼクシオ460 ドライバー実測データ
クラブ長さ inch 45.1 45.1 45.0 45.0
クラブ重さ g 294.3 288.7 293.6 291.8
スイングウエイト   D1.5 D1.2 D1.7 D1.8
クラブ慣性モーメント gcm2 288万 285万 286万 286万
 
ヘッド重さ g 194.5 195.9 --- 193.9
リアルロフト deg 10.6 11.5 --- 10.4
ライ角 deg 57.5 57.5 --- 58.0
フェース角 deg HOOK
1.0
HOOK
1.5
--- HOOK
1.0
フェースプログレッション mm 19.0 19.8 --- 20.2
 
重心距離 mm 41.6 40.0 --- 40.5
重心深度 mm 35.6 35.4 --- 36.0
重心角 deg 20.6 20.4 --- 20.5
フェース高さ mm 56.5 56.5 --- 56.3
スウィートスポット高さ mm 35.6 35.2 --- 34.2
低重心率 63.0 62.3 --- 60.7
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 4,132 4,106 --- 3,925
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 2,506 2,493 --- 2,442
ネック軸回りモーメント gcm2 7,246 6,971 --- 6,893
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。