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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.43 『NEW ゼクシオ プライム』ドライバーを検証する

 ゼクシオ史上4代目となる『ALL NEW ゼクシオ』が昨春登場し、ベストセラーブランドとして高い人気を維持しています。そして今春、その上級モデルとなる『NEW ゼクシオ プライム』が登場しました。
 『プライム』としては初のSLE適合モデルとなりましたが、果たしてその性能はどのように進化しているのでしょうか? また、標準モデルの『ゼクシオ』とはどう違うのでしょうか? 個人的にも非常に興味がありますので、じっくり検証してみることにしました。(実測データは別表で、前モデルとの比較付き)

1. 球が飛ぶ!
 今までの『プライム』は、高い反発性能を持ったいわゆる高反発ヘッドであることがひとつの売りであったと思われますが、今回からはそういうわけにはいきません。SLE適合という新たな条件の中で、どのように球を遠くに飛ばすのかと私も心配になってしまいます。
 ところが、今回のニュー『プライム』を実際に試打すると、ぐんぐん球が飛んで行くではありませんか。10.5度モデルを打っても球が吹き上がらず、前へ前へと飛んで行きます。もしかして、高反発? と思えるような勢いのある打球で大きく飛びました。
 
2. 打ち出し角が高く、しかもバックスピンが少ない
 ヘッドを調べてみると、今回のニュー『プライム』は前モデルよりもかなり低重心になっていることがわかりました。体積が大きくなったのに、スイートスポット高さを低くするというのは簡単なことではありません。
 これはヘッドのクラウン部に使われている、最薄部0.35mmという驚異的な薄肉チタンプレートが大きく低重心化に寄与しており、どのヘッドスピードの人が打っても従来モデルよりも打ち出し角が高くなり、バックスピンが減って飛距離が伸びると言えそうです。
 また、フェースには新開発「Super-TIX® 51AF for XXIO」の軽比重チタンを使用したことによって、スイートエリアが広くなり、平均飛距離、方向性ともアップしています。
 
3. ヘッドの慣性モーメントが大きくなって安心感がある
 今回のニュー『プライム』は、前モデルよりも体積が約30cm3大きくなって、見た目にも安心感があります。そしてこのヘッドが大きくなったことから、実際にヘッドの慣性モーメントも大きくなっていますので、フェースの芯を外したミスヒットでもヘッドがブレにくく、飛距離や方向性の安定に優れています。
 
4. ヘッドの操作性が良く、球がつかまる
 通常ヘッド体積が大きくなりますと、ネック軸回りの慣性モーメントも大きくなってヘッドの操作性が悪くなります。しかし、今回のニュー『プライム』ではネック軸回りの慣性モーメントの大きさが前モデルと変わらないか、むしろ小さくなっていますので、大容量ヘッドでも操作性が良いと言えます。
 また、フックフェースであることも相まって、球をつかまえやすくなっています。
 
5. 軟らかいシャフトでヘッドスピードアップ
 今回のニュー『プライム』に装着されているシャフトは、前モデルよりもさらに軟らかくなり、ヘッドスピードが30m/s台のゴルファーにとって、より振りやすくなっています。ダウンスイングで従来よりもシャフトをしならすことができ、その結果インパクトではシャフトが速く戻ってきてヘッドスピードが上がるようになっています。
 
6. 44.75インチと46インチ、あなたはどちらにしますか?
 今回のニュー『プライム』は、クラブ長さが平均飛距離とミート率を大事にする44.75インチと、大きな飛距離を望む46インチの2種類があります。
 実際打ってみましたが、双方に魅力があります。44.75インチは、見た目にもやや短く感じますが、ヘッド重量は重めでパワーがありますし、何よりクラブ慣性モーメントが小さく振りやすい。1番ホールからナイスショットが出そうです。
 一方の46インチは、クラブが長い分ヘッドスピードは上がりやすい。上手くミートできれば最長飛距離を出せそうです。クラブ慣性モーメントがかなり大きくなっているので、ゆったりと振る人によく合うでしょう。
 私の個人的な意見ですが、ニュー『プライム』は上質な低重心ヘッドですので、上手くフェース面に球を当てさえすれば、勝手に高く大きく飛んで行きそうです。ヘッドスピードが30m/s前半のゴルファーならば、球がドロップしにくいロフトが11.5度のモデルをおすすめします。
 

■松尾好員の辛口トーク
 何か言いたいのですが、ドライバーに関しては何もありません。最初に話をしましたが、ヘッド体積を大きくしながら、同時に低重心を達成して、高打ち出し、低スピンを得るのはやさしいことではありません。個人的に、通常はメーカーが説明する飛距離マップ(何ヤード伸びるというもの)はまったく信用していませんが、今回は本当かも、と感じています。正直、今年のベストデザインのひとつと言えると思います。

  #1
10.5度
SR
#1
11.5度
R
前モデル
10.5度
SR
前モデル
11.5度
R
NEW ゼクシオ プライム ドライバー実測データ
クラブ長さ inch 44.8 46.0 44.5 45.5
クラブ重さ g 286.1 283.2 285.6 284.1
スイングウエイト   C9.2 D1.4 C8.0 D0.0
クラブ慣性モーメント gcm2 279万 288万 276万 284万
 
ヘッド重さ g 196.1 191.3 195.8 193.9
ライ角 deg 57.5 57.5 57.5 57.5
フェース角 deg HOOK 2.0 HOOK 2.5 HOOK 1.0 HOOK 1.0
フェースプログレッション mm 19.6 20.2 20.7 21.4
 
重心距離 mm 39.9 40.2 39.3 39.9
重心深度 mm 36.0 35.4 36.8 37.0
重心角 deg 22.2 20.3 21.1 20.4
フェース高さ mm 57.8 57.9 58.8 58.8
スウィートスポット高さ mm 35.3 36.0 36.6 37.8
有効打点距離 mm 22.5 21.9 22.2 21.0
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 4,059 3,926 3,952 3,899
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 2,528 2,414 2,439 2,420
ネック軸回りモーメント gcm2 6,816 6,590 6,826 6,834
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。