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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.44 『NEWゼクシオ プライム』フェアウェイウッドを検証する

前回検証して、『NEWゼクシオ プライム』のドライバーは、飛び系ドライバーということがよくわかりました。さて、『NEWゼクシオ プライム』のフェアウェイウッドはどんなクラブでしょうか?
前モデルはヘッド本体がチタンでクラウンがカーボンでしたが、今回のニューモデルはマレージング(高強度ステンレス)製の本体に変わり、フェース面とクラウン部にチタンが使われています。販売価格も安くなりましたが、果たしてその性能はどうでしょうか? ドライバー同様、じっくり検証してみることにしました。(実測データは別表で、前モデルとの比較付き)

1. ドライバー同様に飛ぶ!
今回のニュー『プライム』のフェアウェイウッドですが、まず構えてわかることは、シャローフェース設計であるということです。そのためにヘッドをボールの下にもぐり込ませるイメージが出ており、特にフェアウェイから打ちやすくなっています。そして、反発の良いフェースと相まって、初速の速い強い球が出ます。
 
2. スイートスポット高さが適正な低重心に
前モデルはスイートスポット高さが21mm台と、FWとしては非常に低いものでした。これは一見良さそうですが、ヘッドスピードが30m/s台の方ですと、時には球がドロップしやすくなっていました。
今回のニュー『プライム』は、スイートスポット高さが22mm台となり、安定した大きな飛距離が望めるようになったと思います。FWでスイートスポット高さが22mm台というのは、他社と比べてもかなりの低重心と言え、芝の薄い悪いライからでもフェースの芯で打ちやすく、飛距離も出しやすくなっています。
 
3. ヘッドの慣性モーメントが非常に大きくなり、やさしくなった
今回のニュー『プライム』は、ヘッド体積は変わっていませんが、高レベルの設計技術により、ヘッドの慣性モーメントが上下、左右方向ともに飛躍的に大きくなりました。これにより、フェースの芯を外れたミスショットでも飛距離、方向性ともに良くなり、攻めるFWとして使っていけます。
 
4. ロフトバリエーションが豊富で、特に9番ウッドがやさしい
一般的にシニアゴルファーのフェアウェイウッドのセット組としては、3番、5番、7番なのでしょうが、今回のニュー『プライム』では9番と11番も用意されていて、私は9番ウッドを試打することができ、その良さに驚きました。
例えば、ドライバーの飛距離を180ヤードくらいで打つ状態で、FWを試打しますと、5番ウッドで150~160ヤード、9番ウッドで約140ヤードくらいになって、ちょうど良さそうなのです。また、今回のニュー『プライム』は9番と11番がユーティリティ的な感覚になっていて打ちやすく感じます。
私の個人的な意見ですが、ドライバーの飛距離が170~180ヤードくらいの方ですと、FWは5番と9番の組み合わせが良さそうに思いました。
 

■松尾好員の辛口トーク
今回のニュー『プライム』のように、シャローフェースのFWですと、アドレス時に3番ウッドはドライバーよりもロフトが少なく見えてしまい、難しく感じてしまうかもしれません。しかし、実際にはボールが上がりやすいやさしいフェアウェイウッドに仕上がっていますので、フェアウェイからのショットの強い味方になるのではないでしょうか。

  #3
15度
R
#5
18度
R
#9
23度
R
前モデル
#3
15度
SR
前モデル
#5
18度
SR
NEW ゼクシオ プライム FWウッドの実測データ
クラブ長さ inch 43.0 42.0 40.4 43.0 42.0
クラブ重さ g 293.7 301.7 313.2 292.7 300.3
スイングウエイト   C8.3 C8.2 C8.3 C8.2 C8.0
クラブ慣性
モーメント
gcm2 273万 270万 265万 273万 270万
 
ヘッド重さ g 203.7 210.5 222.7 203.4 212.8
ヘッド体積 ml 167 136 103 165 137
ライ角 deg 57.0 58.5 59.5 57.5 58.5
フェース角 deg HOOK
0.4
HOOK
0.8
HOOK
1.5
HOOK
0.5
HOOK
0.5
フェース
プログレッション
mm 18.1 18.8 16.8 18.8 19.1
 
重心距離 mm 34.4 32.8 33.1 33.9 33.8
重心深度 mm 32.1 30.9 27.3 36.2 34.8
重心角 deg 20.6 20.5 17.7 26.0 24.1
フェース高さ mm 32.1 30.1 29.1 31.7 29.2
スウィートスポット
高さ
mm 22.8 22.1 22.4 21.5 21.8
有効打点距離 mm 9.3 8.0 6.7 10.2 7.4
 
ヘッド左右慣性
モーメント
gcm2 2,605 2,350 1,973 2,192 1,958
ヘッド上下慣性
モーメント
gcm2 1,229 1,025 742 1,087 963
ネック軸回り
モーメント
gcm2 4,447 3,936 3,660 4,229 4,068
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。