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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.45 『NEWゼクシオ プライム』アイアンを検証する

前回までの検証で、『NEWゼクシオ プライム』のドライバーとフェアウェイウッドが飛び系のクラブであることがはっきりわかりました。では『ALL NEWゼクシオプライム』アイアンはどうでしょうか? 見た目の顔の雰囲気はとても良いと思います。
機能をじっくり検証してみることにします。(実測データは別表、前モデルと比較付き)

1. アイアンもブッ飛びです
ニュー『プライム』アイアンを試打してみると、まず打球がとても強く、一般のチタンフェースアイアンと初速の違い、つまりこのアイアンの高い反発性能を感じることができます。
またSRIスポーツのアイアンの中で、最もストロングロフト設定(5番で23度、PWで43度)になっていますので、さらに飛距離が出やすくなっており、人生最大飛距離を得られると言っても過言ではないかもしれません。
 
2. ヘッド形状が良く構えやすい
ニュー『プライム』アイアンを持って最初に感じることは、ヘッド形状が良くなり、構えやすくなったことです。前モデルでは、ネック周辺がつまった感じがしたのと、グースネック感が強過ぎ、標準の『ゼクシオ』のほうが構えやすく感じたものでした。また、ソール角(バンス角)が極端なスクープソールであったため、払い打ち専用モデルのようになっており、ダウンブローに打てるベテラン上級者にはとても使いにくいものでした。
しかし、どうしたことでしょう!今回のニュー『プライム』はとても良くなっているではありませんか。個人的には、

1)フェースが長過ぎない
2)ライ角もアップライでちょうど良い
3)トップブレードが厚く力強さがある
4)ソール角もわずかなスクープ
5)スイートスポット高さが低いこと

など、正直プライムが好きになりました。
 
3. スイートスポット高さが低くなって球が上がりやすくなった
これまで過去の『プライム』は、常に重心深度の深い設計になっていましたので、ティアップして打つ場合はまったく問題がなかったのですが、フェアウェイから打つときにはスイートスポット高さが高かったために、球が上がりにくい感じがありました。
しかし、今回のニュー『プライム』はスイートスポット高さが21.0mmと低くなっていますので、フェアウェイからでもフェースの芯に当たりやすく、さらに強い球を打てるようになりました。
 
4. ヘッドの慣性モーメントが大きくなってやさしくなった
前モデルと比べて今回のニュー『プライム』アイアンは、ヘッドの慣性モーメント(左右)が約4%大きくなり、またネック軸回りの慣性モーメントも大きくなって、アベレージゴルファーに多いフェースのトウ寄りに外れたミスショットにも強くなりました。
 
5. クラブ長さが少し長くなって、クラブ重量が軽くなった
前モデルでは、5番アイアンが37.5インチと短めの設定にして振りやすさを重視していましたが、今回のニュー『プライム』は5番で37.75インチと少し長くなり、その分、ヘッド重量が軽くなり、その結果クラブ重量が約4g軽くなっています。
 
6. シャフトが軟らかくて楽
ニュー『プライム』は、ドライバーやフェアウェイ同様に、アイアンもダウンスイングでしなりを感じながら振りやすいシャフトが装着されていて、ヘッドスピードが上がりそうな感じです。
 

■松尾好員の辛口トーク

ウェッジを1本増やして、ロフト角ピッチを適正にして、ショートゲームが上手く行くようにして欲しい

ニュー『プライム』アイアンは、セット販売では5番からPWまでの6本セットですが、単品としてセットに合う4番アイアンのほかに、ウェッジはAWとSWが用意されています。
ニュー『プライム』アイアンはストロングロフト設定のために、PWが43度になっています。しかし次のAWとはロフト間隔が6度もあり、さらにAWからSWとのロフト間隔は7度もあるので、番手間の飛距離差が大きくなり過ぎています。
こだわりゴルファーのために、番手を埋めるウェッジが追加されれば、さらに良いのではないかと感じました。

ニュープライムアイアン実測値
  #5 SR #7 R 前モデル
#5 R
前モデル
#7 R
クラブ長さ inch 37.75 36.75 37.5 36.5
クラブ重さ g 354.4 362.1 354.6 365.2
スイングウエイト   C8.4 C8.4 C8.0 C8.2
クラブ慣性モーメント gcm2 259万 256万 257万 255万
 
ヘッド重さ g 250.1 264.1 256 268.4
リアルロフト deg 22.7 29.6 22.7 28.8
ライ角 deg 61.3 62 60 61.2
フェースプログレッション mm 0.8 1.5 1.5 1.8
ソール角 deg -1.8 -1.2 -4.1 -4.2
 
重心距離 mm 39.5 38.7 38.6 38.1
重心深度 mm 5.1 4.9 5.4 5.5
重心角 deg 15 16.6 14.5 17.2
スウィートスポット高さ mm 21 21.1 21.9 21.5
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,596 2,617 2,497 2,512
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 634 641 659 688
ネック軸回りモーメント gcm2 6,313 6,460 6,161 6,431
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。