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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.46 『ハイブリッドEZ』ドライバーを検証する

 『ハイブリッド』は、初心者やアベレージゴルファーの方にとって安心して使えるクラブのブランドとして定着しており、従来からコストパフォーマンスに優れたモデルです。そして、早いもので、今回の『ハイブリッドEZ』で5代目となりました。
 この『ハイブリッドEZ』ドライバーは、『ハイブリッド』ブランドとして初めてSLE適合となりましたが、性能は果たしてどのようなものでしょうか?
 まずは、このドライバーからじっくり検証してみることにしました。
(実測データは別表で、前モデルとの比較付き)

1. 簡単、上手く当たる!
 SRIスポーツにはトップモデルの『ゼクシオ』やアスリートモデルのスリクソンというブランドがありますので、価格の安いハイブリッドはそれなりの商品では?と先入観を持ってしまう方も多いのではないでしょうか。
 ところが、私が試打したところではまったくそうした感じはありません。ぜひ一度打ってみることをおすすめします。
 ヘッドは大きいのにクラブ長さが短めなので、ミート率がすこぶる良いのです。しかもシャフトが軟らかい中でも結構しっかりしているので、インパクトでのばらつきが少ない。その結果、上手く打ててショットアベレージが上がります。
 
2. ヘッドが大きくなった
 前モデルの『ハイブリッド アドフォース』は、ヘッドの体積が432cm3とボールのディンプル数のような数字でしたが、今回の『EZ』は、実測で460cm3と大きくなりました。
 ヘッドが大きくなった分、確かに重心距離はやや長くなりますが、ヘッドの慣性モーメント(左右方向)が大きくなり、トウヒール方向への打点のばらつきに強くなって、練習不足のアベレージゴルファーでも安心して打てます。
 ヘッドやフェースの形からもわかりますが、特にフェースのトウ寄りに外れたミスショットには強いです。
 
3. ミート率が良い
 私が評価する点はもうひとつあります。それは、クラブ長さ設定です。
 体積が大きくなりますと、クラブメーカーはついクラブを長くしたがります。
 しかし、『EZ』はクラブ長さを44.5インチと短かめに設定し、ラウンド不足のアベレージゴルファーや初心者の方でも上手く当たるように考えられています。
 
4. 楽に球が上がる
 ヘッドのデザインとしてトウ側のボリュームが大きく、構えた時にライ角が数値よりもアップライに見えるように設計されています。これにより、球をつかまえやすい感じが良く出ていますし、フェース角もフックフェースの設定で安心感があります。
 そして、今回の『EZ』では、フェースの高さを低く(シャローフェース)することで、構えた時にやさしく感じられ、しかも球が上がりやすくなっています。
 
   
5. 球がフェアウェイに戻って来やすいフェースの設計
 前モデルの『アドフォース』でのフェースのバルジ(フェース面のトウーヒール方向での丸み)とロール(フェース面の上下方向での丸み)をさらに見直して、アベレージゴルファーのミスショット(フェースの両側に外れたり、上下にばらつくミスショット)のときにも、より安定した方向性と飛距離が維持されています。
 
6. 全体に軟らかくなって振りやすくなったシャフト
 シャフトのフレックスはSとRの2種類のため、シンプルであり明解です。
 従来よりも中間部のしなり感が出ていますので、シャフトのしなりを感じながらスイングすることができます。練習や実際のプレーが少ない方でも、やさしく振れるシャフト設定です。
 
7. 価格が安い!
 前モデルの『アドフォース』は52,500円(税込)でしたが、今回の『EZ』は42,000円(税込)と大変リーズナブルな価格設定になっています。安過ぎませんか、と言いたくなるほどです。企業努力があったことが当然わかりますが、それよりも多くの方にゴルフを楽しんでもらおうとする気持ちが伝わってきます。
 

■松尾好員の辛口トーク
ずばり、42,000円(税込)という価格からしますと、非常に良くできていると思います。ゴルフ以外にも趣味が多く、比較的ゴルフの回数が少ないゴルファーや、これからゴルフを始めるシニア初心者の方にとって『EZ』は大変におすすめです。
 ただひとつ、Rシャフトの重量はそのままでOKですが、SシャフトをSR表示にして、Sシャフトとして60グラムくらいの重量のものを新たに加えると20~30才のヤング初心者にも強くすすめることができると思いました。

HI-BRID EZ ドライバーの実測データ
  10.5度
S
11.5度
R
前モデル
10度 S
前モデル
11度 R
クラブ長さ inch 44.6 44.6 44.5 44.5
クラブ重さ g 294.0 291.1 298.0 294.8
スイングウエイト   D1.0 D0.0 D2.3 D0.8
クラブ慣性モーメント gcm2 283万 281万 287万 284万
 
ヘッド重さ g 196.5 195.3 196.9 196.1
ヘッド体積 ml 460 460 431 434
ライ角 deg 57.0 57.0 57.5 58.0
フェース角 deg HOOK 1.8 HOOK 2.0 HOOK 1.0 HOOK 1.0
フェースプログレッション mm 19.9 20.4 18.0 18.5
 
重心距離 mm 41.9 42.3 41.0 40.2
重心深度 mm 34.1 35.2 36.4 36.6
重心角 deg 18.3 18.0 23.2 24.0
フェース高さ mm 54.0 53.9 56.1 55.8
スウィートスポット高さ mm 34.8 34.8 35.0 35.8
有効打点距離 mm 19.2 19.1 21.1 20.0
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 3,994 4,029 3,985 3,983
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 2,447 2,412 2,510 2,552
ネック軸回りモーメント gcm2 7,164 7,210 7,471 7,419
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。