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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.47 『ハイブリッドEZ』フェアウェイウッドを検証する

 前回の検証から、『ハイブリッドEZ』のドライバーはアベレージゴルファーの方がやさしく使えて、しかも飛距離も出ることが良くわかりました。では、フェアウェイウッド(FW)はドライバーと比べてどうなのでしょうか?じっくり検証してみることにしました。
(実測データは別表で、前モデルとの比較付き)

1. 上手く当たるし、飛ぶぞ!
 『ハイブリッドEZ』のFWは、まずクラブを構えた時に、ヘッドが大きく見えて、いかにも上手く打てるような気がします。理由は、クラブ長さが前モデルの『ハイブリッド アドフォース』よりも1/4インチ短くなっていることです。このことによって、同じ体積のヘッドでも大きく見えますし、実際にボールを芯でとらえやすくなっています。
 そして、スイートスポット高さも、『EZ』は『アドフォース』よりかなり低くなっているため、バックスピンが少なくなって強い球を打つことができ、飛距離も出ます。
 
2. 球がつかまるぞ!
 『EZ』のFWは、ヘッドのフェースプログレッションが小さくなり(いわゆるアゴが出ていないこと)、球をつかまえやすくなっています。
 そして、前モデルの『アドフォース』よりも重心距離が短くなり、ネック軸回りの慣性モーメントも小さくなって、ヘッドの操作性が良くなっています。
 さらに、軽いフックフェースの設定ですので、インパクトでフェースを開いてしまいやすいアベレージゴルファーでも、しっかり球をつかまえることができます。
 
3. ターゲットに対して構えやすくなった
 前モデルの『アドフォース』FWは、強いフックフェース設定で、球がつかまり過ぎる可能性がありましたし、スクエア感がありませんでした。
 しかし、今回の『EZ』ではフックフェースの度合いが弱められたので、随分と構えやすくなりました。明らかにターゲットに対してアドレスしやすくなりました。
 

■松尾好員の辛口トーク
 正直に言って、フェース角がスクエアなので、上級者でも使えるモデルだと思います。結構、低重心にできていますので、球は強く飛距離も出ます。性能から見て、価格が26,250円(税込)というは信じられません。
 ただ、一言言わせていただくと、ドライバーのクラブ重量が約295gで、その次のFWの3番が約300gしかないというのはやや軽すぎないでしょうか。FWでクラブが軽いと、ボールの上を叩くいわゆるチョロをしやすいということもあるので、FW3番で305gくらいにしてもらえると、さらにミスショットが減ると思います。
 また、シャフトに関して言えば、FWもドライバーと同様に、Sフレックスは60g以上にしてもらうと、よりヤング初心者にすすめられると思います。

HI-BRID EZ FWの実測データ
  #3
15度 R
#5
19度 S
前モデル#3
15度 S
前モデル#5
19度 R
クラブ長さ inch 42.75 41.75 43.0 42.25
クラブ重さ g 299.5 306.2 302.7 303.6
スイングウエイト   D0.2 C9.8 D1.0 C9.8
クラブ慣性モーメント gcm2 276万 272万 279万 274万
 
ヘッド重さ g 204.3 214.4 206.1 215.4
ヘッド体積 ml 165 142 172 150
リアルロフト deg 15.5 19 15 20
ライ角 deg 57.0 58.0 57.0 57.5
フェース角 deg HOOK 1.0 HOOK 0.9 HOOK 1.5 HOOK 1.5
フェースプログレッション mm 17.7 18.3 19.0 20.2
 
重心距離 mm 35.9 35.2 36.6 37.3
重心深度 mm 31.4 31.6 32.5 33.0
重心角 deg 19.8 18.9 20.0 19.7
フェース高さ mm 34.0 31.7 33.2 32.5
スウィートスポット高さ mm 23.5 23.0 24.2 25.2
有効打点距離 mm 10.5 8.7 9.0 7.3
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,595 2,472 2,850 2,754
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,323 1,215 1,382 1,252
ネック軸回りモーメント gcm2 4,686 4,579 5,116 5,101
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。