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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.48 『ハイブリッドEZ』アイアンを検証する

 『ハイブリッド』のアイアンは、これまで初心者やプレー回数の少ないアベレージゴルファーの打点をよく研究してきましたが、今回で5代目となる『ハイブリッドEZ』も同様です。これまで検証したドライバーとフェアウェイウッドはなかなか良い出来でしたが、果たしてアイアンの性能はどのようなものでしょうか。じっくり検証してみることにしました。
(実測データは別表、前モデルと比較付き)

1. とにかくやさしいアイアン
 『ハイブリッドEZ』アイアンは、まず構えた時に「ヘッドが大きい!」と感じます。前モデルの『アドフォース』と同じ大きさで、『ゼクシオ』などSRIスポーツのアイアンの中でも最大のヘッドです。
 ドライバー同様、初心者にとっては間違いなくヘッドの大きいほうが安心感もあり、その結果、実際も上手く打てるものです。
 
2. 重心深度は深いし低重心、しかも反発が良い
 『EZ』アイアンは、5番で重心深度が実測で4.8mmもあり、スイートスポット高さは20.8mmと十分に低くなっています。
 正直に言って、1本14,700円(税込)のカーボンシャフト付きアイアンとしては良すぎるスペックになっていて、安心して使うことができます。
 また、前モデルの『アドフォース』と比べて、フェースの肉厚も薄くなって反発が上がっているために、打感も気持ちがいいです。
 
3. ソールの抜けがいい
 『EZ』アイアンは、前モデルの『アドフォース』と比べて、ロフト角、ライ角、フェースプログレッション、クラブ長さなどの基本スペックはまったく変わっていません。
 しかし、ひとつ大きく変化しているところを見つけました。
 それは、ソール角(バンス角)です。『アドフォース』ではスクープ角が強く、ダウンブローに打てる方にとってはソールの抜けが悪いのではないかと思っていました。しかし、今回の『EZ』ではややバウンスソールに改善され、『ハイブリッド』アイアン本来のソールの抜けが期待されます。
 
4. 初・中級者に多い、フェースのトウ寄りショットに強い
 一般に初心者やアベレージゴルファーでアイアンが上手く打てない方は、インパクトでフェースが開いてしまい、しかもフェースのトウ寄りでインパクトをしています。
 その結果、インパクトで当たり負けして、弱々しい球になりやすいのです。
 しかし、『EZ』アイアンはフェースが長く、重心距離も長いので、フェース面のトウ寄りショットに強く、これらのミスヒットに強くなっています。
 
5. シャフトは軟らかくて振りやすい
 『EZ』アイアンのシャフトは、Sはしっかり感があり、Rはしなりを感じて振りやすい設定になっています。各々ターゲットゴルファーがスイングしやすいものになっています。
 

■松尾好員の辛口トーク
 プロや上級者はヘッドの操作性やラフからの抜け、そして打感などを強調しますが、まだ上手くアイアンを打てない初・中級者にとっては、やはりヘッドが大きいほうがやさしいアイアンと言えます。つまりそうしたゴルファーに、『ハイブリッドEZ』はすすめやすいアイアンです。
 そこで、私はヤング初心者、つまり学生や新社会人の方で、これからゴルフを始める方にも『EZ』を使って欲しいと思うのです。しかし残念ながら、それにはこの『EZ』は軽すぎると思います。
 ずばり、『EZ』アイアンには、スチールシャフト仕様が標準で欲しいです。

HI-BRID EZ アイアン実測値
  #5-S #7-R 前モデル
#5-R
前モデル
#7-R
クラブ長さ inch 38.0 37.0 38.0 37.0
クラブ重さ g 370.3 376.9 364.5 375.6
スイングウエイト   D0.3 C9.7 C9.0 C9.0
クラブ慣性モーメント gcm2 267万 262万 264万 261万
 
ヘッド重さ g 253.6 264.2 251.6 266.3
リアルロフト deg 25.0 31.0 24.5 31.0
ライ角 deg 60.5 61.0 61.0 60.5
フェースプログレッション mm 2.3 3.3 2.7 3.2
フェース角 deg 1.7 -0.3 -2.7 -2.5
 
重心距離 mm 40.2 38.7 40.9 38.6
重心深度 mm 4.8 4.4 4.6 4.4
重心角 deg 12.6 14.7 12.9 14.5
スウィートスポット高さ mm 20.8 20.6 21.0 20.6
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,604 2,710 2,607 2,690
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 588 665 597 670
ネック軸回りモーメント gcm2 6,427 6,294 6,534 6,371
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。