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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.53 『The ゼクシオ』フェアウェイウッドと ユーティリティを検証する

 『Theゼクシオ』は、フェアウェイウッドもドライバー同様に高い設計技術で作られています。初代から3代目まではヘッドすべてがチタン製で、前4代目で初めてヘッド本体がマレージングでフェースがチタン製という構造になりました。今回『Theゼクシオ』は前4代目と同様の構造になっています。
 これまでの『ゼクシオ』は、どれもが打ちやすいフェアウェイウッドとユーティリティでしたが、果たして『Theゼクシオ』の性能はどのようなものでしょうか? 今回もじっくり検証してみることにしました。
(実測データは別表)

『Theゼクシオ』フェアウェイウッドを検証する
1. 高度な設計のヘッド
 今回の『Theゼクシオ』は、フェアウェイウッドでも高度な設計技術を見ることができます。低くて深い重心位置、大きな慣性モーメントの達成。言うのは簡単ですが、実際に作るのはたやすいことではありません。
 まずヘッド本体にマレージングを用いたことで、この素材がチタンよりも比重が重いために周辺重量配分となり、ヘッドの慣性モーメントが大きくなっています。また、フェース面にはSP-700チタン合金が用いられ、その結果、フェース面が軽くなったために重心深度が深くなりました。
 さらにヘッドのクラウン部には0.4mmという極薄肉のチタンが取り付けられ、ヘッドの上面を軽くしたことで低重心になっています。
 
2. 球がつかまりやすくなった
 『Theゼクシオ』のフェアウェイウッドは、ヘッド設計でかなり進化したところがあります。それは、従来よりも「球のつかまり」を意識しているということです。
 まず、フェースプログレション(FP値)が前モデルよりも劇的に小さくなり、ネックの左側とフェース面が一直線につながって見えます。FP値が小さいということは、アイアンで言うグースネック効果がありますので、球はつかまりやすくなります。また、ライ角度が前モデルよりもアップライになっているため、球がつかまりやすくなっています。
 
3. スクエアフェースで構えやすく、UTやアイアンにつながる
 従来の『ゼクシオ』のフェアウェイウッドに比べて、『Theゼクシオ』では明らかにスクエアフェースに近いフェース角になりました。スクエアフェースに近くなっていても前項のように十分な対策が講じられているので、球がしっかりとつかまります。
 フェアウェイウッドと合わせて使う、ユーティリティやアイアンがスクエアに構えるという点で、良いつながりが出てきました。
 
4. 反発が高く、高弾道で飛ぶ
 フェースには最薄部1.5mmというチタンフェースが取り付けられているため、『Theゼクシオ』のフェアウェイウッドはヘッドの反発性能が高くなっています。そして、フェアウェイウッドとして重心深度が30mmを超えて深くなっていますので、球が上がりやすくなり、高い弾道で飛ばすことができます。
 
5. シャフトでも球がつかまり、高弾道が打てる
 『Theゼクシオ』のフェアウェイウッドは、シャフトがドライバー同様に中間部が軟らかくなっているため、スイング中にしなりを感じて振りやすく、球もつかまります。また、手元部がしっかりしているので、ダウンスイングの始まりでタイミングが狂いにくく、ショットが安定します。
 

『Theゼクシオ』ユーティリティを検証する
1. ヘッドが大きく安心感がある
 ユーティリティの特徴として、フェアウェイウッドよりもクラブ長さが短いために、変化に富んだライでもミート率が良くなるというメリットがあります。今回の『Theゼクシオ』ユーティリティはヘッドの投影面積が比較的大きいので、さらに構えたときに上手く打てそうな安心感があります。
 
2. 低重心で球が強い
 今回、『Theゼクシオ』ユーティリティのヘッド計測はしていないのですが、経験的にユーティリティはフェアウェイウッドに比べて重心深度が浅く、スイートスポット高さが低くなります。従って、打球はバックスピン量が少なくなって球が吹き上がりにくくなり、その結果、ランで飛距離を稼ぐことになります。
 実際に『Theゼクシオ』のU5とU7を試打しましたが、アゲンストの風の中ではU5のほうが転がって、FW#4よりも飛距離が出るくらい球が強かったです。
 

■松尾好員の辛口トーク

FW#3はちょっと難しいかな?
 『Theゼクシオ』のFW#3は、クラブ長さが43インチとFWでも長いということもありますが、15度というロフトはアベレージゴルファーにとって少し難しいような気がします。それはFWのフェースがややシャローなので、アドレス時の見た目のロフト角が実際よりも小さく見えることもあるでしょう。
 私が実際に試打した結果、アベレージゴルファーならば、FWは#4と#7のセッティングが良いと思いました。#3はしっかりとボールをとらえる方には合っていますが、アベレージゴルファーであれば、#4の方が随分やさしく打てると思います。


The ゼクシオ FW & ユーティリティ実測データ
  W#3
S
MP500
W#4
S
MP500
W#5
R
MP500
W#7
R
MP500
UT U5
S
MP500
UT U7
R
MP500
クラブ長さ inch 43.0 42.5 42.0 41.5 41.0 40.0
クラブ重さ g 303.1 305.7 308.0 309.4 326.0 329.4
スイングウエイト   D1.0 D1.2 D0.3 D0.4 D1.2 D0.3
クラブ慣性モーメント gcm2 279万 278万 274万 273万 274万 269万
 
ヘッド重さ g 204.3 207.6 211.7 217.9 - -
ヘッド体積 ml 164 156 142 135 - -
リアルロフト deg 15.0 17.0 18.2 20.0 - -
ライ角 deg 58.3 58.5 59.5 59.5 - -
フェース角 deg HOOK
0.5
HOOK
1.0
HOOK
0.5
HOOK
1.0
- -
フェースプログレッション mm 15.5 16.7 17.1 18.2 - -
 
重心距離 mm 33.2 35.2 35.4 34.6 - -
重心深度 mm 30.6 31.5 30.7 30.7 - -
重心角 deg 23.3 23.0 21.2 21.0 - -
フェース高さ mm 33.0 31.9 31.2 30.6 - -
スウィートスポット高さ mm 23.2 23.3 23.2 22.5 - -
低重心率 % 70.3 73.0 74.4 73.5 - -
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,678 2,591 2,494 2,455 - -
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,117 1,108 1,035 1,015 - -
ネック軸回りモーメント gcm2 4,505 4,597 4,621 4,351 - -
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。