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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.57 『スリクソン ZR-30』アイアンを検証する

『スリクソン』ブランドの新しいアイアンの1つ、『ZR-800』はプロモデルとして標準的なヘッドの大きさを持つモデルですが、今回の『ZR-30』はヘッドがひと回り小さく仕上げられたプロモデルです。一見難しそうに見えますが、なかなかよい雰囲気を持っています。果たして性能はどのようなものでしょうか、じっくり検証してみることにしました。
(実測データは別表)

1. コンパクトで力強いヘッド
 『ZR-30』アイアンはドライバーの『ZR-30』と同じ傾向で、身体は小さいけれどなかなかのしっかりものです。確かにヘッドの大きさ(フェースの長さ)では、『ZR-800』よりも約2mm短いですが、重量が集約されている感じがあり、打たれた弾道は鋭く強いものとなっています。しかもフェース面の肉厚が厚いので、フェースの芯でとらえたときは何とも言えないソフトな打感が得られます。
 
2. ストレートネック、ストレートリーティングエッジでラインが出る
 『ZR-30』アイアンは、フェースのトウ側の高さ、ヒール側の高さ、フェース長さとのバランスがよいために、アイアンヘッドとしてかなり完成度が高くなっています。そして、アドレスした時にリーディングエッジがストレートに近く見えるので、ショットのラインが出しやすくなっています。
 
3. 低いスイートスポット高さをキープ
 『ZR-30』アイアンは、フェース高さがやや高めなので、通常はスイートスポットが高めになりがちですが、適切な重量配分により、20.8mmの程よい高さに仕上がっています。また、ヘッドの上下方向の慣性モーメントが『ZR-800』よりも大きいのも特徴で、ミスした時に左右よりもむしろ上下に打点が外れる上級者にメリットがあります。
 
4. 操作性のよいヘッドで、ドローもフェードも自由自在
 『ZR-30』アイアンは、ヘッドが小さめでネック軸回りの慣性モーメントも小さいため、ヘッドの操作性がよくなっています。球をつかまえようとすればつかまり、スライス系弾道に打とうとすれば簡単にそのようにヘッドを操作することができます。
 確かに『ZR-30』は見た目は小さなヘッドですが、毎日見ているとそれでも十分な気がしてくるプレーヤーも多いはずです。また、『ZR-800』に比べてヒール寄り重心ですので、球を包み込んでつかまえるイメージで打つと強い弾道が得られます。
 
5. 「プレスミーリングフェース」で安定したスピン性能
 『ZR-800』同様に、フェース面には筋状のラインがプレス加工されています。フェース面に細かなラインができていますので、特にショートアイアンでのバックスピン量を安定させ、晴天で乾いた時と雨で濡れた時でのバックスピン量の差を小さくしています。
 

■松尾好員の辛口トーク

ショートアイアンにふわりとやさしく打てる感じが欲しい
 『ZR-30』はロングアイアンからミドルアイアンにかけての強い球を打つ範囲の番手においては、ヘッドの全体形状は問題ありません。ただ、PWなどを含めたショートアイアンでは、ヘッドに丸みがもう少し欲しいところです。スリークォーターやハーフスイングなどで攻めることがあるショートアイアンでは、ヘッド全体に少し丸みがあったほうが、ふわりとしたやさしい球を打ちやすいと思います。

ヘッドの外観色が濃い
 『ZR-30』アイアンのヘッドはブラックパールメッキと呼ばれる仕上げで、ヘッドの外観色が濃くなっています。確かに外観的には特徴がありますが、通常のメッキ仕上げのほうがヘッド形状もはっきりとわかって、より構えやすい人もいるのではと思います。そのような方のために、通常メッキも特注生産で作ることができるようです。

SRIXON ZR-30 アイアン
ダイナミックゴールドシャフト 実測データ
  ZR-30
#5
S200
ZR-30
#7
ZR-800
#5
S200
ZR-800
#7
S200
クラブ長さ inch 37.4 - 37.5 36.5
クラブ重さ g 431.6 - 429.5 443.8
スイングウエイト   D2.0 - D2.5 D2.2
クラブ慣性モーメント gcm2 275万 - 276万 273万
 
ヘッド重さ g 253.9 268.0 253.6 268.5
リアルロフト deg 27.0 34.0 27.0 33.5
ライ角 deg 61.0 62.0 60.7 62.2
フェースプログレッション mm 4.1 4.7 3.8 4.6
ソール角 deg 3.0 5.0 2.7 5.0
 
重心距離 mm 32.5 32.4 34.7 35.2
重心深度 mm 1.6 0.8 2.0 1.6
スウィートスポット高さ mm 20.8 20.8 20.3 20.4
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,195 2,319 2,274 2,441
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 551 606 513 588
ネック軸回りモーメント gcm2 4,278 4,616 4,730 5,175

SRIXON ZR-30 アイアン
NSプロ950GHスチールシャフト 実測データ
  ZR-30
#5 S
ZR-30
#7 S
ZR-30
PW S
ZR-30
#5 R
ZR-30
#7 R
ZR-30
PW R
クラブ長さ inch 37.69 36.69 35.19 37.69 36.69 35.19
クラブ重さ g 402.3 414.7 437.8 398.8 411.9 436.6
スイングウエイト   D1.0 D1.2 D2.2 D1.2 D1.3 D2.0
クラブ慣性モーメント gcm2 270万 267万 266万 270万 267万 265万
 
ヘッド重さ g 253.9 268.0 - - - -
リアルロフト deg 27.0 34.0 - - - -
ライ角 deg 61.0 62.0 - - - -
フェースプログレッション mm 4.1 4.7 - - - -
ソール角 deg 3.0 5.0 - - - -
 
重心距離 mm 32.5 32.4 - - - -
重心深度 mm 1.6 0.8 - - - -
スウィートスポット高さ mm 20.8 20.8 - - - -
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,195 2,319 - - - -
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 551 606 - - - -
ネック軸回りモーメント gcm2 4,278 4,616 - - - -
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。