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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.62

ニュー『ゼクシオプライム』アイアンを検証する


 新しく登場した『ゼクシオプライム』のドライバーとフェアウェイウッドは、球をつかまえて飛ばすクラブであることがわかりました。では、『ゼクシオプライム』アイアンはどんなクラブでしょうか。これまでのモデルはいつも優れていましたが、今回はどうでしょうか?じっくり検証してみることにします。(実測データは別表、前モデルと比較付き)


1. ブッ飛びです!
 新しい『ゼクシオプライム』アイアンは、まず打球がとても強く、高い反発性能を感じることができます。そして、ロフト角設定もストロングロフト設定(5番で23度、PWで43度)なので、球が前へ前へと飛んで行きます。飛び過ぎと言っても過言ではないでしょう。
 
2. クラブが長くなっても振りやすい
 今回の『ゼクシオプライム』アイアンは前モデルと比べて、実測ではクラブ長さが約1/4インチ長くなっています。通常、クラブ長さが長くなるとクラブ慣性モーメントも大きくなって振りにくくなってしまいます。しかし、この『ゼクシオプライム』は前モデルに比べてクラブ重量が約7g軽くなっているので、むしろ逆にクラブ慣性モーメントはわずかに小さくなっており、ヘッドスピードが遅めのシニアの方でも振りやすくなっています。
 
3. スイートスポット高さが低くなって、球が上がりやすくなった
 従来の『ゼクシオプライム』アイアンは、実は標準の『The ゼクシオ』アイアンよりもスイートスポット高さが高い傾向にありました。しかし、前モデルからはスイートスポット高さが低めに設定され、今回はさらにスイートスポット高さが低くなり、フェアウェイからスイープにスイングしてもスイートスポットに当たりやすくなり、ナイスショットがしやすくなっています。
 つまり、アベレージゴルファーのフェアウェイでのショットに多い、ややハーフトップ気味の薄い当たりでも、結構飛んで行くので大いに助かります。さらに、ヘッドのフェース面が大きいので、アベレージゴルファーに多いトウ寄り打点のショットにも強くなっているのも良い点です。
 
4. ヘッド形状がオーソドックスで構えやすい
 従来の『ゼクシオプライム』アイアンはグースネック感が強過ぎた感がありましたが、前モデルから適度なグースネックになり、非常に構えやすくなっています。今回、広めのソール幅が強調されていますが、ややスクープなソール角とともに、スイープに払い打ちしたときにソールの抜けが良くなっています。
 
5. シャフトが軟らかくて、楽にスイングできる
 『ゼクシオプライム』のアイアンも、シャフトはダウンスイングでしなりを感じながら振りやすく、ヘッドスピードが上がりそうな感じのものとなっています。SRシャフトも良いですが、ヘッドスピードの遅い方には、特にRシャフトのしなり感が非常に良いと思います。
 

■松尾好員の辛口トーク
 個人的にはこれまでいつも『ゼクシオプライム』のアイアンを高く評価しています。カーボンシャフト装着モデルも打ちやすいですが、やや力のあるアベレージゴルファーの方向けに、軽量スチールシャフト仕様で特別注文があったら良いのではと思います。

ゼクシオプライム アイアン実測値
  NEW PRIME 前モデル
#5 SR #7 R #5 SR #7 R
クラブ長さ inch 38.1 37.1 37.75 36.75
クラブ重さ g 347.1 355.6 354.4 362.1
スイングウエイト   C8.2 C8.4 C8.4 C8.4
クラブ慣性モーメント gcm2 258万 255万 259万 256万
 
ヘッド重さ g 246.7 261.8 250.1 264.1
リアルロフト deg 23.2 29.0 22.7 29.6
ライ角 deg 61.6 61.8 61.3 62.0
フェースプログレッション mm 1.0 2.2 0.8 1.5
ソール角 deg -1.6 -1.5 -1.8 -1.2
     
重心距離 mm 39.0 39.5 39.5 38.7
重心深度 mm 4.2 3.1 5.1 4.9
スウィートスポット高さ mm 20.7 20.5 21.0 21.1
     
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,493 2,755 2,596 2,617
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 620 643 634 641
ネック軸回りモーメント gcm2 5,858 6,557 6,313 6,460
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。