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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.64

『スリクソンGiE』フェアウェイウッドを検証する


 『スリクソンGiE』のドライバーはヘッドが大きく、やさしいことがわかりました。では、同時に発売された『スリクソンGiE』フェアウェイウッド(FW)の性能は果たしてどのようなものでしょうか?じっくり検証してみることにしました。
(実測データは別表)


1. 上級者も使える顔が良いフェアウェイウッド
 これまでの『スリクソン』モデルは、ドライバーだけでなくフェアウェイウッドもややフックフェースという感じでしたが、今回の『スリクソンGiE』のフェアウェイウッドはストレートフェースになっています。
 従って、アドレスした時にターゲットに対してラインを出しやすく、左につかまり過ぎるイメージがありません。以前のやさしい『スリクソンWR』のフェアウェイウッドに比べると、アドレスがすっきり決まるので構えやすいです。
 私の想像ですが、競技指向の上級者の方でも『GiE』のフェアウェイウッドを使う方が増えるのではないか?と見ています。
 
2. 操作性も良く、球も上がりやすい
 『スリクソンGiE』と以前の『スリクソンWR』のフェアウェイウッドを比べると、ヘッド体積はほぼ同じですが、『GiE』では重心距離が短くなり、結果ヘッドのネック軸回りの慣性モーメントが少し小さくなって、ヘッドの操作性が良くなっています。
 また、『WR』 よりも ボールが上がりやすくなっているので、打っていてやさしい感じがします。そして、ティアップショットではフェースの芯に当たりやすく、また、フェアウェイから飛距離を出したいときには厚くインパクトすれば、低スピンの強い弾道が得られます。その際、ソールの抜けも良く、ダウンブローで球をとらえてもスムースにソールが抜けていきます。
 
3. ヘッドの慣性モーメントが大きくなって、ミスショットに寛容になった
 これまで『スリクソン』モデルでは『WR』がやさしいと言われていましたが、今回の『GiE』のフェアウェイウッドは『WR』に比べてヘッドの慣性モーメントが約10%大きくなっています。これによって、フェースのスイートスポットを外れたミスショットでもヘッドがぶれにくくなり、飛距離、方向性ともに安定感が増しているので、打点のばらつくアベレージゴルファーの方にも向いています。
 
4. クラブがやや軽くなって振りやすい
 『スリクソンGiE』を『WR』と比べると、クラブ重量が少し軽くなっています。しかも3番はクラブ長さも少し短くなっていますので、特に振りやすく、かつフェアウェイにあるボールをミートしやすくなっています。シャフトもドライバー同様に特にRフレックスは軟らかくなっていますので、ヘッドスピードがやや遅い方でもスイング中にタメを感じて振りやすくなっています。
 

■松尾好員の辛口トーク
 『スリクソンGiE』のフェアウェイウッドは、ドライバーに比べてオーソドックスに仕上がっていますので、個人的にはもっと斬新な形状でも良かったかな?と思います。しかしその一方で、スクエアフェースでオーソドックス形状な分、重いシャフトを装着すれば、プロや上級者でも十分使えそうなフェアウェイウッドに仕上がっていると思います。

SRIXON GiE FW 実測データ
  SRIXON GiE SRIXON WR
#3 S #5 R #3 S
#5 R
クラブ長さ inch 42.7 41.9 43.0 42.0
クラブ重さ g 313.3 316.9 315.2 321.8
スイングウエイト   D2.0 D1.4 D2.2 D2.0
クラブ慣性モーメント gcm2 281万 277万 282万 279万
 
ヘッド重さ g 214.1 221.4 208.6 214.0
ヘッド体積 ml 170 150 174 156
リアルロフト deg 15.0 20.0 16.2 19.7
ライ角 deg 59.0 59.5 60.0 61.0
フェース角 deg 0.0 0.0 HOOK 1.0 HOOK 0.5
フェースプログレッション mm 17.2 18.7 17.3 19.3
 
重心距離 mm 33.8 34.3 36.4 36.1
重心深度 mm 32.6 31.0 32.4 31.5
フェース高さ mm 34.1 31.7 34.2 32.3
スウィートスポット高さ mm 23.9 24.2 24.0 24.3
低重心率 % 74.2 80.4 70.2 75.2
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,990 2,695 2,740 2,518
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,463 1,331 1,453 1,351
ネック軸回りモーメント gcm2 5,159 4,738 5,229 4,836
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。