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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.65

『スリクソンGiE』アイアンを検証する


 新しい『GiE』のドライバーはやさしく、フェアウェイウッドは上級者も構えやすいくらい顔が良いモデルでした。では、アイアンの性能はどのようなものでしょうか?じっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)


1. ヘッドの大きさが、良く多くの人に使いやすい
 『スリクソン』の『ZR-800』や『ZR-30』のように、フェースが小さめの本格的なプロモデルは、持っていて格好良いのはわかっているのですが、さすがに難しい。その一方でヘッドが大きくて安心感のある『ザ・ゼクシオ』では、少しヘッドが大きいかな?と感じるゴルファーもおられるはずです。そういったところでは今回の『スリクソンGiE』は、まさに両者の中間的存在で、球をつかまえたい多くのゴルファーにとっては扱いやすいヘッドの大きさとなっています。
 
2. ストロングロフトで、飛距離が魅力
 『スリクソンGIE』は、今までの『スリクソン』のアイアンの中で、最もストロングロフト(5番で24度、PWで44度)の設定となっており、しかもややグースネックで球がつかまる設定にもなっています。このために、弾道は強く、飛距離性能は申し分ありません。
 一見プロモデルアイアンですが、飛距離追求型モデルですので、「オーソドックスなモデルで飛距離を望むゴルファー」には最適のクラブです。きっとライバル達を飛距離で圧倒することができるでしょう。コストパフォーマンスにも優れていますので、エンジョイゴルファーには有り難いアイアンです。
 
3. ヘッドの慣性モーメントが大きくなってやさしい
 これまで『スリクソン』のアイアンの中では『スリクソンWR』がやさしいと言われていましたが、今回の『スリクソンGiE』はその『WR』よりもなんとヘッドの慣性モーメントが約10%も大きくなっています。左右方向だけでなく、上下方向にも強くなっていますので、フェアウェイやティアップからのショットでミスヒットしても大きな効果がもたらされることでしょう。
 
4. 扱いやすい「SV-3019J」カーボンシャフト
 今回の『スリクソンGiE』に装着された「SV-3019J」シャフトは、Sフレックスで60g、Rフレックスで58gとカーボンシャフトの標準的な重量です。Sフレックスは結構しっかり系、Rフレックスは軟らかくて振りやすいという、ウッドからの流れに沿っています。また、「NS950」仕様よりもクラブ重量が軽くて振りやすいので、弾道はスチールシャフト仕様よりも高く、ヘッドスピードが42~43m/sくらいの方にちょうど良いでしょう。
 

■松尾好員の辛口トーク
 『スリクソンGiE』アイアンは、フェアウェイウッドと同じく、オーソドックス路線の形状で、上級者も構えやすくできています。しかし、『GiE』の特徴である革新性から言うと、ドライバーが際立っており、個人的にはアイアンももっと思い切ったデザインのものが欲しかったです。次回は革新的な『GiE』アイアンになることを期待したいと思います。

SRIXON GiE アイアン 実測データ
  SRIXON GiE SRIXON WR
#5
SV3019J
S
#5
NS950
S
#7
SV3019J
R
#7
NS950
R
#5
NS950
S
#7
SV3011J
R
クラブ長さ inch 38.1 37.75 37.1 36.75 37.75 37.0
クラブ重さ g 376.4 400.8 384.4 413.0 396.5 379.7
スイングウエイト   D0.7 D1.2 D0.2 D1.5 D1.0 C9.7
クラブ慣性モーメント gcm2 268万 270万 264万 268万 270万 263万
 
ヘッド重さ g 254.9 - 268.0 - 253.8 268.9
リアルロフト deg 24.5 - 30.3 - 26.5 32.5
ライ角 deg 61.0 - 61.8 - 61.8 62.3
フェースプログレッション mm 1.8 - 2.8 - 3.2 3.0
ソール角 deg 3.0 - 3.1 - 2.0 1.5
 
重心距離 mm 36.9 - 36.9 - 37.4 36.1
重心深度 mm 2.9 - 2.1 - 3.6 2.9
スウィートスポット高さ mm 21.0 - 21.5 - 21.0 20.9
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,483 - 2,599 - 2,216 2,424
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 633 - 672 - 543 594
ネック軸回りモーメント gcm2 5,591 - 5,828 - 5,357 5,798
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。