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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.67

『スリクソン Z-TX 』アイアンを検証する


 『スリクソンZRシリーズ』からネーミングが変わって新登場した『スリクソンZ-TX』。ドライバーとともにアイアンも同時に発売されました。前モデルの『スリクソンZR-800』と『スリクソンZR-30』アイアンはともにフェード系弾道をイメージしたモデルでしたが、今回の『スリクソンZ-TX』の性能はどのようなものでしょうか。ドライバーと同様にこのアイアンのクラブとヘッドをじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1. 球をつかまえたドロー系弾道イメージを出しやすいヘッド
 『スリクソンZ-TX』アイアンは、前モデルの『ZR-800』や『ZR-30』に比べてトップラインが丸くなり、アドレスで球を包み込むイメージが出ています。スコアラインの入れ方を含めて視覚的にもフェースの中央で打つイメージが出ており、ヒール寄りに引きつけて打ちたいフェードヒッターよりも明らかにドロー系弾道を得意とするプレーヤーに向いています。
 そして、この『Z-TX』は前モデルの『ZR-800』に近いヘッドの大きさでやさしさもありますし、また『ZR-30』のように中弾道でコントロールしやすくなっているので、イメージとして両者の中間的な存在感があります。
   
2. ストレートネックとストレートリーディングエッジでラインが出しやすい
 『スリクソンZ-TX』アイアンは、『ZR-800』に比べてフェースプログレッションが大きくなり、完全ストレートなネック形状になっています。そして、前モデルではアドレスしたときに丸く見えたリーディングエッジがストレートに近くなっているので、明らかにラインが出しやすくなり、より構えやすく改善されています。このために球を抑えて低く打つイメージも出しやすく、競技指向のプレーヤーにより適したモデルへと進化しています。
   
3. 番手別でのスコアライン設計で安定したスピン性能が得られる
 前モデルの『ZR-800』や『ZR-30』も高度なスコアライン設計が施されていましたが、今回の『スリクソンZ-TX』ではさらにそれが進化され、1セットの中にロング~ミドルアイアン、ショートアイアン、そしてウエッジと、3種類もの違ったスコアライン設計がなされているので、各々のクラブが求めるスピン性能を発揮しやすくなっています。
   

■松尾好員の辛口トーク

「ダイナミックゴールドシャフト」との相性が良い
 辛口トークではありませんが、今回アゲンストの風の中で試打しているときに気づいたことがあります。実はアゲンストの風の中では、「NS950」の軽量スチールシャフトよりも重い「ダイナミックゴールド」シャフト仕様のほうが、弾道が低めに飛んで行くのでキャリーが出ることがわかりました。もちろん重いクラブのほうがヘッドスピードは下がるのですが、弾道が中弾道で飛んで行くことで、アゲンストの風に対しては逆にキャリーが出ていたのです。
 一見、『スリクソンZ-TX』はソール幅が狭めで難しそうなイメージがあるかもしれませんが、実際は高い弾道も打ちやすく、球もよくつかまるのでアベレージゴルファーの方でも十分使うことができます。そこで、年齢にかかわらず、競技指向の方には今一度重いシャフトを再考されてもよいかと思います。

ウエッジのヘッドについては再考の余地あり
 ロングアイアンからミドルアイアン、そしてPWへのつながりはまったく問題ありませんが、残念ながらAW とSWについては今ひとつ感性に訴えてくるものがありません。SRIスポーツにはクリーブランドのウエッジがありますが、『スリクソン』のアイアンとしてセットの中で使えるウエッジをぜひとも開発して欲しいと思います。


Z-TXアイアン (ダイナミックゴールドシャフト) 実測値
  Z-TX ZR-800
#5
X100
#7
X100
#5
S200
#7
S200
#5
S200
#7
S200
クラブ長さ inch 37.5 36.5 37.5 36.5 37.5 36.5
クラブ重さ g 431.3 444.9 429.3 442.9 429.5 443.8
スイングウエイト   D3.0 D2.4 D2.8 D2.4 D2.5 D2.2
クラブ慣性モーメント gcm2 277万 273万 276万 273万 276万 273万
 
ヘッド重さ g 253.3 269.2 - - 253.6 268.5
リアルロフト deg 27.0 34.2 - - 27.0 33.5
ライ角 deg 60.8 62.2 - - 60.7 62.2
フェースプログレッション mm 4.1 5.2 - - 3.8 4.6
ソール角 deg 2.5 3.5 - - 2.7 5.0
 
重心距離 mm 35.4 34.7 - - 34.7 35.2
重心深度 mm 1.6 0.8 - - 2.0 1.6
スウィートスポット高さ mm 20.9 20.5 - - 20.3 20.4
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,276 2,432 - - 2,274 2,441
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 548 618 - - 513 588
ネック軸回りモーメント gcm2 4,775 5,136 - - 4,730 5,175

Z-TXアイアン (NS950シャフト) 実測値
  Z-TX ZR-800
#5 S #7 S #5 R #7 R #5 S #7 S
クラブ長さ inch 37.75 36.75 37.75 36.75 37.75 36.75
クラブ重さ g 399.6 412.1 397.9 409.2 400.5 412.7
スイングウエイト   D1.5 D1.2 D1.5 D1.0 D1.7 D1.7
クラブ慣性モーメント gcm2 271万 267万 270万 267万 271万 268.1万
 
ヘッド重さ g 253.3 269.2 - - 253.6 268.5
リアルロフト deg 27.0 34.2 - - 27.0 33.5
ライ角 deg 60.8 62.2 - - 60.7 62.2
フェースプログレッション mm 4.1 5.2 - - 3.8 4.6
ソール角 deg 2.5 3.5 - - 2.7 5.0
 
重心距離 mm 35.4 34.7 - - 34.7 35.2
重心深度 mm 1.6 0.8 - - 2.0 1.6
スウィートスポット高さ mm 20.9 20.5 - - 20.3 20.4
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,276 2,432 - - 2,274 2,441
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 548 618 - - 513 588
ネック軸回りモーメント gcm2 4,775 5,136 - - 4,730 5,175
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。