「松尾好員が斬る!」はリニューアルしました。2015年以降の記事はこちらをご覧ください。
バックナンバー

クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.68

『新・ゼクシオ』ドライバーを検証する


 早いもので『初代ゼクシオ』の登場から10年が経ち、今年は6代目の登場となりました。『ゼクシオ』は2年に1度のモデルチェンジで着実な進化を遂げており、その性能の高さについては、この10年間、販売第1位を続けていることで証明されています。そして、さらなる10年もナンバーワンの地位を維持していくべく、新たなスタートを切るという意味も含めて、頭に新をつけた『新・ゼクシオ』というネーミングとなりました。どう進化したのか、検証するのが楽しみです。

1. さらにやさしくなったヘッド
 2年前、5代目の『The ゼクシオ』に変わったときに、随分と打ちやすくなったと感じました。それはその前の4代目が少し難しかったからかもしれません。そして、今回の6代目の『新・ゼクシオ』を手にしたとき、個人的には少しヘッドが大きすぎるかなと感じました。しかし、実際に球を打ったら、そのやさしさ、球のつかまり、安定性能に驚いてしまいました。するとどうでしょう、よい球が打てると、ヘッドの大きさなどはまったく気にならなくなったではありませんか。
   
2. ショットのアベレージが高くなるヘッド
 前5代目の『The ゼクシオ』は、初期型のヘッド形状のイメージを残しており、アベレージゴルファーだけでなく、上級者やツアープロでもまったく違和感なく構えることができました。しかし、その5代目は、正直、ヘッドの慣性モーメントについてはごく平均的な数値で、特にスイートエリアが広いヘッドではなかったのです。しかし、6代目の『新・ゼクシオ』は、別表の実測データの通り、重心深度が深くなって、ヘッドの慣性モーメントもかなり大きくなり、実質的にやさしいヘッドに進化します。
   
3. クラブが長くても球がつかまり、高いドローが打ちやすい
 今回の『新・ゼクシオ』は、クラブ長さが『The ゼクシオ』と比較して0.25インチ長くなりました。通常、ドライバーでクラブ長さが長くなりますと、ヘッドの戻りが遅れやすく、球が右に飛びやすくなってしまいます。しかし、『新・ゼクシオ』では球のつかまりをよくするためのいくつかの工夫が見られます。
 それは、ヘッドの重心距離が短くなってヘッドの操作性がよくなり、さらにライ角度がアップライになり、球をつかまえやすくしています。重心深度もかなり深くなり、その結果インパクトロフトが大きくなるので、球が上がりやすくなっています。私は、この6代目の『新・ゼクシオ』のほうが、前5代目よりも高いドロー系弾道が打ちやすくなっていると思います。
   
4. 重心深度が深くなっても低重心化を達成
 通常、ヘッドの重心深度を深くしますと、スイートスポットの高さが高くなり、いわゆる重心率も上がってしまうのですが、何と今回の『新・ゼクシオ』では本当に深・低重心が達成されています。そのために、高い打ち出し角度で打球が飛び出し、吹き上がらない強い弾道が実現されています。
   
5. 広い反発エリアで平均飛距離もアップ
 今回の『新・ゼクシオ』は高度なコンピューター解析により、フェース面に6カ所もの異なった肉厚部分を設計し、より広い反発エリアが達成されています。そのために、多少フェースの芯を外したミスショットでも速いボール初速と、心地よいインパクトサウンドが得られます。
   
6. 球をつかまえ大きく飛ばすシャフト
 10年にわたる『ゼクシオ』の優れたところはヘッドの進化だけでなく、シャフトも着実に進化させ、クラブとして扱いやすいものにしてきたことです。今回の『新・ゼクシオ』に装着された「MP600シャフト」は、前「MP500シャフト」に比べて、ヘッドに近い先端部分が軟らかく設計されており、打ち出し角度を高くすることを助けています。また、中間部を軟らかく設計してヘッド速度を上げるのを助けています。しかしその一方で、ただ軟らかいだけではインパクトがばらつくので、手元側に高弾性繊維を使い、手元側をしっかりさせることで、スイングを安定しやすくしています。
   
7. しっかり振れるミドルウエイトシャフト
 『ゼクシオファン』の多くのシニアアベレージゴルファーにとっては、シャフトは標準の「MP600シャフト」の45~51gの軽量シャフトのほうが振りやすいと思いますが、一部にはもう少しだけ重量があるシャフトを装着して、クラブの重みを感じてスイングしたい方もおられると思います。そのような方には標準より約10g重いミドルウエイトの「MP600Mシャフト」がよいでしょう。特に9.5度ヘッドは「MP600Mシャフト」との相性はよかったです。
   
8. バリエーションが豊富で自分に適するクラブを選びやすい
 今回の『新・ゼクシオ』のヘッドはロフトが8.5度から12.5度までの5つのヘッドが用意され、またシャフトは標準ウエイトのものが4種、ミドルウエイトが2種で合計6種類も用意されています。どのスペックが合うかは目利きが必要ですが、これだけ多くのスペックが用意されているものは他のメーカーには存在しません。ジャストフィットする『新・ゼクシオ』が必ず見つかることでしょう。
   

■松尾好員の辛口トーク

10.5度ヘッドにはSRよりもSシャフトが良いかも
 辛口トークではないのですが、今回様々なスペックの『新・ゼクシオ』を試打しました。その結果、私個人が感じたことですが、9.5度ヘッドにはミドルウエイトのSシャフト、10.5度ヘッドには標準のSシャフト、11.5度には標準のRシャフトとの相性がよいと思いました。
 また、飛距離的には、10.5度ヘッドですと、キャリーが190ヤードくらいのときが最もキャリーとランのバランスが取れた弾道になっており、11.5度ヘッドですと、キャリーで170ヤードくらいのときが最も強い弾道で飛んでいました。今回12.5度のクラブは試打できませんでしたが、人生の大先輩である70代~80代のベテランの方々によいのではと思われます。


新・ゼクシオ ドライバー 実測データ
  新・ゼクシオ 前モデル
9.5度
S
MP600
10.5度
SR
MP600
11.5度
R
MP600
9.5度 S
ミドル
ウェイト
9.5度
S
MP500
10.5度
SR
MP500
クラブ長さ inch 46.0 46.0 46.0 46.0 45.75 45.75
クラブ重さ g 286.2 284.2 280.3 294.5 289.3 286.9
スイングウエイト   D2.0 D2.3 D0.8 D2.3 D1.8 D2.3
クラブ慣性モーメント gcm2 289万 289万 287万 290万 288万 288万
 
ヘッド重さ g 186.9 189.5 - - 188.9 188.6
ヘッド体積 ml 456 456 - - 459 453
リアルロフト deg 10.5 12.0 - - 11.3 12.7
ライ角 deg 58.5 59.5 - - 58.0 58.0
フェース角 deg HOOK
1.0
HOOK
2.0
- - HOOK
1.3
HOOK
2.5
フェースプログレッション mm 18.6 18.9 - - 17.9 19.4
 
重心距離 mm 38.0 39.1 - - 40.1 39.9
重心深度 mm 39.3 39.4 - - 38.3 37.6
フェース高さ mm 52.8 52.9 - - 53.2 53.2
スウィートスポット高さ mm 33.1 34.1 - - 34.2 34.9
低重心率 % 62.7 64.5 - - 64.3 65.6
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 4,351 4,372 - - 4,164 4,133
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 2,718 2,710 - - 2,522 2,478
ネック軸回りモーメント gcm2 6,899 7,182 - - 7,040 7,019
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。