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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.70

『新・ゼクシオ』フェアウェイウッド&ユーティリティを検証する


 『新・ゼクシオ』のフェアウェイウッドとユーティリティもドライバー同様に「オート・パワーインパクト」のコンセプトで設計され、『ゼクシオ』史上最も大きなスイートエリアで、飛びだけでなくやさしさも強調されています。
 従来からアベレージゴルファーの方にとって打ちやすい『ゼクシオ』のフェアウェイウッドとユーティリティですが、6代目『新・ゼクシオ』ではどのように進化しているのでしょうか。今回もじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

『新・ゼクシオ』フェアウェイウッドを検証する

1. やさしくなったヘッド
 『新・ゼクシオ』フェアウェイウッドで最初に気づく良い点は、ヘッドの体積が大きくなって、アドレスしたときの安心感が高まったことです。
 具体的には、前モデルと比べて3番ウッドが164cm3から177cm3に、4番ウッドが156cm3から163cm3に、5番ウッドが142cm3から148cm3に、そして、7番ウッドが135cm3から139cm3(実測値)と大きくなっています。
 そして、その体積増にともなって、ヘッドの慣性モーメントが左右・上下ともに大きくなり、ミスヒットを含めたショットアベレージが、より高くなるように改善されています。
   
2. 球が上がりやすくやすくなった
 どの番手もヘッド体積が大きくなったことで、ヘッドの重心深度も深くなり、インパクトロフトが前モデルよりも大きくなりやすくなっています。また、フェースプログレッション(FP値)も前モデルより大きくなり、球を拾いやすく、上げやすくなり、キャリーを伸ばしやすくしています。
   
3. 特に3番ウッドが打ちやすくなった
 各番手の中でも、一般に難しいとされる3番のウッドの打ちやすさは特筆ものです。前モデルに比べて約1.5mmディープフェースにしたため、アドレス時にフェース面が良く見えるようになって安心感が増し、フェースプログレッションも大きくなって球が上がりやすくなったからです。
 また、前モデルでは3番ウッドの重心距離が他の番手に比べて短か過ぎる感があり、球がつかまり過ぎることがありましたが、今回は3番ウッドから7番ウッドへとヘッドが小さくなるにつれて重心距離も短くなるよう設計されているので、ヘッドの操作感を体でイメージしやすくなっています。
   
4. スクエアフェースなのでベテランゴルファーも構えやすい
 これまでの『ゼクシオ』のフェアウェイウッドやユーティリティは、フックフェースで構えにくいとか球がつかまり過ぎるという声もあったと思います。それも前モデルの5代目からはスクエアフェースに近いフェース角になりましたが、今回の6代目ではソール面の形状の理由もありますが、アドレスしたときによりスクエアフェースになり、スクエアフェースを好むベテランゴルファーなどにとって構えやすくなりました。
   
5. 反発が高く、高弾道で飛ぶ
 フェースには最薄部1.5mmとなるSP700チタンフェースが取り付けられており、ヘッドの反発性能が高くなっています。また、重心深度が深く球が上がりやすいので、強い高弾道で飛ばすことができます。しかもインパクトサウンドが高めなので、打っていて心地良く、ヘッドの反発性能を感じられます。
   
6. 番手が大きくなるにつれ、球の止まりにも配慮
 気づいている方は少ないかもしれませんが、『新・ゼクシオ』のフェアウェイウッドでは、3番ウッドから7番ウッドへと番手が大きくなるにつれ、フェース面のスコアラインの本数が1本ずつ増えています。非常に細かい配慮で、3番ウッドでは飛びを意識し、7番ウッドではグリーン上にキャリーしたときの球の止まりを考慮しているのです。
   
7. シャフトでも球がつかまり、高弾道が打てる
 フェアウェイウッドのシャフトはドライバーと同様の「MP600カーボンシャフト」が装着されています。シャフトの中間部を軟らかくすることでヘッドスピードを上げ、先端側も前「MP500」より軟らかくすることで、球が上がりやすくなっています。
   

『新・ゼクシオ』ユーティリティを検証する

1. フェアウェイウッドに比べて弾道が低く、安定感もある
 ユーティリティの特徴として、フェアウェイウッドよりもクラブ長さが短いので多少起伏のあるライでもミート率が良くなり、ショットのアベレージが高くなるということがあります。また、フェアウェイウッドに比べて低重心なので球が吹き上がりにくく、全体にバックスピンも少なめになるため、左右への曲がりが少なくなることも特徴です。
 今回の『新・ゼクシオ』ユーティリティは、ヘッドの投影面積が大きく安心感があります。実際のショットではフェアウェイウッドに比べて低めの弾道で、ピンを狙い打ちできるクラブに仕上がっています。フェアウェイウッドが苦手な方には、このユーティリティを上手く組み合わせると良いでしょう。
   
2. 反発が高く、高弾道で飛ぶ
 フェースは最薄部1.5mmのマレージング鋳造フェースになっており、一般のユーティリティの中ではヘッドの反発性能が高くなっています。フェースプログレッションもやや大きめで球を拾いやすく、強い弾道で飛距離性能も良くなっています。また、フェアウェイウッド同様にインパクトサウンドが高めなので、打っていて心地良い感じがします。
   
3. 番手が大きくなるにつれ、球の止まりにも配慮
 フェアウェイウッドと同様に、ユーティリティの5番(U5)から7番(U7)へと番手が大きくなるにつれ、フェース面のスコアラインの本数が1本ずつ増えています。非常に細かい配慮で、U5では飛びも意識され、U7やU8ではグリーン上にキャリーしたときの球の止まりが考慮されています。
   

■松尾好員の辛口トーク

フェアウェイウッドのシャフトを少し重くして欲しい
 多くのクラブメーカーと同様に、『新・ゼクシオ』のフェアウェイウッドのシャフトはドライバーと同じ重量になっています。しかし、ドライバーに比べてフェアウェイウッドは長さが圧倒的に短いので、ドライバーと同じ重量のシャフトではクラブが軽く感じられ、その結果、ヘッドスピードが速めのゴルファーは、ハーフトップなど薄めにインパクトしてしまうことがあります。フェアウェイにある球を打つので、できればユーティリティと同じくらいの重量にすると、より厚くインパクトできるのではないかと思います。

ユーティリティのフェースプログレッションはもう少し小さいほうが構えやすいかも
 『新・ゼクシオ』のユーティリティは、ややフェースプログレッションが大きいので、一般他社のユーティリティよりも球が上がりやすくなっており、確かにヘッドスピードが遅めのシニアゴルファーにとっては扱いやすくなっています。一方で、ユーティリティではライの悪いところや難しい傾斜地などで使って球をつかまえたいこともあるので、フェースプログレションをもう少し小さくするほうが球をつかまえやすく、構えやすいかもしれません。

ユーティリティにはU9がぜひとも欲しい
 『ゼクシオ』ユーザーのヘッドスピードを考慮しますと、アイアンでは打つのが難しく感じられたり、球の上がりやすさが欲しいという状況もあると思いますので、ロフト角が25度になるようなU9が欲しくなってきます。次のモデルでは、ラインアップの中にU9を加えていただければと思います。

新・XXIO FW&UT 実測データ
  W#3
15
MP600
S
W#3
16.5
MP600
S
W#5
18
MP600
R
W#7
20
MP600
R
UT U5
17
MP600
S
UT U7
21
MP600
R
クラブ長さ inch 43.0 42.5 42.0 41.5 41.0 40.0
クラブ重さ g 305.2 308.9 308.5 313.3 331.3 332.5
スイングウエイト   D0.8 D1.0 D0.3 D0.4 D1.7 D0.2
クラブ慣性モーメント gcm2 278万 277万 273万 272万 275万 269万
 
ヘッド重さ g 203.5 208.5 213.4 217.7 221.3 231.2
ヘッド体積 ml 177 163 148 139 113 112
リアルロフト deg 15.2 17.3 18.0 20.0 17.5 21.5
ライ角 deg 58.0 59.0 59.0 58.5 58.0 59.0
フェース角 deg HOOK
1.0
HOOK
0.8
HOOK
1.0
HOOK
1.0
HOOK
0.5
HOOK
1.0
フェースプログレッション mm 16.7 17.2 17.7 18.0 16.4 18.7
 
重心距離 mm 36.2 35.7 34.9 34.6 32.7 33.2
重心深度 mm 31.1 32.0 31.6 31.4 23.5 23.6
フェース高さ mm 34.4 31.8 32.0 30.8 30.8 31.3
スウィートスポット高さ mm 24.5 23.5 22.9 22.9 20.9 21.0
低重心率 % 71.2 73.9 71.6 74.4 67.9 67.1
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,676 2,602 2,557 2,562 2,288 2,289
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 1,239 1,195 1,136 1,084 768 780
ネック軸回りモーメント gcm2 4,843 4,657 4,641 4,424 3,910 3,957
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。