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クラブデザイナー松尾好員氏による甘辛ギア評論 松尾好員が斬る!
VOL.72 『スリクソン NEW Z-TXアイアン』を検証する

 『NEW Z-TXドライバー』同様に昨年、新しい『NEW Z-TXアイアン』が発売されました。前モデルはドロー系弾道をイメージしやすかったアイアンですが、今回の『NEW Z-TXアイアン』の性能はどのように進化しているのか楽しみです。ドライバーと同様にじっくり検証してみることにしました。(実測データは別表)

1. 球をつかまえるイメージと球がつかまり過ぎないイメージとの絶妙な融合
 『NEW Z-TXアイアン』は、マッスルバックのような本格的なツアーモデルに比べてややフェースの長さが長く、アドレスしたときにプロモデルとしてはやさしく感じられます。
 ネックの下部からリーディングエッジにかける微妙なグース感が絶妙で、フェースプログレションの数値そのものよりも球をつかまえるイメージが伝わってきます。
 また、リーディングエッジのトウ側が上手く逃がされていますので、ミドルアイアンからショートアイアンにかけては球がつかまり過ぎないイメージも上手く出ており、ラインに対してスクエアに構えやすくなっています。
   
2. マッスルバック並みの低重心ヘッドと打感の良さ
 『NEW Z-TX』はヘッドの重量配分が従来よりもソール寄りになり、スイートスポット高さが20mmを下回る低重心ヘッドが実現できています。
 そのために、フェアウェイの刈高が低いトーナメントコースや、裸地のようなライの悪いところ、また、ティアップ高さが低い上級者のティショットにおいて、よりフェースの芯で球をとらえやすくなっています。
 そして、フェースの芯でとらえやすくなったことで、よりインパクトでソリッドなフィーリングを感じやすく、軟鉄鍛造らしい何とも言えない良い打感でショットできます。
   
3. 操作性の良いヘッドでコントロール自在
 『NEW Z-TX』は、前モデルの『Z-TX』よりもヘッドの返りやすさ(操作性)を表すネック軸回りの慣性モーメントが小さくなっています(別添データ参照)。
 このため、上級者がインテンショナルに球を左右に曲げたり、弾道の高低を打ち分ける際に、プレーヤーの意のままにヘッドを動かしやすくなっています。よって、グリーンの左右、手前や奥に振られたピン位置に対しても攻めるイメージを出しやすくなっています。
   
4. レーザーミーリングによる安定したスピンを得られる安心感
 『クリーブランド』のウエッジのフェースでも見られていた加工精度の高いレーザーミーリングが、『NEW Z-TX』のアイアンのフェースにも施されています。練習量の多いプロや上級者に対して、そのミーリング効果がより長持ちするので、実際のプレーにおいて安心感が高くなっています。
   
5. 抜けの良いソール形状とバンス角
 以前の『Z-TX』に比べて、『NEW Z-TX』はソールの抜け感を大事にしているのがよくわかります。ソール面における丸みやエッジ形状、バンス角など、日米のツアーサービスからのフィードバックが感じられます。
   


■松尾好員の辛口トーク

小ぶりヘッド『スリクソンZR-30』の後継モデルも同時に欲しい
 前モデルの『Z-TX』のヘッドはドロー系イメージが出やすく、ヒール寄りで構えたいフェード系プレーヤーにとっては少しアドレスしにくい感じがありました。
 今回の『NEW Z-TX』ではアドレスイメージが改善されており、ストレート系弾道からドロー系弾道のプレーヤーまでカバーできるようになったのは良いと思います。しかし、フェースのヒール寄りアドレスとややヒール寄りの打点を好むフェード系プレーヤー用にとっては、もう少し弾道イメージを出しやすいアイアンが同時に欲しいところです。
 ドライバーでは標準モデルと『TOUR』モデルの2つがあるので、アイアンも2タイプ欲しいところです。小ぶりなヘッドで『ZR-30』の後継モデルもぜひ作って欲しいと思いました。

NEW Z-TXアイアン実測値
  NEW
Z-TX
#5
NEW
Z-TX
#7
NEW
Z-TX
#5
NEW
Z-TX
#7

Z-TX
#5

Z-TX
#7
DG
S200
DG
S200
NS950
S
NS950
S
DG
S200
NS950
S
クラブ長さ inch 37.5 36.5 37.75 36.75 37.5 36.75
クラブ重さ g 429.8 442.5 398.8 412.4 429.3 412.1
スイングウエイト   D2.2 D2.3 D1.3 D1.4 D2.8 D1.2
クラブ慣性モーメント gcm2 275万 273万 270万 268万 276万 267万
 
ヘッド重さ g 252.0 268.4 253.3 269.2
リアルロフト deg 27.0 34.4 27.0 34.2
ライ角 deg 61.0 61.5 60.8 62.2
フェースプログレッション mm 4.5 4.9 4.1 5.2
ソール角 deg 2.2 3.4 2.5 3.5
 
重心距離 mm 34.7 34.9 35.4 34.7
重心深度 mm 2.0 2.0 1.6 0.8
スウィートスポット高さ mm 19.7 19.7 20.9 20.5
 
ヘッド左右慣性モーメント gcm2 2,217 2,321 2,276 2,432
ヘッド上下慣性モーメント gcm2 540 577 548 618
ネック軸回りモーメント gcm2 4,636 5,034 4,775 5,136
※このデータは、松尾好員氏による測定結果です。測定方法の差異により、当社の公表値と異なる場合があります。

松尾好員(まつお・よしかず)
1957年 大阪生まれ
1975年 三国丘高校在学中に第一回関西ジュニアゴルフ選手権優勝。
1980年 神戸大学工学部卒、同年住友ゴム工業(株):ダンロップに入社し、以来、ゴルフクラブの開発 に携わる。ツアープロ用のクラブの設計も数多く行い、開発した主なプロはS・バレステロス、I・ウーズナム、D・フロスト、M・マッカンバー、T・リーマン、D・グラハム、F・ゼラー、H・サットン、N・プライス、青木功、加瀬秀樹、宮瀬博文ら多数のPGAプロ。
1995年 震災で人生観が大きく変わり、より深くゴルフクラブのことを勉強する為に独立を決意。
1996年 4月に住友ゴムを退社。同年5月に有限会社ジャイロスポーツを設立し、ゴルフクラブの設計を手掛け現在に至る。